ボーッと

書く練習(4/12)

「お疲れっした！」
四方から缶ビールの開く音がする。私は一口だけビールを飲むと、その美味しさに思わずおいしいと呟いた。最初の一口を終えると、皆次々に自分のタバコに火を付ける。店長の吐き出した甘ったるいピースの匂いに包まれる。この先ピースの匂いを感じるたびに、私はこの時間を思い出さなくてはいけないのだろうか。

自由が丘にあるレストランでアルバイトしている私の職場では、お客さんが全員帰った後、店の締

書く練習(4/7)

女「まだやってたの？」
男「ごめん、起こしちゃった？」
女「ううん、平気。ごめんね、気、使わないで。」
男「いやいや、ごめんね。」
女「また飲んでる。」
男「うん、ちょっと不安で。」
女「やめておきなよ。ほんとに死んじゃうよ。」
男「平気だよ。」
女「平気じゃないの。」
男「ごめんって。怒らないで。」
女「怒ってないけど。」
男「ごめんね、電気消そうか？」
女「平気。ちょっと起きる。何か飲む？」

書く練習(4/6)

女「やばかったね。」
男「やばくはないけど。」
女「まあやばくはないけど。」
男「びっくりしたよね。」
女「びっくりしたね。」
男「手とか繋いでなくてよかった。」
女「わざわざ街中で繋いだことなくない？」
男「ないけど。」
女「繋ぎたくない派でしょ。」
男「繋ぎたくないわけじゃないけど。」
女「繋ぎたいの？」
男「いや…。いや、繋ぎたくないわけじゃないんだけど、繋ぎたいって感じじゃない。」
女「…

書く練習(4/4)

先輩「あれ、あっちゃん。」
後輩「先輩タバコ吸うの知りませんでした。」
先輩「吸う人の前でしか吸わないもん。」
後輩「今日吸う人いないじゃないですか。」
先輩「大人数での飲み会は別だよ。」
後輩「先輩は5人からはたくさんの人？」
先輩「3人からはたくさんだね。」
後輩「基準低いですね。」
先輩「まあね。そっか、あっちゃんと飲み会とかで同じになるのって初めてか。」
後輩「そうかもですね。」
先輩「ま

書く練習(4/3)

先輩「おお、久しぶり。元気？」
私「お疲れ様です。お久しぶりです。」

先輩「すいません、生一つください。あ、何飲む？」
私「じゃあ私も。」
先輩「じゃあ生二つ。それから、もつ煮と冷やしトマトと。ん〜、唐揚げで。あ、あと梅水晶ください。なんか食べたいものある？」
私「いえ、平気です。」
先輩「じゃあとりあえず以上で。」

私「先輩、なんか変わってないですね。」
先輩「そう？」
私「っていうか相変わ

例えば、失われた時を求めたとして / 小さな断片

画像フォルダを遡ると、線香花火を持って曖昧に笑いかける私の姿があった。

煎って挽いたコーヒー豆は、始めにお湯をコーヒーに変える前にお湯を注いで蒸すんだよ。

人間は二度死ぬ。厳密には二つの異なる死を持つ。一つの死を経験し、また生を受けることなくもう一つの死を待つ。その時間をなんと名付けようか。

悪夢は、夢ではなく現実に存在しているということ。逆に言えば現実にこそ悪夢があるということ。

スタン

３限をサボりながら見た夢

　微睡から目を覚ますとそこはどうやらバイト先らしい。視界の中に、カーテンを閉め切った薄暗い理科室のようなその光景が浮かぶ。白くて大きい四人がけのテーブルが流しを挟んで二つ繋がっているのをワンセットに、横に三列、奥にも長く伸びているようだ。バイト先は昼過ぎから営業しているらしく、目を覚ました状況から察するに僕は二階を独りで回していたらしい。しかし、あまりの客足の悪さに眠ってしまったのであろう。店長が

川沿いを歩く

「世界にはほんとうのことしかないのに
目に映るものは全部うそね」
君がそう言った
吐いた煙はゆらゆらと
うそくさく消えていった

「9月はなにをしていたの」
問われて僕は戸惑った

「別になにもしていなかったよ」

「世界にはほんとうのことしかないのに
目に映るものは全部うそね」

僕は手紙を書くよ
君に
なにをしていたのかも
全部本当だよ

短編集(~2019)

今までの文章をまとめてみました。古臭いNOTEのアカウントを消してしまおうと思ったのはいいけれど、過去の自分をなかったことにするのはズルだと思ったからです。

以下にPDFファイルで載せました。ご興味ありましたら。

三角と四角

あなたを好きになったのと同じ理由で

あなたのことを嫌いになった

あの頃は強かったのねと

向こう岸にいる自分に言った

「いつだってメビウスの輪
進んでは戻り
進んではまた同じ場所に戻るのよ」

向こう岸から声かけられた

河の匂いを忘れていき

目が見えなくなって

遠くに光る灯りに頭を下げて

ただ少しだけ

生きていくには優しすぎたんだ

君は少し優しく生まれてきてしまったんだ

次に生まれたら
一緒にほしい車の話をしよう

だから今は
音楽に身を任せて

だから今だけは
ゆっくり目を閉じて

生きていくにはなにも知らなすぎたんだ

知らなきゃいけないことばかりが君を刺し殺していったんだ

次に生まれたら
一緒にお金を数えよう
次に生まれたら
一緒に異性の話をしよう

だから今は
花が散るまで眺めてい

日常のメモ

邂逅

とりとめのない話

自転車を買った。マウンテンバイクほどの攻撃力はないけれど、ママチャリとは呼ばせないぜとでも言いたげな姿勢で走る深緑色のやつ。生活に余裕があったわけではなかったけれど、コンビニ弁当だけにお金が消えていき、他に目立った趣味や娯楽がなかったのが味気なく、思い切ってみた。特別用事がない限りは家とコンビニとの往復だけだった生活区域は彼の登場で大きく広がり、一駅隣のTSUTAYAや銭湯、果てには「ちょっと風で

星を落とす

S1

S2
「こんばんは」
「ああ、こんばんは」

「例えば、星が落ちてきて」
「この街に落っこちたとして」

「全部燃えちゃうんじゃないですか」

「そうかな」
「そうですよ」

「きっと楽しいでしょう」
「きっと、そうだね」

「だんだん年を取って」
「ゆるやかに老いて」

「僕が星をとってきて」
「きっとこの街に落とします」

「映画みたいに燃やして」
「最初から始めましょう」

「だから