マニキュアとおばあちゃん(と時々お母さん)

子供の頃お母さんのドレッサーに座るのが好きだった、どの引き出しを開けてもキレイな物ばかり入っている「これは何?どうつかうの?」ワクワクしながら毎日ドレッサーに座っていた
その中に瓶に入ったカラフルな物がある「これは何?どうつかうの?」マニキュアとの出会い
 3歳頃だったと思う、使い方を教えてもらって塗ってみた

すごくキレイ

ツヤツヤとした爪に子供ながらにトキメイた。
子供用のノリみたいなマニキュアを買ってもらって塗ってはご機嫌
幼稚園や小学校には塗って行けないのでお休みの時だけ、塗りたくなったら塗る。

中学生の頃は夜になるとコンビニに行きたい病を発症していたので(笑)夜な夜なコンビニのコスメコーナーでマニキュアを吟味、取りあえずお菓子だけを買って帰り家で悩む
ハートのホロが入っているのにするか星のホロが入っているのにするか悩む悩む悩む

星に決めた!好きなカラーのマニキュアの上に星のホロをすくい出して乗せていく、ラメも入っているのでキラキラとキレイ✨大満足
でも結局ハートのホロが入っている方も買いました!

高校生になってからバイトも始めたのでマニキュア収集に熱が上がりドラッグストアや雑貨屋さんでジーーっと吟味しては購入、今程100円ショップにネイルグッズもなかったので黒いマニキュアをベースに塗って爪楊枝の裏側で白のマニキュアをチョン、チョンと少しずつ乗せてドット柄にしたりネイビーブルーやシルバーなど奇抜な色も使って遊んでいた。
セロハンテープを貼って斜めに半分ずつとか頑張った。
バイトが月、金の週2日だったので月曜のバイト終わりに塗って木曜の夜に落とす感じ。

大人になってからもネイルは好きでパーツやシール100円ショップのアイテムも豊富になったので筆等も買って毎年夏になるとフットネイルに本気を出す❤‍🔥
手の指は流石に冒険出来ないのでサンダルの色も考えつつ一晩中塗っては乾かしパーツの配置に悩み完成したら嬉しくて早くサンダルを履いてお出掛けをしたい毎年恒例のイベント


おばあちゃんとマニキュア

やっとタイトルの話
2021年1月1日、コロナ禍真っ只中のお正月、姪が産まれてから初めてのお正月に実家に集まって可愛い姪と会えた嬉しさでいっぱいになっていた時に電話が掛かってきた、母方のおばあちゃんからだった。母が「おばあちゃんがめい(私)と話したいって言ってるから」と電話を替わった。
「明けましておめでとう」と「会いたい、会いに来て◯日に来て」と日付まで指定で珍しいと思いつつ母に電話を替わって切った。

「おばあちゃん◯日に会いに来てって言ってたけどなんでだろう?」笑顔で聞く私に母がこう言った
「おばあちゃん来月老人ホームに入るから今月だけなのよ」

は?💢聞いてない、おばあちゃんは家に居たいはずだし家事だって自分で頑張ってる何で?
途端に泣きそうになりながら「なんで?可哀想やめてよなんで?おばあちゃんのお家じゃん酷いよ」と捲し立ててしまった、兄にも「お兄ちゃんも何か言ってよ酷いよおばあちゃんお家守りたいって言ってたんだよ」と言った、でももう遅い、決まったことだから…
義姉もおばあちゃんに姪を会わせたいと◯日に一緒に行くと言ってくれたけど兄が「まだ産まれて半年だし流石に1時間以上の車での移動は心配だと」
その場では両親と私で◯日に祖母に会いに行くことになって兄家族は帰っていった。

兄達が帰ったあとにお母さんから「高齢者は環境が変わると一気にボケちゃったりするから」とか「本当はおばあちゃんはホームに入りたくない」等の話を聞かされて"コイツ何言ってんだ?"そんな環境に入れるのか?場所も遠く会いに行きにくい場所らしく、せめてホームに入る話が出たくらいで教えてくれてたら会いに行きやすい場所とかおばあちゃんと叔母との関係などもあるから難しいけど、おばあちゃんが不安にならないようにしてあげられなかったのかなどなど…怒りでいっぱいになった。
「会いに来て」寂しかったんだね、おじいちゃんも亡くなって叔父叔母と同居はしているものの共働きでほぼ不在、一人暮らしみたいなものだった、仲良くないのも知ってたけど頭もしっかりしているしデイケアに行ったりヘルパーさんもいるのに…

おばあちゃんに会いに行く◯日より前に母だけ先におばあちゃんの家に行くことになった、事情はよく分からなかったけど先に行くと、そしてLINEで「おばあちゃんがデイでマニキュアを塗ってもらったんだけど剥げて来ちゃったから直してあげてくれない?手持ちのなんでもいいからもってきて、と」
何でもいいと言われてもなんでもよくないから💢
手持ちのマニキュアとおばあちゃんの手の画像を見ながらおばあちゃんに合う色を探しに行った、お花が好きなおばあちゃんなのでお花のパーツも色々揃えて持って行くことにした。
父と2人で車の中で母から頼まれた買い物リストを見たり何か欲しい物ないかな?など話しながら心の奥で〘おばあちゃんの家に行くのはこれが最後なんだ〙と思い胸が詰まった。

お買い物リストはシンプルだった、「お菓子とか買ってこ?」と父に提案したが「最近太っちゃったみたいだからイヤなんだって」と言われた。

おばあちゃんの家に着くとおばあちゃんはとても喜んでくれた「来てくれたの〜嬉しいわ〜嬉しい」とニコニコして、いつもそうして迎えてくれる。
お昼ご飯を食べてから、ネイルをしようと準備をする、「お爪見せて?」伸びていなかったので切らずにオフする事に、そしたらおばあちゃんがビックリして「落としちゃうの?」と、母から聞いているのかと思って説明しなかった私も悪いのだが、驚かせてしまった。
ネイルとパーツ等を見せて「これで可愛くしてあげるよ」って言ったら嬉しそうにしてくれた。
ネイルは2度塗りパーツ付けトップコートを塗る、最低限3度塗りはしないとキレイにならない。
母から「いいのよ何となくでおばあちゃん疲れちゃうでしょ、そんなに塗らなくていいから」と意味の分からない注文を受けつつ聞き流しておばあちゃんと色やシールをどれにするか話しながらちゃんと2色使ってお上品だけど可愛くキレイに3度塗りして仕上げた。

うるさい母は放っておく。

おばあちゃんは昔からキレイな物が好きで足が悪くなってからも私達が遊びに行くと「あら〜ヤダ〜恥ずかしい」とメイクをする美意識の高さ(見習いたい)
なのでキレイにするのは好きなはず、完成したネイルをとても喜んでくれた
おばあちゃんに似合いそうだと思って買ったネイルはとてもよく似合っていて我ながら素敵に出来たし何より嬉しそうにキラキラした瞳でお爪を見るおばあちゃんの顔が嬉しかった。

母は暫く泊まるらしく、父と私は日帰りなので長い時間居られなかったけどお互いにどこか寂しい気持ちを感じつつ帰る時間に

何度も何度も「会いに行くからね」と約束をして手を繋ぎ抱きしめて一旦のお別れ。
いつもよりソワソワと寂しそうなのが気がかりだったけど何も出来なかった…

それから母から毎日LINEが来た「今日お姉ちゃん(伯母)が来たんだけどネイル褒めてたよ、オシャレだねキレイって」「おばあちゃん時々爪を見てニコニコしてるよ」「今日デイの人がお迎えに来たんだけどネイル褒められてたよおばあちゃん嬉しそうに「孫がやってくれたの」って言ってたよ」って。

そんなLINEが続いたある日の夜にLINE通話が掛かってきた。母が「お母さんツライの叔母とケンカしたお母さんツライの」と、その後ろからおばあちゃんの「誰と話してるの?寂しいからこっちにいて?」と声が聞こえる
勝手にどんどん喋る母、不安そうなおばあちゃんの声、「今はおばあちゃんの側でお話聞いてあげて?帰ったら聞くから」と何度言っても自分がツライと訴える母

1番ツラいのはおばあちゃんだよ?


2月になってすぐにホームに入ったおばあちゃん、電車で2時間ほど、遠いけど会えるなら行く、コロナ禍なので1日1組3人まで20分の制限付き、食堂で透明のパネル越しでしか話せない、マスク必須。
初めてホームに会いに行った時は思ったよりも元気そうで色々話してくれた施設の人も親切そうでよかった。
母がコソっと「爪めいが塗ったやつじゃない?まだ残ってるね」と言ってくれた。
あんなに喜んでくれるならいつでもやるのに、もう出来ない

 制限時間がきた、施設の人が迎えに来て歩行カートで一生懸命歩くおばあちゃん、また暫く会えない、
本当はダメなんだけど握手をしたり頬を撫でたり抱きしめたりした、施設の人は見逃してくれた「また来るからね」何度も約束をして何度も振り返ってバイバイをした。

面会をするにもワクチンの接種の有無などが厳しくなっていつでも行ける訳ではなく、やっと会いに行けてもだんだん元気が無くなっているおばあちゃん、目を見れば分かるよお家に帰りたいよね。
私は会いに行くときには自分が美味しいと思ったお菓子を持って行った、食事が全部ペーストにされているらしく「施設の人が親切だから、親切だから」と言っていたけど普通の物が食べたいんだなって分かりやすくメッセージをくれたから。

母は「いらない、勿体ない」と言う。そもそも最後におばあちゃんの家に行った時の「最近太っちゃったからお菓子はイヤなんだって」はおばあちゃんが言ったのではなく母が父に言っただけらしくとても悔しい気持ちになった。
 母はおばあちゃんに会いに行った後必ずLINEで報告してくれる。
「おばあちゃんがお煎餅とかクッキーとかなんでもいいから買ってきて欲しいって言うの、田舎だし近くにコンビニもないのに無理だよね~」と笑ってる文章
"舐めとんのか💢"と思った。

そろそろおばあちゃんに会いに行こうと思った昨年の夏に父から連絡がきた、おばあちゃん入院してて様態が良くないと…

また後出し…なんで先に言ってくれないの?
更に遠い病院に入院したおばあちゃん、病院は1日1組2人までで10分だけしか会えない。

先に母と兄が行き「寝たきりで反応もなくちょっとツラいかも」と聞いていたので覚悟はしつつ父と2人で会いに行った

3人部屋で全員同じ向きに寝かされている
床擦れが起きないように時間が決まっているのだろう等と思いながら緊張しながら真ん中に寝ているおばあちゃんに話しかけた、目は開いているし手を握ると握り返してくれる、真夏だったので「暑くない?エアコン寒くない?」等聞きながら体を擦ったり頬を撫でたりタオルケットを掛け直したりおでこに触れたり母達が言っていた程悪い状況には見えなかった、質問をすると軽く頷いてくれるし目で返事をしてくれる、普段大人しい父も結構たくさん話しかけていた

手を握って話しかける事しかできない、何もしてあげられない、10分なんてあっという間。
でも看護師さんもその辺は融通を利かせてくれる感じだったので10分間、目を見てゆっくり話し掛け続けた、父が「時間かな?おばあちゃん疲れちゃうしまた来よう」と小声で囁く、確かに喜んでくれてるけど10分で疲れたように見える
「また会いに来るからね」といつものお約束をしてお顔を手で包んで好きな気持ちを伝えて「またね」っとベッドから私達が離れる時、病室から出る時に手を振ってくれた。
すごく驚いたけれどすごく嬉しかった。
お母さん達が会った時より体調が良かったのかな?
帰りに父と「思ったより元気そうで良かったもっと寝たきりなのかと思ってた」寝たきりではあるものの多分私達の事も分かってくれていたし嬉しそうにしてくれて少しだけホっとした。


…おばあちゃんは昔から体が弱くて大きな病気もしたらしく高齢鬱にもなり服薬も多かったがずっと頭はしっかりしていた、しっかりしているからこそ今のあの状況はおばあちゃんにはツライと分かる、分かるんだけど生きててほしくてでもツライだろうなと思いつつまた会いに行くつもりだった。

それから3ヶ月後、父からLINEが来た「おばあちゃんもう危ないかもしれないと」
母と父は会いに行ったらしいが私は間に合わなかった。
昨年の10月の下旬にお空に行ってしまった。


毎年夏が近付くと今年はどんなネイルにしようかワクワクしながら考える、Instaみたりコスメ情報を見ながら楽しい時間

でも今年は違うの、どの色にしようかと手持ちのマニキュアを見ると、おばあちゃんに似合うだろうと思って買ったネイルがある、私には似合わないカラー、おばあちゃんが好きなお花のパーツも私には似合わないと思う。
おばあちゃんのネイルだから。

大人になってからもおじいちゃんが認知症で施設に入ってからも、おじいちゃんが亡くなってしまってからも会いに行ける時にはたまに会いに行って一緒にお買い物とか外食とかに行っていた、会いに行くと喜んでくれるし普段食が細いらしいけど私達が行くとたくさん食べてくれるしデザートも食べたいってとても可愛いから。

おばあちゃんが亡くなった後に"老衰"はかなりツライと知った、延命はしていないが命が自然に尽きるまでおばあちゃんは何を思っていたのだろう?
大往生なら悲しくないなんて、そんなことはなく子供の頃には沢山色々な場所に連れて行ってくれたし親戚はみんなおばあちゃんの家の近くに住んでいるのだけど私達家族だけ少し遠くに住んでいるので長期休みの時しか会えない、だからかとても喜んでくれる、子供ながらに恐縮するほどお泊りしている間毎日ティッシュにお札を包んで私の手にぎゅ~と握らせてくれる、「もう貰ったよ?いいよ?」と謙遜する幼稚園生くらいの私に「いいの、シー🤫」と秘密でくれるお小遣い

現金主義のおばあちゃんの愛情表現なのです


過ごした時間が長い分悲しみも深い、
会えなくなるのは悲しいし寂しい、

※長生きできたから良かったねと思えない私は酷い人間かな?※

小田急線に乗れば会いに行けるのに、今は小田急線に乗っても会えない。

ずっと私のおばあちゃんだったのにやめちゃったの?
ずっと私のおばあちゃんだよね


今年のネイルは何がいいかな?
おばあちゃんに塗ったネイルが素敵すぎて、良いのが全然思いつかないよ。

ネイル好きなの知らなかった、もっと塗ってあげればよかった、おじいちゃんの事が大好きだったおばあちゃん、「おじいちゃんとの家を守りたい」って言ってたのにホームに入る事になっちゃってごめんね

最後に寂しい思いさせてごめんね

私が学校に行けなくなってから母からその事は言わないでと言われていたのでずっと嘘を吐いていた、部活も母が決めた設定のに所属してる事になっていた。

目を見て話すのが後ろめたくてそっけなくしちゃってごめんね。

大人になってからおばあちゃんの世代からするととても驚く事みたいなんだけど「女の子なのに一人暮らし?」ってビックリしてた、母がオートロック付いてるからって言ったから「すごい立派なマンションに住んでるんだね凄いね」って言ってくれた、でもオートロックは付いてるけど全然立派なマンションじゃないんだよ(;_;)

「めいは結婚しないのか?変わってるな」って言われたけど「おばあちゃん、もう令和だよ〜今は結婚しなくても楽しく暮らせるんだよ」って生意気言ったけど「そうだね、令和だもんね、オシャレだね」って言ってくれてありがとう。

本当はダメダメな人生詰みまくってる孫なのに…

もっと本当のこと話せばよかった嘘吐く必要なかったんじゃないかと、おばあちゃんはブラックジョークがキツいけど優しいから拒絶なんかしなかったと思う、嘘を吐いて目を背けてごめんなさい

もっと素直に目を見て話したかったです



追記
※長生きできたから良かったねと思えない私は酷い人間かな?※
この部分、解釈しにくい表現になってしまっているのが気になったので注釈します。

長生きがよくない事とかそう言った意味ではなく、寝たきりになってしまい自らの意思で動くことも出来ず、だからといってどこか悪い病気というわけではないので健康で全うできた、それはもちろん素晴らしい事なのですが
ただ、自分の意思表示が出来ない状況で、毎日何を思いどんな気持ちで動かない体や寂しさ等と向き合っていたのだろうと思うととても難しい問題だと思いました。生きててくれて嬉しいけれど何処かに救いがないのかと、とても複雑な気持ちで過ごしていました。
おばあちゃんは"ピンコロ地蔵"と言う陶器?で出できた人形みたいな物の頭を毎日撫でていました、健康なままコロッと終幕を迎えられるようにという意図で作られた長寿祈願のグッズらしく、うちの実家にもくれたので母が毎日お地蔵さんの頭を撫でています。

健康に長生きは出来たものの願い通りコロっというわけではなく数ヶ月、最後は相当ツラかったと思うと複雑な気持ちはとてもあります。
家族なのでずっと生きててほしい、でもそれっておばあちゃんにとってはとても苦しかったのではないか、私達のエゴの押し付けなのではないかという罪悪感も残っています、無責任ですよね。
だからと言って現代の医療ではどうする事も出来ないだろうし選択肢もないというのは本当にとても悩ましく苦しい現状だと痛感しました。
おばあちゃんの気持ちは想像する事しか出来ないけれど、想像も付かないとも思っています。

ずっと一緒にいたいよ、でもツラく苦しい思いはさせたくないという矛盾に苛まれて考えさせられたという意味です。

長々とすみません。




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