見出し画像

お腹も心も満たされる1冊

 熱帯夜が続くこの頃、エアコンフル稼働の室内でゆったりと過ごす休日。何気ない「今」にこの上ない幸せを感じます。そして、繁忙期を経た今月は、読書に多くの時間を割けるようになり、

 「ああ、やっぱり本を読むのが好きなんだ。」
と内なる心の声を感じます。

 毎日1冊ペースで読むことで、瞑想のような効果すら感じてきました。時に主人公たちに自分の気持ちを重ねたり、時に人生の教訓(レッスン)をいただいたり、あるいは、これまで読んできた本とのつながりを感じたり。

 今日はそんな私の「お腹も心も満たされる1冊」を紹介したいと思います。美味しい食事が出てくる1冊というと端的でしょうか。
 早く帰って料理がしたくなる副次的効果がある、かもしれません。


のろまでもいいじゃないか

 1冊目は、というか3冊まとめてなのですが「喫茶ドードー」シリーズです。このお話は、都会のはざまで森のくつろぎを感じられる喫茶店(あえてカフェじゃないのが、なんかいい)を開く「そろり」さんと、そこを訪れるおひとりさまたちとの心の交流を描いた作品です。
 夏の疲れに効くシリーズものです。

 まずは、前菜から

「自分が自分をいたわってあげなくて、誰がいたわるんですか。」「ぼくもあなたと同じです。ここで幸せの修行をしている最中です。」この2つの言葉は、私の心の宝箱にしまって、必要な時に触れたいと思うのです。喫茶店主の「そろり(ソローからあやかった愛称)」が紡ぐ言葉は、作者からの読者へのラブレターのような優しさがあります。楡や楓といった樹木に囲まれた都会の森のようなカフェが舞台。一歩足を踏み入れたら、きっとさわやかな風を感じられるでしょう。飾らない副音声のようなナレーションがあるのも読みどころです。

『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

おかわりしたくなったら、2冊目を

1作目に引き続いて、暖かさあふれる作品でした。副音声のようなナレーションはドードー鳥だったのですね。そろりや訪れるお客さんを優しいまなざしで見つめ続けていることでしょう。私もいつか会いたいなあと。第3弾(文庫)が今月発売されたようです。続きが今から気になって仕方がありません。

『こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

最後に、甘いデザートを

ひとやすみ。私も人生のひとやすみをしているように思います。海外生活が長くなるか、短くなるかまだわかりませんが、今は日本を離れて「一休み」。離れたからこそわかる故郷のありがたみ、日常の喧騒への懐古、そして家族との日々など、思いめぐらすことは多岐にわたります。シリーズ第3弾もほっこりとした気持ちで読み終わりました。『違いを受け入れることは大切です。でも全ての価値観に歩み寄る必要はないんじゃないですか?』今日もそろりの言葉が心に染みわたりました。白黒はっきりしなくてもいいのかもしれません。人生は、長いですから。

いつだって喫茶ドードーでひとやすみ。 家出猫さんの感想 - 読書メーター (bookmeter.com)

 3冊を流れるようなスピードで読み終わりました。前菜からデザートまでのプチフルコースを堪能した気分を味わいました。
 そろりさんも、ひとやすみ。そして作者もひとやすみできているといいなと思います。

成長とは、自分ではわからないのかもしれない

 次は、洋風から和風へ行ってみたいと思いまして、こちらを手に取りました。

 

 あんこやチョコが「切実」なのは、それが作られる過程に人の手が加わり、歴史が深いからだと思う。もちろん、それらの素材を生かしたデザートや料理にもオリジナルの歴史や人々の想いが乗せられる。しかし、もっと根本のところで光っているような原石みたいな輝きが、それらにはあるんじゃないだろうか、そんなことをふと思った。アンシリーズ最新作を積読していましたが(珍しくハードカバーで購入)ようやく読むことができて一安心。アンちゃんの成長、椿店長、それに立花さん、新しい店長。和菓子を通しておりなされるお話は、まだまだ続きそう。

『アンと幸福』|本のあらすじ・感想・レビュー・試し読み - 読書メーター (bookmeter.com)

 アンシリーズはミステリー感もさながらですが、それぞれの人の成長を感じられるのが好きです。でも、自分の成長は、案外自分ではわからないものかもしれませんね。

まとめ

 おいしい本はたくさんあります。多分一生かけても読み切れないくらいに。その中で自分のお気に入りを見つけて、心の中で言葉の調理ができるといいなと思います。
 もちろん本を読んで、物理的に文字通り満腹になるわけではありませんが、心の充足を感じることはできると思うのです。

 ちなみに、余談ですが和菓子つながりでこちらの本もちょっと読んでみたいと思っています。

 夕立のあとは、空気が澄み切るように涙を流したあとは、きっと心のほこりやちりが一掃されることでしょう。そんな夏の夕方を過ごしながら、この文章を書いています。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。スキをいただくたびに見えないやさしいつながりを感じます。

この記事が参加している募集

サポートありがとうございます。感謝です。