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ポチポチ物語

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物語ってなに? 都合の良い正当化? なんでそんなものを書くの? 今時、物語に価値なんかあるの?
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#創作

誰かの傘

誰かの傘

 コンビニで買い物をして、帰ろうと思ったら、雨が降ってる。
 あー、傘忘れた。
 このままぬれて帰るのは嫌だなあ。
 そう思ってたら、傘立てに、いくつものビニール傘が立ててあるのを見つけた。
 やった。
 おれは適当なビニール傘をとって、それをさして家に帰る。
 
 盗んだことの罪悪感はなかった。
 だって、ビニール傘なんて、どれも同じようなもんだし、どうせ安いし、盗られた人も、また買えばいいでし

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浦島老太郎

浦島老太郎

 おれが箱を持った老人を見つけたのは、早朝の散歩道だった。
 薄暗く、人気のない散歩道で、ふと、海辺に目をやると、そこに人影があり、普段は誰もいない時間帯だったから、不思議に思い、近づいてみると、その人影は老人で、手には箱を持っていて、なんだかぼんやりとした表情だった。
 おれが近づいても、おれが見えてるのか、見えてないのか、わからなかった。
 白髪で、古びた着物みたいなのを着ていて、なんとなく男

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普通の雨模様。

普通の雨模様。

 学校が終わり、さあ下校だ、という時に、雨が降っていて、私は傘を忘れていることに気づき、下駄箱の前で立ち止まってしまう。
 他の子たちは、なんか普通に傘を持ってきてるみたいで、または、忘れても、友達同士で相合い傘したり、男子なんかは、濡れてもいいやって感じで雨の中を突っ走ってて、それがうらやましいけど、私にはそうできない、特別な理由があった。
 特別な理由とは、スマホだった。
 誕生日プレゼントで

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推しのオシッコ。

推しのオシッコ。

 「ねえ」
 「うん?」
 「オシッコのアイドルって知ってる?」
 「え?」
 「だから、オシッコ」
 「え、推しの子?」
 「違う。オシッコ」
 「オシッコ?」
 「オシッコのアイドルがいるんだって」
 「なにそれ」
 「ね」
 「ねって、あんたが言ったんでしょ」
 「うん」
 「いや、うんじゃなくて……」
 「あ、説明?」
 「説明っていうか、あんたが急にオシッコのアイドルとか言ったんでしょ、

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ポチポチ能力者!

ポチポチ能力者!

 麻薬で捕まった漫画家のことで、友達と軽く口論になる。
 軽くね。
 そんなに激しくないやつ。
 私はその漫画家の作品を読んでて、どうやったらこんな話が書けるのか、こんな奇抜な絵が描けるのか、いつも不思議で、それが面白くて、ファンだったのだけど、実は麻薬なんかをやってたことがわかって、私は心底、ガッカリだったのだ。
 だって、麻薬って、ズルじゃんね。
 麻薬なんかの力を借りて、面白い漫画を描くなん

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邪魔系女子の憂鬱。

邪魔系女子の憂鬱。

 「小澤ってさ、女子のグラビアとか見るの?」
 と、女子に変な質問をされる。
 その女子とは、関谷松子。
 同じクラスの女子。
 大してかわいいって程でもないけど、それがどうでも良くなるくらい、性格キモくて、なんか、本人としては、中学生男子のことをわかってるつもりであるらしく、よく男子に変な質問をして、それにのってきた男子と、バカな話をして盛り上がっている。
 そんな感じの子。
 僕は距離を置きた

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EXTENDED

EXTENDED

 「ひどい話だな」
 俺は言った。
 「それじゃ、なにもできないじゃないか」
 「そうだ。警察も役に立たないし、俺たちはただ眺めることしかできないよ」
 そういって、知野はパソコンの画面を見つめる。
 画面には、一人の女の子が映っている。
 女の子は閉じこめられている。どこかはわからない。緑色のペンライトが顔を照らす。それ以外は暗くて見えない。
 パソコンにその映像が映されている。
 こうして見る

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