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【はじめての広報・PR】 “物語” に乗せて情報を届ける、プレスリリースの書き方

こんにちは。ごさとです。
前回の記事では、コミュニケーション活動の「基本の型」ともいうべきフレームワーク(Why / Who / What / How)を紹介して「なぜ(Why)」と「誰に(Who)」について解説しました。

今回は「何を(What)」をテーマに、広報・PRに欠かせないツールであるプレスリリースの書き方を参考にして「伝えたい相手の役に立つ情報」にするための考え方、整理の方法をお届けしたいと思います。

※前回記事はこちらからどうぞ。
【はじめての広報・PR】 コミュニケーション活動の第一歩を 「なぜ? 誰に? 何を? どうやって?」で考える

● フィクションのような “お題” の数々

僕はこれまでのバックグラウンドも生かして、医療・福祉などヘルスケア領域のクライアントを担当することが多く、時には「これ何!?」という非常に難しいケースも舞い込んできます。

「年間発症数は数十件、ただし発見が遅れると48時間以内に死に至るもしくは後遺症が残ることが多い重篤な病気のワクチン」
「推定患者数は数万人、医師でも他の病気との判別が難しく、適切な処置を施してもらえるまでに数年を要する難病の薬」
「まだ発症や進行のメカニズムを解明できておらず、有効な治療法も確立していない病気の希少な症例報告」

フィクションの世界のようなことが現実世界でも進んでおり、病気で悩まれている方のために研究・開発・治療に携わっている皆さんには本当に頭が上がりません。
僕もこのような仕事に少しでもかかわれることに使命感を持っています。

・・・とはいえ、難しいです。。

「多くの生活者」にとっては「遠い世界の出来事」であるが故に関心が低いので、扱ってくれるメディアが少なく、認知を広げるための機会が限られてしまうことは容易に想像できました。

メディアもビジネスなので「より対象者が多い=視聴者や読者の反応を得やすい」テーマを扱いたいという気持ちがあります。

また「健康情報」ではない「ストレートな医療・福祉情報」を扱う “枠やコーナー” を持っている媒体も限られてくるのです。

● 視聴者や読者を想定した “物語” の構成要素

このような案件に携わる時、僕は次のような観点で情報を収集・整理して、ストーリーを組むように心がけています。

PRストーリーの構成要素

【社会的背景】
・今こんなことが流行っている、盛んになっている、その兆しがあるなど、組織が伝えたいテーマに関係しそうな「取り上げなければならない理由」として、世の中の動向を示せないか
・それらを客観的に裏付けるデータはないか
【生活者への影響度】
・身体やメンタルへの影響(人の生理的な欲求)
・ライフスタイルなどへの影響(人の安全性にかかわる欲求)
・人権、誹謗中傷や差別などへの影響(人の社会性にかかわる欲求)
・それらの専門家や当事者の声はどうか
【具体的なソリューション】
・組織として取り上げてほしい内容の詳細として、機能や価格だけでなく「なぜそれを開発しよう、提供しようと思ったのか」「そのプロセスで苦労したことはどんなことか」「購入・利用してもらうことでどのような貢献をしたいのか」などのエピソードはないか
・それらを客観的に裏付けるデータや公表できる素材はないか

発信する当事者としては、3番目の「自分たちにかかわる情報」を真っ先に伝えたくなるかもしれませんが、それを「伝える相手に役立つ情報」に変換するために「社会的な背景」や「生活者への影響」を考慮することが大切です。

また端的に「事実情報=ファクト」を並べるだけでは人の心は動きづらく、

・社会的な背景→「確かに見たことある」や「へぇ、そうなんだ」を引き出す
・生活者への影響→「これ、知っておいた方がいいな」や「いつか関係する時がくるかも」と思ってもらう

というプロセスを経ることで自分ゴト化できる  “ストーリー” として情報に触れてもらう設計と素材が必要です。

新型コロナウイルスに関する報道を見ても、
・解決策が見いだせていない新たな感染症が流行している(社会的背景)
・新しい生活様式への移行が求められている(生活者への影響度)
という文脈で様々な商品やサービス、消費動向などが取り上げられていますし、それが過度に扱われると、買い占めやデマの拡散といった負の行動を促すことにもなってしまいます。

● プレスリリースへの落とし込み

ここまで整理してきた情報があれば、プレスリリースの作成はとても簡単で、シンプルに次のような構成にすると伝わりやすくなります。

プレスリリースの構成

①タイトル
・一番大切なのは何が “Newness” なのかが端的にわかること
・言葉で飾りすぎないように削ぎ落とす
②リード
・ここを読んだだけで概要が掴めるように必要最低限の情報を集約する
・「なぜ」や「何のために」が抜けがちなので注意

③社会的背景 / 生活者への影響度
・背景情報を前置きとして加えることで、次の「組織として伝えたいこと」を「より多くの人に関係すること」として補強する
④具体的なソリューション
・自分たちが伝えたいことは最後に!
・再度「なぜ」や「何のために」を社会的背景や生活者への影響度を踏まえ書く

・「モノやコト」ではなく「ソリューション」として “ニュースの価値” にする

特に重要なのが「①タイトル」と「②リード」です。

例えばニュース番組では60〜90秒程度で1つの話題を扱うことも多く、文字数にして300〜400文字くらいになります。

リリースタイトルがそのニュースを読み上げる際に表示される “テロップ” に、リードが “ニュース原稿” に・・・と考えると、やたらと言葉で修飾する必要はありません。

シンプルに削ぎ落として “Newness” を伝えましょう。

● “お題” に対する “答え”

最後に、冒頭に登場した「フィクションのようなお題(判別が難しい難病の薬)」について、僕が実際に考えたストーリーの構成をご参考まで紹介します。

【社会的背景】
・超高齢社会の日本では、将来、認知症患者が700万人を超えるといわれている
・認知症は患者本人だけでなく、介護をする家族にとっても身体的や心理的な負担が大きい
【生活者への影響度】
・「認知症の初期症状」によく似た難病が存在することが分かった

・発症メカニズムは・・・高齢者でなくとも患ってしまう
・実は専門家でも判別が難しく、診断が確定されるまでに何年もかかった患者さんが存在する
・その間、本人も家族も症状や介護に悩まされ、とても苦労を重ねてきた
【具体的なソリューション】
・最近この難病の治療薬が開発された
・この薬によって早期治療が可能となり、症状に悩まされていた患者さんや家族のQOL(Quality of life=生活の質)改善が叶う

ここでのポイントはこちらです。
・「珍しい難病」を分解して「認知症」というメジャーで深刻な病気との関連性を見つけることで社会性を持たせる
・判別が難しいことによる困難さを当事者の方の姿や声を通じて身近に感じられるように伝え、生活への影響を想起させる
・解決すべき課題に対するソリューションとして新薬を登場させる

いかがでしたでしょうか。

残る「どうやって(How)」については次回(こちら)、解説したいと思います。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
皆さんの参考になれば幸いです。

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