何も居ない水槽が好きだった。
ある朝、何かの気配に気付く。
右、左、目が合う。
コポコポと音のする水槽に金魚が居た。
何も居ないはずの水槽に金魚がいる。
買った覚えのない、もらった覚えのない金魚。
一人暮らしで、僕が買う以外もらう以外そこにいるはずの無い金魚の存在。
コポコポと音だけがする水槽で優雅に泳ぐ。
「講義始まっちゃう…」
金魚を残し大学へと急いだ。
「お前、昨日すごかったよなぁ!あんな人変わる?マジ面白かったー!」
「佐川くん…何のこと?」
「いや、覚えてないの?ホント?やっべぇ」
「…?」