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【はじめての広報・PR】 “PESOモデル” とマーケティングの “フロー” とカギカッコつき「PR」の限界

こんにちは。ごさとです。
これまで2回にわたってコミュニケーションの「基本の型」であるフレームワーク(Why / Who / What / How)を紹介して「なぜ(Why)」「誰に(Who)」「何を(What)」について解説しました。

今回は最後の「どうやって(How)」について、広報・PRで定着してきている「PESO(ペソ)モデル」を発展させながら具体的な事例をもとにお届けしたいと思います。

※1回目の記事はこちらからどうぞ。
【はじめての広報・PR】 コミュニケーション活動の第一歩を 「なぜ? 誰に? 何を? どうやって?」で考える

※2回目の記事はこちらからどうぞ。
【はじめての広報・PR】 “物語” に乗せて情報を届ける、プレスリリースの書き方

● 広報・PRの概念を広げたPESO

数年前から提唱されるようになった「PESO」という考え方があります。
「メディア」と一括りにされていたものを、マスの影響力低下、スマホやSNSの台頭といった変化にあわせてより多面的に捉えるものです。

次のような整理をされることが多いように思います。
(電通PR「マーケティングをとりまくメディアの変化」より)

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【Paid Media】
いわゆる「広告」や金銭を支払って著名人に宣伝してもらうこと
【Earned Media】
「報道」のように第三者が情報を取り上げること
【Shared Media】
SNS上の「シェア」や「リツイート」といったアクションや「口コミ」や「レビュー」のような評判
【Owned Media】
組織が自分たちで運用する「Webサイト」や「公式SNSアカウント」など

僕もメーカーやNPOでのマーケティングは必ず “複合的・階層的” にプランニングすることを意識していたので、この考え方を知った際には「やっぱりそうだよね」と合点がいったと同時に「ちょっと使いづらいな」とも感じました。

● ”接点” を軸に加えたPESOマトリクス

使いづらさの原因は、あくまでも発信する立場から「媒体=メディア」が整理されていることにあるので、僕は受信者の目線である「接点=タッチポイント」を加えた次のようなマトリクスをプランニングで使っています。

PESOマトリクス

【マス】
従来のマスメディア(TV・新聞・雑誌・ラジオ)による接触
【デジタル】
インターネットやSNSなどスクリーンやブラウザで閲覧する機会
【オフライン】
日常生活動線のなかで接するものや実際に見たり触れたり体験できるもの

このように俯瞰すると、カギカッコつきの「PR」(マスを対象にした報道狙い)にフォーカスしてしまうことが、いかにその他のコミュニケーション機会の可能性を狭めてしまうか、理解できるのではと思います。

さらに・・・

起点としてのPaid(屋外広告)
→Shared(スマホのカメラで撮影してTwitterに投稿)
→Earned(話題として報道)

起点としてのOwned(商品や店舗などの空間)
→Shared(体験者が写真とともにInstagramに投稿)
→Earned(話題として報道)

クリエイティブやコンテンツの力で人々の話題を集め、それをメディアが後追いで取り上げるという情報流通・拡散が起きることも、納得いただけるのではないでしょうか。

● “フロー” も想定したプランニング

僕が東日本大震災の被災地支援に取り組むNPOの時に実践していたケースを参照しながら、俯瞰したコミュニケーション活動をどのように考えるか整理してみたいと思います。

当時は独立した広報・PR担当者がおらず、ファンドレイジング(資金調達)担当者がインバウンドの取材にも対応する体制で、下のような個別のツールや指標を用いながら断片的に取り組んでいた状況です。

大きな企業だと、それぞれで担当者がいたり、部門が分かれていたりすることもあるかもしれませんね。

・リスティングなどデジタルの広告運用
・LPO(ランディングページ最適化)とEFO(申込フォーム最適化)
・MA(マーケティングオートメーション)ツールによる個別化マーケティング

・オウンドメディア運用(Webサイト更新、ブログとSNS)
・メルマガ
・団体を紹介するパンフレットやDM(ダイレクトメール)の制作
・電話やメールへの問い合わせ対応や既存顧客(寄付者)フォロー
・たまにくる取材対応

もっとマーケティングの観点で統合した取り組みにすること、個別の成果を全体の成果に結びつけることを意識した方が良いと感じ、次のような考え方を取り入れて各施策の位置づけを整理していきました。

PRからダイレクトマーケティング

【情報接触→認知・関心】
・情報に触れる接点を増やす
・接触したタイミングで「自分に関係する」と思ってもらう
→取材対応、デジタル広告運用、LPO、オウンドメディア運用
【情報収集→検討】
・より詳細な情報に誘導する
・比較対象よりも「価値がある」と感じてもらう
個別化マーケティング、オウンドメディア運用、メルマガ、パンフレット・DM、問い合わせ対応
【購入・利用→リピート・推奨】
・最後に障壁を取り除き背中を押してあげる
・「その後」の関わり方を大切にする
→EFO、
個別化マーケティング、オウンドメディア運用、メルマガ、問い合わせ対応、既存顧客フォロー

過去の報道や寄付申込の時系列データを振り返りながら関連性を検証し、実際に寄付者の方にもインタビューを重ねてフローと接点、そこで提供する情報の優先順位を精緻化。

さらに他の担当が行っていたボランティア説明会や年次総会も「検討」フェーズや「リピート・推奨」フェーズと結びつけてオフラインのコミュニケーション機会として紹介し、「被災地支援」や「寄付」といった “見えにくい・実感しにくい商材” を理解・納得いただくように活用しました。

ポイントはこちらです。
・コミュニケーション活動のターゲットが辿るであろうフローを整理して、フェーズごとに必要な情報にアクセスできるようにコンテンツやツールを整える
・マスでの接触、デジタルでの接触、オフラインでの接触と、それぞれの良さが生きる目的と役割を明確にする

広報・PRにとどまらず、コミュニケーション活動全般の基本の型となるコンセプトモデル(Why / Who / What / How)の手順をしっかりと押さえることで、目的の達成に向けて迷わずに取り組めるイメージが持てるのではないでしょうか。

リソースが限られてしまうNPOでも、考え方や整理の仕方を踏まえて自分たちの「資産の棚卸」をするとともに「今は何をすべきか」を取捨選択することで、少しずつ経験とノウハウを蓄積することから始められると良いと思います。

※ファンドレイジングや寄付者インタビューについてはこちらもどうぞ。
【閑話】 ファンドレイジングは、一緒に “未来” をつくる方法(かもしれない)

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
皆さんの参考になれば幸いです。

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