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動物ショートショートA(10作品)

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tabino.が描いた動物の絵とショートショートの10作品をまとめました。
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記事一覧

『むーん』

『むーん』

水族館でカワウソを見ていた。否応なしに可愛い。
1匹、他のカワウソの上に図々しくアゴを置いている子がいる。可愛い。むーんとした顔をしている。
「むーん」
どこかから聞こえてきた。空耳かと思ったが近くから聞こえてくる。
「むーん」
まさか、あのカワウソが言っているのか…?と思ったその後すぐに隣の女の子が言っている事に気づいた。マジマジと顔を見てしまう。
向こうも、あっ!という顔をしている。
「すみま

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『オレンジ色の嘘』

『オレンジ色の嘘』

「ぼく、知ってるんだ…!この世界ってオレンジ色だけじゃないんでしょ?母さん…」
少し成長した羽を動かしながら、一羽の猛禽類が言った。
「オレンジ色だけよ?でも、ちゃんとオレンジ色の種類を教えていなかったわね。ごめんなさい」
「オレンジ色の種類?」
猛禽類の子はもしかして、と呟く。
「クロとかアカとかってみんな言ってた…」
「そう!そのことよ」
「クロってどういう意味?」
猛禽類の母親は微笑見ながら

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『返信』

『返信』

ある朝目覚めるとイグアナになっていた。何故。いや、それより昨日同僚の女の子からLINEが来ていたはずだ。俺は確認して返信をしなければという強い思いに駆られ、気付くと元の人間の姿に戻っていた。イグアナになってまでその子への思いを再確認しなければいけなかったのか、俺は。

『鳥とて己で判断す』

『鳥とて己で判断す』

かれこれ沖縄に来てもう1ヶ月になる。俺は幻の鳥と言われる神号鳥(しんごうちょう)を探して森に入ったのだが中々見つからない。神号鳥は、しようとしていることについて問うとそれが正しいか、正しくないかを判断してくれると言われている。
開けた空間に出ると、唐突に現れた。神号鳥だ。
赤と青と黄色の配色が美しいその鳥に、俺は興奮しつつ質問した。
「好きな子に告白したらOKもらえますか!!」
神号鳥は羽ばたき、

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『きっとモルモット』

『きっとモルモット』

さっきテレビで見た動物、あれ何だっけ…。こう、小さくてモフモフしてて私が見たやつは巻毛なんだけど。エサを小刻みに食べてる動画よくみるんだよねー。あと、一列に並んで歩いてたりしない?違ったっけ?何だったかなーん〜…

あ!そう、それ!ハムスター!

『ベタな展開』

『ベタな展開』

「さっき見かけた女の子が気になるんだよ。ショートヘアで前髪に青いメッシュが入ってたんだけどさ」
私の主人が、独り言と思い込み喋り続けている。
「何か気になるって言うか、もう一度見たいんだよなぁ。…というかお前に似てる気がするー、なんつってな」
私の主人はいつもギリギリで気付かない。
今回は青のメッシュ、前回は紺色の長いスカート、前々回は黄色のキャップ。
どう考えても水槽で泳ぐわたしのカラーリングな

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『うさぎは悩む』

『うさぎは悩む』

小さな薄茶色のウサギは今真剣に悩んでいる。右に進むべきか、左に進むべきか。このウサギは左右に何があるかを知らない。好奇心と希望に溢れに溢れて悩んでいるのだ。

『幸福の狼』

『幸福の狼』

突如現れた碧いオオカミは私の方に目線を向け、「幸せ?」と急に話しかけてきた。私は、急過ぎてオオカミが何を言ったか分からず「え?」と妙な声を出した。すると、「良かった、幸せそう」と言って去っていった。余程、私は間抜けな顔をしていたのだろう。

『余裕の超訳力』

『余裕の超訳力』

我が家のウサギは堂々としている。名前をみぃちゃんという。いつも私の方を見て、何も問題は無いよ、とでも言っているかのような態度だ。ある日私は早朝の通販番組で超訳メガネというものを手に入れた。このメガネは簡単に言うと、どんな動物の言葉も分かるようになるという機能が搭載されている。早速、メガネをかけてみぃちゃんを見てみる。
「人間の言葉なら話せるんだけど?」
メガネをかけ直す。
「いやだから、話せるって

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『童心』

『童心』

久しぶりに実家に帰ると近くに見知らぬ公園が出来ていた。誰も居なかったのでジャングルジムに登ってみた。30過ぎて一人登るジャングルジム。一番上、そこに一羽の雀がいた。その雀は「お気持ちわかりますよ。」と言った。