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『人生の「快適」解をつかむ!3つの習慣 テレワーク時代のセルフマネジメント術』第一章・無料全文公開

書籍『人生の「快適」解をつかむ!3つの習慣 テレワーク時代のセルフマネジメント術』より、第一章「テレワーク時代をもっと自分らしく生きていく」を発売日前に特別で全文公開しちゃいます!

「1億2600万人総コロナストレス」時代?

2020年は、あなたにとってどんな1年でしたか?

2020年は、新型コロナウイルス感染症という疾病が登場し、全人類78億人にとって忘れられない年であり、新たな価値観が生まれた年でもありました。

日本でも、コロナによって生活様式や働き方を大きく、そして急速に変えなければならない事態になり、私たちの日々の暮らしが大きく変わったのです。
特に首都圏では、「会社に出てこないで!」とばかり、出社をとりやめて「テレワーク」や「リモートワーク」に半ば強制的に、しかも一斉に働き方を変える企業が出ました。

緊急事態宣言の間は、私も契約企業様から「社員がテレワークになったので、一旦社内カウンセリングを中止してください」「研修は『密』になるので延期します」というご連絡を毎日のように受け、「この先、私の仕事、みんなの仕事はどのようになってしまうんだろう?」と不安な日々を送りました。
2020年春から夏くらいの間は、みんなが大きく変わった生活と働き方に慣れるのに精いっぱいだったのではないでしょうか。

テレワークは、私たちにいろいろな環境の変化をもたらしました。
一番大きいのは、ワークスタイルの変化。テレワークによって、通勤時間がゼロになり、今まで何時間もかけて会社へ通っていた時間とエネルギーを使わなくても、仕事場所を選べるようになりました。また、自宅を中心とした作業環境の変化も大きかったはずです。

ワークスタイルの変化によって、衣食住などのライフスタイルも変化しました。服装がよりラフになり、個人的には家で靴を履かずに仕事をするのが、最初はとても違和感がありました。
外食が少なくなって自炊が増えたり、家にあるオヤツについつい手を出してしまったり……。食生活の変化が「コロナ太り」や「コロナ痩せ」の人を多く生み出したようにも見えます。
家族と同居されている方は、自分の生活リズムだけではなく、家族の生活リズムが変わったことも、ストレスを感じやすかったかもしれません。特にお子さんがいらっしゃると、学校や保育園によっては、出社を求められていても子どもを預けられないという悩みも多く聞きました。

人間関係が変わったというお話もたくさん伺いました。職場でのややこしい人間関係によるストレスは減ったものの、会いたい人に会えないというストレスが増えたためでしょう。職場においては、新入社員や初対面の人との新しい人間関係をつくっていくのには、まだまだ工夫が必要かもしれません。

コロナが日本に蔓延しだした当初は、私の契約企業様でのカウンセリング内容もガラッと変わりました。

「電車に人が増えてきて乗るのが恐いけど、出社しなければいけないんです」
「会社に無理やり『オンライン化』されたが、とてもじゃないけど家では仕事できません」
「家でパソコン作業を体育座りでしていたら腰痛になってしまいました」
「通勤がなくなり苦手な上司と会わないのはいいけど、仕事と生活の切れ目がなくなってしまいました」

その後、仕事にも生活にも慣れたころには、相談の内容は具体的なものから、より抽象的なものに代わっていきます。気になることの種類や程度の個人差も、この時期からだんだん広がっていきました。

「この先、会社はどうなるんだろう?」
「なんとなく、やる気が出ない……」
「そもそも、希望していた仕事じゃなかったんです」
「自分の生き方、これでいいのかな?」

私たちには、気づかない間に少しずつたくさんのストレスが加わりました。この知らずしらずのうちに積み重なったストレスが、もともともっていた漠然とした悩みや不安を顕在化させた1つの要因にもなっています。この不具合・不安とどのようにつき合っていくかが、これから大きなテーマとなっていくのではないかと感じています。
マスクやソーシャルディスタンス、手洗いや消毒をこまめにするという新しい生活様式も人々にだいぶ定着してきました。一方で、緊急事態宣言中も変わらず出社し続けた人は、生活が「変わった」という感覚が少ない人もいるようです。働き方が大きく変わった人は、お困り事の種類も、その程度も本当に多角化していき、これはますます広がっていくでしょう。

今私たちは、VUCAと呼ばれる先が読みにくい時代を生きているといわれています。
VUCAとは、次のように4つの時代の特性を挙げ、頭文字を取って名づけられています。

●変動性(Volatility)
●不確実性(Uncertainty)
●複雑性(Complexity)
●曖昧性(Ambiguity)

2020年は、まさにこの4つの特性が大きく出た1年ではなかったでしょうか。コロナだけでなく、そこから派生した差別問題や環境破壊などの問題も表面化しました。

今、価値観が多様化し、どれが正解かもわからない中で、私たちがお互いに理解し合い、力を合わせて幸福感をもって生きていくには、いったい何が必要か? を投げかけられているような気がします。

VUCA時代、幸福感をもって人生を送っていくポイントについて、ここから一緒にいろいろな切り口で考えていきましょう。

VUCA時代を幸福に暮らせる働き方・生き方

VUCAといわれる時代でも、幸福感をもって仕事や生活をしていくには、まずは「変化」に対応できることが必要です。新型コロナウイルス感染症の拡大によって出た問題は、ここ何年かで私たちに求められる課題が一気に押し寄せただけ、という見方もできます。

働き方で短期的に変化したことといえば、首都圏ではなんといってもテレワーク(リモートワーク)を導入した企業が増えたということでしょう。東京都の調査によると、2020年6月時点でテレワークの導入企業は、57.8%。2019年の調査(25.1%)と比べると、2.3倍にもなりました。

私がメンタルヘルスの契約をさせていただいている企業様でも、早いところは2020年3月中旬より従業員カウンセリングをオンライン化しました。この原稿を書いている2021年の時点では、約7割のカウンセリングがオンライン化されています。もちろん業種や働き方のスタイルによっても違いはあるかと思いますが、オンラインでもできる仕事は、どんどんテレワークに移行していく流れを感じます。

テレワークは企業側・従業員側それぞれにメリット・デメリットをもたらします。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

【企業にとってのメリット】
●業務の効率化を図ることができる
●オフィスのコストを削減することができる
●求める人物像・求める従業員のスキルが明確化する
●適切なマネジメントで、優秀な人材を確保することができる

【企業にとってのデメリット】
●在宅勤務の設備コストがかかる
●セキュリティー対策がより必要になる
●労働時間の管理・人事評価が難しくなる
●社員とのコミュニケーションが不足・難しくなる
●管理職の「マネジメント能力」がより求められる

【従業員にとってのメリット】
●通勤の負担(時間・体力など)が減る
●自由な時間が増える
●通勤の難しい状態(育児や介護による)や遠隔地でも仕事ができる
●遠方(地方や海外)居住者でも就業できる

【従業員にとってのデメリット】
●職場のメンバーとのコミュニケーションが不足する
●社内の情報がわかりにくくなる
●適切な評価への不安や不満が増える
●帰属意識が低下する

このように、企業・従業員どちらにも、良い面・悪い面が考えられます。特に、従業員側からすると、メンバーとのコミュニケーションや情報は放っておくと個人差がどんどん出てきます。その中で、会社からはより生産性や専門性を求められるだけではなく、それを発信していく自発型の働き方を期待されていくのではないでしょうか。まさしく、日本の雇用も、メンバーシップ制(人に仕事をつける働き方。就社に近い)から、ジョブ型(仕事に人をつける働き方)に切りかえられるきっかけに似ています。

これは「言われたことをその通りにこなす人」と、「自分からよりクリエイティブな仕事を生み出せる人」で大きく役割も評価も変わってくるサインでもあります。

「エンプロイアビリティ」という言葉があります。エンプロイアビリティとは、雇用される能力のことで、Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉です。雇用される能力ともいえるでしょう。では、働く側としてエンプロイアビリティを高めるために、どんなことをするといいのでしょうか。

安定的に雇用されるには、専門性はもちろんのこと、それ以外の部分を整えることも必要になってきます。なぜなら、雇用される場合、一生で1つの会社で働き続けるという終身雇用制はすでに崩れており、転職や副業だけでなく、場合によっては起業も含めた自分自身が生きる力を身につけていく必要があります。

生きる力をつけるためには、次のような要素を高めるのがいいと考えられます。

●「いつでも転職できる」というマインド
●会社の看板に頼らず稼げる個人の信頼性
●発信・受信のバランスの取れたコミュニケーション
●副業でお給料以外の収入を持つ安心感
●会社に自分の人生を依存させない生き方=自分の人生を自分で創り出す生き方
●学び続ける好奇心

これがまさに「働き方改革」です。今は自分の生きたい人生に合わせて、自分で再構築していくチャンスでもあります。
あなたは「働き方改革」と聞くと、会社が何かの工夫をして残業時間を減らす制度と理解していませんか?

本当の意味での「働き方改革」とは、自分の生き方を自分で決めて働き方を変えていくことなのです。
企業は会社に必要な労働力を明確にして、個人がそれに合った能力を活かして貢献し、組織と個人が共に幸せである新しい関係をつくるのが、これからの時代に必要なことではないだろうか? と思います。

ベストセラー『ライフ・シフト~人生100年時代の戦略~』(東洋経済新聞社)でも、人生1つの仕事ではなく、自分のライフステージの中で、「学ぶ→働く→余生」という3ステージの生き方ではなく、「学ぶ→ガッツリ働く→家庭重視でほどほど働く→新たに学ぶ→新たな分野でガッツリ働く→社会貢献に力を入れる……」というような、人生でいろいろなステージを生きる「マルチステージ」の生き方を提唱しています。

私たちが本当の意味で幸福に暮らしていくためには、働き方を含めた自分の人生を自分自身で創り出していくのが、とても大切になってくるのです。

私も含め、多くの人が自粛期間や変化した生活を通し、「行かなければならないと思い込んでいた『会社』ってなんだったんだろう?」「自分の仕事って、本当にこのまま続けていいのかな?」「そもそも、自分の人生、幸せってなんだろう?」と考える機会がたくさんありました。

「仕事はテレワークでもできる」「ワーク・ライフバランスを大切にしょう」「働き方改革」「多用性を大切にしよう」ということは、コロナの時期より前から何年もいわれてきたことです。
私たちがあらためて働き方や生き方を考えるのに、テレワークやコロナは単なるきっかけに過ぎなかったのです。

自分をセルフマネジメントする

私たちが幸福に人生を送るために必要な「自分をセルフマネジメントする」ということは、どのようなことでしょうか。

「マネジメント」という言葉自体は、ビジネスの世界でもすでに一般的になっている言葉で、もともとはラテン語が由来の言葉です。イタリア語で16世紀ごろから使われている言葉で、「野生馬の馴致」を指しています。野生の馬をうまく誘導して自分のうちまで連れて帰り、水を飲ませた後、調教していく一連の行為を、このように呼んだそうです。
ここから「マネジメント」は「どうにかこうにか、うまくやっていく」という意味になりました。これは単なる「管理」とは違います。

つまり「自分をセルフマネジメントする」ということは、いろいろな状況やライフステージの中で「人生をどうにかこうにか、うまくやっていく」という意味であるといえます。
私自身も、自分の個性を活かして「どうにかこうにか、うまくやっていくこと」を工夫する中で、自分の人生にとてもいい影響があったと思う経験がありました。

一番よかったのは、自分の人生に対してちゃんと幸福感を得られるようになったことです。

会社員からカウンセラーとして独立して一番変わったのは、通勤しなければならない会社や就業時間がなくなったことです。1日の時間をどのように過ごそうが、自分次第になっていきます。
もちろん、自由であるという言い方もできるかもしれません。1日をダラダラ過ごしても、誰に見られているわけでも、誰に怒られるわけでもありません。元来がナマケモノ体質の私は、それをいいことに「自由だなぁ~。ちょっぴり将来が不安だけど、いつか何とかなるだろう」とのんきに毎日をのんびりと過ごしていました。

しかし、それが何カ月も経つと、仕事をしているようでまったく成果が出ない。気がついたら、「この何カ月間、何をしていたんだろう……?」
と、何回も落ち込むことに。
特に独立していると、成果は収入にも直結します。実際には、カウンセラーとして独立したつもりでも、食べるために派遣さんやアルバイトで食いつなぎ、本業の時間が少なくなっていくといった悪循環な日々が何年も続きました。

自分としては、「勉強も続けているし、自分なりに一生懸命やっている。これは、まだカウンセリングがまだ一般的ではない日本の仕組みの問題だ」と自分なりの落としどころに行きついた中、ある会で自己紹介をする機会がありました。

その時の私の第一声は、「いわゆる『なんでも屋』さんです」という一言。問題は「私は産業カウンセラー・キャリアコンサルタントです」と堂々と名乗れなかったことでした。
これは世の中の問題でも他人の問題でもありません。

働く人をサポートするはずの自分が、自分の仕事についてさえ語れないなんて、なんて恥ずかしい。もう、カウンセラーなんて食えない仕事は辞めて、再就職しちゃおうかな……。

「本当に、このままでは仕事どころか、人生がヤバイ……!」
ある時一念発起し、自分の趣味でもあった手帳を使って人生プランを立て、自分自身でできるだけ楽しんで日々のPDCAを回す工夫(セルフマネジメント)を試行錯誤するようになりました。

次第に、企業でのカウンセラーや研修講師としてのお仕事もだんだん増え、個人のクライアント様に、セルフマネジメントをサポートさせていただく活動も始まり、仕事の収入も次第に安定し出したのです。
仕事がうまく回り出すと、プライベートも不思議なことに楽しくなるものです。趣味を楽しんだり、家族やパートナーとの関係を深める余裕も出てきて、自分の人生が急によい方向へと回り出す実感を手にするようになりました。

コロナ禍をきっかけにテレワークという働き方をすることになった方には、このセルフマネジメントのスキルが仕事上でも生活上でも、とても役に立ちます。日々を時間に追われてイライラしたり焦って仕事をするのは、幸福感どころかストレスが溜まる一方ですよね。

また、通勤時間がなくなったり、イヤな上司と顔を合わせることなく自分のペースで仕事ができても、同じ仕事を同じように続けるだけでは、自分のスキルもエンプロイアビリティも上がりません。リモートワークでお仕事をしている方にこそ、セルフマネジメントで、長期的に幸福感を感じる「well-being」の状態をつくってほしいと思います。

まとめると、セルフマネジメントの効果は、大きく分けて3つあります。

1つ目は、ライフアンカー(自分軸)が明確になる効果です。
ライフアンカーとは、自分の人生において生きる軸となる大切な価値観
をいいます。船の錨(アンカー)のように、人生の大切な選択のときに影響を与えたり、生きるよりどころとなるものです。ライフアンカーを自分がわかっていると、世の中の状況が変わったり、自分の人生の岐路に立たされるような状況でも、ブレずに納得のいく選択ができるようになります。

2つ目は、自己肯定感が上がる効果です。
自己肯定感とは、自分が自分であることに満足できる感覚です。セルフマネジメントで自分とうまくつき合えるようになると、「なんとかできるかも」と思える力が育ち、行動するエネルギーが出て、望む結果を手にしやすくなります。その結果、自己肯定感が上がっていきます。

3つ目は、自分も周りも平和な状態になる効果です。
セルフマネジメントができるようになると、何といっても自分の気持ちに余裕が出てきます。余裕が出てくると、周りの人にも余裕をもってコミュニケーションを取ることができるので、人間関係が良好になります。

上司や部下、同僚とのコミュニケーションツールがメール・チャット・ウェブ会議というデジタルになって「空気を読む」難易度が上がり、こちらの意図も伝わりにくくなりました。また、同居する家族がいる中でテレワークを続けていくには、お互いの協力が欠かせません。

家族がいる・一人暮らしにかかわらず、もともと仕事をするようにできていない「家」という空間を仕事の場として使うには、物理的にも工夫が必要ですが、そもそも気持ちの余裕がないと、難易度の高い工夫が必要なコミュニケーションはなかなかできないものです。
「しなければならないこと」だけをムリヤリこなしていくだけでは、未来への不安は残念ながら消えません。また、自分自身にも家族にもガマンを強いて自分の仕事を続けていくのにも、限界があるでしょう。

世の中の流れが「元には戻らない」という考えの中で、自由な働き方が「普通」になりつつあります。自由でいられるために自分をマネジメントすることは、働く人にとって不可欠な要素になってくるでしょう。

セルフマネジメントの効果をうまく活かして、自分の人生の質を自分自身で整えていきましょう。

ポイントは3つのセルフマネジメント

これからの時代のセルフマネジメントには、大きく分けて3つのマネジメントがあります。1つ目はタイムマネジメント、2つ目はメンタルマネジメント、そして3つ目がライフマネジメントです。

1つ目のタイムマネジメントがテレワークで仕事をするのに必要なのは、あなたも簡単に想像がつくかもしれませんね。
本来マイペースが好きでのんびり屋さんな人(私がこのタイプです)は、タイムマネジメントの必要性をたびたび感じでいることでしょう。一方、仕事を抱えがちな人や、今までいつも時間に追われている生活が習慣化していた人も、一見時間をやりくりしているようで、気づかない不具合があることも多いです。

たとえば、必要な情報が手に入っていなかったり、気がついたら仕事が思うように進んでいない場合は、タイムマネジメントを工夫できるチャンスです。無理やり気合でこなそうとすると、がんばっても結果が出ないという状態に陥りやすくなります。

具体的な方法としては、自分が今どのように時間を過ごしているか、そしてどのように1日、1カ月、1年を過ごしたいかを知り、実際に行動してふり返ります。このサイクルを少しずつ修正していくことで、満足度の高い仕事の結果もプライベートの充実も手に入れることができます。

2つ目はメンタルマネジメントです。ここで大きな課題となるのが、ストレスの問題です。ストレスは、生きていく上でゼロにすることはできませんが、メンタルマネジメントがうまくできると、むしろ味方にすることもできます。

人間は、1日に6万回の考えが頭の中に浮かんでくるそうですが、そのうちの約80%、つまり約4万5000回はネガティブな思考であるともいわれています。自然に浮かぶいくつかのネガティブ思考に対してメンタルマネジメントを使うと、「考え方の幅」を広げたり、新しい視点に気づくことがあります。これは、自分が必要以上に落ち込むことを防いだり、建設的なアイデアを出す手助けになってくれます。自然とストレスが減るのも、想像しやすいですね。
ストレスが減って自分に余裕ができると、対人に関しても余裕が出てきます。そのことが人間関係を良くして、仕事や生活がしやすくなることにも自然とつながっていくのです。

タイムマネジメントとメンタルマネジメントが整ってくると、テレワークでの働き方もだいぶ楽になっていくでしょう。気持ちにも余裕ができて、毎日を気持ちよく過ごせます。

そうすると、より充実した自分らしい人生を送るためには、仕事や人生の満足感がより大切に感じるようになります。そこで必要になってくるのが、ライフマネジメントです。
ライフマネジメントは、「未来が漠然と不安……」という人にも、とても役に立ってくれるセルフマネジメントです。

キャリア理論では、「キャリア」は仕事だけでなく、プライベートも含めた人生全体の役割や立場のことをいいます。組織心理学で有名なエドガー・シャイン博士は「キャリア」の定義を「人の一生を通じての仕事。生涯を通じての人間の生き方、その表現の仕方」としています。キャリアは生まれたときから死ぬまで、一生を通じてずっと続いているという見方もできますね。

社会人は、1日の時間の大半を仕事にまつわる活動に費やしています。前の項目でもお話しした通り、現代に生きる私たちは、人生100年時代という長い時間を過ごす自由がある一方、自分の人生の長さを自分で決められません。だからこそ、単なる「長さ」ではない生きている時間の「質」を上げていくことが、より自分らしい幸福な人生に直結していくのです。

もちろん、予想に反する出来事が起こったり、自分では望まない状態になることもおおいにあるでしょう。そんな世の中の流れや人生の荒波をしなやかに乗りこなしていくためにも、ライフマネジメントを活用してほしいと、願っています。

セルフマネジメントを回す3つのファクター

3つのマネジメント(タイムマネジメント・メンタルマネジメント・ライフマネジメント)を回すのに役立つ3つのファクター(要素)があります。それは「ためす」「たのしむ」「つながる」です。

1つ目のポイントは、「ためす」です。
人が新しいことをするのにあたって、まずぶち当たるのが「行動の壁」です。人間も動物なので、変化をしたり新しいことに挑戦することに対して、一瞬にして「危険じゃない?」という防衛能力が自然と働きます。だからこそ、私たちは「したいことがあるんだけど……」と何かに挑戦したくても、その一歩を踏み出すのが大変になります。

私自身も「自分って、『したいことをしない』理由を探すのが本当に上手だよねぇ~」と、自分のことをもて余すことが多いです。たとえば「時間があればやってみたいんだけど……」「今はこっちをしなければならないから……」「きっと、やっても意味ないよね」という感じです。

同じように私たちは、「したくないことをする」理由を探すのがものすごく得意という一面ももっています。実は「したくないこと」には、すでに経験があることか、「頼まれる」という他者がすでに行動する決定をしてくれているというケースが多いのです。
経験があると、イヤな反面慣れているので、手がつけやすいですよね。また、他者の決定だと、「自分で決める」という責任もありません。
後で何かあっても「こうすることが常識だから」「○○さんに言われたから……」という言い訳もできます。

セルフマネジメントは、自分が決めて行動することがスタートです。自分が「まずは試してみる」と決めて、変化を恐れすぎず、手をつけてみることをオススメします。
カウンセリングの場でも「自信がないので、できません……」という言葉をお聞きします。もちろん未知のことに挑戦するのは、不安で時には恐ろしい! と感じてしまいますよね。だからこそ、ほかの2つのポイントも上手に使って、「ちょっと試してみよう」と思えるような実験感覚で、ちょっとした一歩を踏み出す勇気を出しましょう。

2つ目のポイントは、「たのしむ」です。
「たのしむ」という言葉には、ウキウキワクワクだけでなく、良さを味わったり、実現を心待ちにするという意味もあります。
もちろん、何かをすることでワクワクすることなら、直接的にハッピーになりますよね。ただそれだけではなく、できごとや行動そのものを味わったり続ける良さを感じながら、実現していく過程を楽しむことも大切です。
よく「あの人はチャレンジ精神が旺盛だ」という表現をしますが、これは「ためす」と「たのしむ」のかけ合わせをしているということなのかもしれません。

そもそも「たのしむ」というのは、年齢や性別、置かれている立場に関係なく味わえる、人として欠かすことのできない感情なのではないでしょうか。

「ためす」「たのしむ」をより簡単にしやすくするのが、3つ目の「つながる」です。
人とつながる・情報とつながる・点と点がつながって線になる・自分とつながる。私たちの周りには、たくさんの「つながる」があります。
「人とつながる」ことについては、私たちは他人との物理的距離を強制的に味わったことで、あらためて考える機会が増えました。
仕事がしやすい・しにくいという仕事関係のつながりだけでなく、家族との時間が増えたり、逆に実家に帰りにくい状況などが生まれて、家族のつながりをあらためて感じた人も多いのではないでしょうか。また、定期的に食事をしたり遊んでいた友人・知人とのつながりなどもあります。

私は「つながり」には、大きく分けて2種類あると思っています。1つは、「かた結びのつながり」、そしてもう1つは、「ちょう結びのつながり」です。

「かた結びのつながり」は、家族やパートナー、そして信頼できる近い友人関係のことを指します。お互いに何かあれば、助け合い支え合う深い関係です。自宅でリモートワークをすることで、家族との時間が増え、あらためて家族との関係の大切さやありがたみ、そして家族とは何か? ということを考えた方も多かったように思います。このつながりが少ない、もしくは、ないと感じている人は、孤独感を感じやすく、ストレスが溜まりやすい状況にあるかもしれません。
「ちょう結びのつながり」は、「かた結びのつながり」の外側にある、ゆるい人間関係のことを指します。仕事を通した関係、趣味を介した仲間、コミュニティの付き合いやご近所づきあいもこれに入るかもしれませんね。
「ちょう結びのつながり」は確かにゆるい関係ではありますが、思いのほか人が生活していくのに重要です。
家族以外で「かた結びのつながり」をつくっていくのに、いきなり深い関係になるということは考えにくいです。あるとしたら、何か大きな事件や出来事を一緒に経験しないと、この関係はできないかもしれません。ふつうの生活では、「ちょう結びのつながり」を通して時間をかけてつくっていくのが「かた結びのつながり」でしょう(できれば大きな事件は経験したくありませんよね)。
ちょっとしたお困り事を相談できる関係、仕事のスキルや知識を教えあう関係、一緒に趣味を楽しんだり、イベントをつくり上げる関係は、日頃のストレスを少なくし、何かを「ためす」勇気が出たり、「たのしむ」をシェアし合う関係にもなります。

テレワークが一般的になる前は、この「ちょう結びのつながり」は、誰かと知り合いになるために、家の外に出ないとつくりにくいつながりでした。しかし、今では幸いなことに、オンラインのおかげで距離や生活様式、時差を越え、今までに会えなかった人とも簡単に「会う」ことができます。

私もコロナ禍をきっかけとして、学びや思いを同じくする仲間との活動などのいろいろなオンラインのコミュニティに参加しました。
頻度もさまざまですが、「医療従事者を思って一緒に歌う」という趣旨のもとに集まった「567ability(コロナアビリティ)」というコミュニティでは、今では歌うだけでなく、毎朝一緒に体操をしたり、お互いの得意なことを提供して学び合ったりする仲間に成長しています。毎朝の活動は、生活リズムが整うだけでなく、「ちょう結びのつながり」から「かた結びのつながり」へのプロセスを、かなり早いスピードで経験中です。
このコミュニティに参加した当初は、一緒に入った友人ひとり以外は誰も会ったこともなく知らない人たちでした。でも1年以上活動を続けていく中で、それぞれのキャラクターが活かされ、お互いに自分のもっている知識や意見、個性をコミュニティに提供していくうちに、オンラインを通し「(リアルでは)会っていないけど、(オンライン上では)毎日会って様子も知っている」という不思議な関係ができ、現在も続いています。

もともとリアルで定期的に会っていた仲間とのつながりも、オンラインを活用することによって深まったものがありました。心地の良いつながりが続くことは、なによりも安心感にも「つながり」ます。
実際に疫学調査でも「社会とのつながりの種類や量が多いことは、タバコや飲酒を控えるよりも長生きや健康に良い影響をもたらす」という結果が出ています。

3つのポイントを使いながら3つのセルフマネジメントを回していくと、日々の生活も、自分の人生も充実したものにつながりやすくなります。働き方や生活スタイルが変わり、自分次第では時間の使い方を工夫できる今だからこそ、新しいことを試してみるチャンスです。ぜひつながりを味方につけ、楽しみながらマネジメントしてみてください。 
どんな人生を選びますか?

あなたが今後、組織の中で働き続けるのであれば、ますます聞かれるだろうと想像できるのが、次にある2つのことを中心とした質問です。

「あなたは何ができますか?」
「あなたは何がしたいですか?」

特にジョブ型の働き方になってくると、この2つの質問に答えられない人は、組織がその人にどんな仕事を頼み、どのように育成していくかが、まったくわからないという状況になってしまいます。
この「何ができるか?」「何がしたいか?」の質問には、仕事の知識や経験だけでなく、ライフプランなどの生き方の部分も、これからどんどん入ってくるでしょう。

人の人生には大きく分けて2通りの生き方しかありません。
1つは、自分の人生の物語を自分で選び、自分で決めていく人生。もう1つは、他人や周りに翻弄され、他者に自分の人生を委ねてしまっているにもかかわらず、「アレさえなければ……」と、周りのせいにして不幸せ感や恨みつらみにまみれてしまう人生。

どちらの人生が「良い」「悪い」かは、残念ながら他人が決めることではなく、自分が決めるしかないのです。なぜなら、自分の人生を誰かの代わりに生きてもらうということはできないからです。

大切なことは、「自分の『人生』という物語を自分でつくっている感覚」というのが、人間にとって幸福感をもてる感覚の1つであるということです。

オーストラリアで緩和病棟の看護師をしていたブローニー・ウエアは、著書『死ぬ瞬間の5つの後悔』(新潮社)の中で、余命週数間の患者たちに問いかけた「人生の後悔トップ5」について書いています。

1.自分自身に忠実に生きればよかった
2.あんなに働かなくてもよかった
3.もっと自分の素直な気持ちを伝える勇気をもてばよかった
4.友達と関係を続けていればよかった
5.自分をもっと幸せにしてあげればよかった

このトップ5を見ると、私たちは大人になると、自分の素直な気持ちをどこかで押さえつけた結果、家族をおざなりにして仕事をしてしまったり、本当に欲しい関係を手放してしまうことがあるようです。
それは時間にふりまわされ、気持ちにも余裕がなくなる結果、自分の本音にとって必要なことを選択できなくなってしまっているのかもしれません。

別の見方をすると、毎日のちょっとした選択や行動によって人生全体の満足度を上げることできるともいえます。
次の章からの3つの「セルフマネジメント」を味方につけて、自分が幸せを感じる毎日をつくっていきましょう。

*   *   *

第一章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子書籍ストアにて12月1日より随時発売になりますので、是非お買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『人生の「快適」解をつかむ!3つの習慣 テレワーク時代のセルフマネジメント術』

著者プロフィール

野村 式栄

キャリアコンサルティングチームMAKANA代表
キャリアコンサルタント・公認心理師・産業カウンセラー

2005年に心理カウンセラー・キャリアコンサルタントとして独立。16年間で、カウンセリング約4,700名、研修では約2万8,000名の「働く人」のサポートをする。
旅の合間に仕事をする「OUTSIDE HOME」な働き方をしていたが、2020年に生活が一変、仕事の8割を自宅の部屋でこなす「STAY HOME」生活になる。
自粛生活を強いられる中、「自分の生活が変わっても幸福感を感じながら仕事や生活をするのに必要な要素は何か?」ということに問題意識を感じ、Well-being(持続する幸福感)な人生を送るためには、3つのセルフマネジメント(タイムマネジメント・メンタルマネジメント・ライフマネジメント)が重要であることを見出す。
現在は、リモートワークやワーケーションでカウンセリングや研修活動の傍ら、個人向けに「手帳で世界平和」をモットーに、「妄想」を「現実」に変える力をつける「ドロシー手帳術」を伝える活動もしている。

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