たわしくん

どこを掴めばいいの。たわしくん。

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さいごのひ

商店街が賑わっていたのは過去の話で今はすっかり綺麗な家ばかりが並んでいる。この道は、インタロッキングで綺麗に舗装されていて、車も通らずただひたすらに、真っ直ぐ伸びている。君の家から僕の家までを繋ぐ、3色のブロックが敷き詰められた道。十字路には、まあるい模様。商店街の道。 君の家に向かうのはいつも夜だったけれど、等間隔に並んだ街路灯が明るく照らしてくれていた。まるで、この道が正解ですよ。と教えてくれているようだった。 商店街に入って少し進んだ右手の路地には、フチの錆びた青色

    • やり残すべきこと

      あれから2ヶ月が過ぎた。 何度も駄々をこね、そのたび君をしぶしぶ納得させてきたけれど、今回は何もしようと思わない。 いい加減に気付いた。 僕じゃだめだ。 彼女を幸せにできない。 一緒にいると楽しいし、こうして会えない時はとてもさみしい。それでも、一時の感情で全てを不意にしてしまう。 何度も傷付けた。 謝ることさえおこがましい。 許してほしいとは、もう思わない。 僕は大好きな人を何度も傷付けた。 一時の感情を優先して、一生大切にすべき人を、何度も。傷付けた。 自分でし

      • 夢を見た

        君の名前を叫びながら目が覚めた。 心臓がドキドキしてた。 今もドキドキして心臓が痛い。 悪夢だった。 本当は夢じゃないのかもしれない。 それも仕方のないこと。 いつかの予行練習。そんな夢だった。 そんなに好きなら最初から

        • 後悔しないために

          12年前の5月25日、ドッグが死んだ日。 家族会議で決定権を持つ兄に、犬と命名されそうになったこの犬は、母の可哀想のひとことで、それを回避し、めでたくドックと名付けられた。僕の1番古い記憶の中にも登場する。ドッグは約18年生きた。 学校帰りの僕に気付くと、いつも嬉しそうに尻尾を振ってぐるぐると走り回っていた。遠くからその様子を見て僕も嬉しくなった。でも、いざ玄関に着くと、わざと知らんふりをして僕が来るのを待っている。僕も気付かないふりして家に入ろうとすると、ワンと小さく鳴

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          いま

          目が覚めた。 いつ眠ったかは覚えていない。 いつも気が付いたら朝になっている。 夢の中は、なんでもありだから、とんでもないジャンプスマッシュも打てるし、僕の周りだけ雨が降らなかったり、君がコジコジみたいにビューンって飛んできてくれたりする。 何度も夢を見ては、途方もない感情に支配された朝を迎えた。 パッと目を開いて、天井を見つめたまま何が何だか分からなくなって涙が出てきた。昨日の出来事は、昨日あったと思われる出来事は、果たして本当にあった出来事なのか。わかってる、答え

          僕の推し活

          僕には推しの子がいる。 家から徒歩15分の距離にいる。 推しは僕に興味がないけれど、僕と会ってくれている。 何度も忘れよう離れようと頑張ってみたものの、なにか引力のようなものが働いているようで今日も彼女を想っている。 他の人と会ってみようと思ったこともあったけれど、彼女の代わりなんて誰にも務まるわけがないのは目に見えている。そんな時間とお金を無駄にするくらいなら仕事でもしている方がマシだ。 もう2度と戻らないのか。本当に。 彼女と一緒にいると胸が安らぐ。同時に所々から

          家族というもの

          僕には家族がいる。 なにを当たり前のことを言っているのだ、と思われるかもしれないが、最近までいなかったのだ。 正確に言うと、いないものとして生きている期間があった。おおよそ3年と執行猶予2年ほど。 きっかけは結婚だった。 父が僕の結婚相手に暴言を吐いたのだった。 電話での出来事。向こうはお酒も入っていたのだろう。つい気が大きくなって言ってしまったに違いないが言ったことは事実。僕は、もう一度言ってみろと繰り返したが、罪の意識があるのか、父は同じセリフを言わなかったし、謝罪

          家族というもの

          今日は良くない日でよかった

          久しぶりにフットサルに行ったら、えげつないファールもらって怪我するし、自販機で飲み物買おうと思ったら100円落として側溝の中に入っちゃうし、ろくな日じゃなかった。コーラなんて買おうとするからそんなことになるんだね。 僕の悪い運は今日全部使い切ったはずだから、明日はいい日になるはず。それなら僕の代わりに君の明日がいい日になればいいな。 緊張すると、すぐへなへな顔になっちゃうから、気をつけて。落ち着いて、深呼吸して、胸張って、身体の重心を真ん中に持ってくるイメージで、前のめりに

          今日は良くない日でよかった

          思い出。

          嫌な気持ちになると思うから、見ないでほしい。 2023年7月 今年の梅雨は、ちゃんとした梅雨だ。 よく雨が降る。毎日のように、せっせと雨を降らすのは生真面目な性格の表れだろう。 もう7月なのか、と改めて驚いたのは昨日のこと。 2年先輩で同い年だけど役職は僕より下の人とボーナスの差について話していた時のことだ。 約8万ほど違っていた。 こんなに違うのかと驚き、かける言葉が見当たらなかったので、慌ててその使い道の話にすり替えた。 その延長線上の話。 7月なので、もう1年

          君たちやっぱり親子だね

          去年の母の日にポトスエンジョイという植物をあげた。 半年ほど前、ちゃんと育ってるか?と兄にラインをしたら写真が送られてきた。 そこには、不自然な角度で少し遠めのポトスエンジョイが写っていた。 兄が本当に見せたかったのは手前にある。それは彼が大好きな名探偵コナンの作りかけのジグゾーパズルだ。 わざわざ、そのために移動させたのだろう。 せっかくだけど、僕はあんまり興味ないから触れなかったよ。ごめんな。 今日、母から写真だけが送られてきた。 ポトスエンジョイと、僕が家を出

          君たちやっぱり親子だね

          合言葉

          ここ最近、ちゃんと生きている。 規則正しく生活している。 適度にサボって適度に戦っている。 まだまだ足りない部分も多い。 特に感情をコントロールすることに関して。 今までの僕ならそれも許されると思って生きていた。わがままが通せるのも能力や才能の一つだと。それは確かに一理あるとは思うけれど、いい加減に次のステージに進まなければならないとも思う。 子どものころは、水泳が得意だった。 長距離走も学年で1番だった。 最後は自分との戦いだ。それは全てに共通するけれど、周りの様子が見

          ありがたいお薬

          フィナステリド(Finasteride)は、アメリカメルク社が開発した抗アンドロゲン薬。2型5-α還元酵素を阻害して、男性ホルモンテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に転換されるのを抑制する。 低用量(0.2mgまたは1mg/day)で、男性型脱毛症(AGA)に対して脱毛抑制効果を認め、プロペシア(Propecia)の商品名で多くの国で発売されている。プロペシアの日本での特許は2015年に切れており、各社から後発品が発売されている。後発品の商品名にはフィナステリ

          ありがたいお薬

          くら寿司行きたかった

          今日の彼女はどう見てもおかしかった。 それが何に起因するものなのか分からないけれど、僕は掘り下げるつもりもないし、嫌なことを無理強いするつもりもない。だから普通に聞いたつもりだったのに、彼女はオロオロと眉毛をへの字にして小さな声で何かを言っていた。 ただ普通にバドミントンをして、いつもの空いてるくら寿司で、いつもどおりお腹が苦しくなるまで食べたかった。僕が悪かった? 結果だけみたら僕の発言に配慮が足りなかったってことだ。確かにまたこれかって、イライラしてたから言い方がきつかっ

          くら寿司行きたかった

          あれから

          いろいろなことがありました。 楽しい思い出も悲しい出来事も。 夏を少しだけ好きになりました。 人と向き合う意味を知ることができました。 そして、いろいろな人を傷付けてしまいました。 もう元には戻れません。 僕は困っている人を見ると、つい何かしてあげたくなるのです。手の届かないところに手は差し伸べられませんが、僕の手を握ってくれた人には何かしてあげたいのです。僕の手を握ったことを"良かった"と思って欲しいのです。 でもそれは、一方的な良かれと思ってです。 きっと、僕が手

          たわしくん

          あるところに1人の男がいました。 30を過ぎた青年とは呼べないおじさん。 名前はたわし。誰に名付けられたわけでもなく、幼少期から自分自身の取っ付きにくさと、たわしの刺々しさを重ねて、なにやらこいつは僕に似ているな、と感じていた彼は、自分で名前を決めれるゲームやSNSで、積極的にその名前を使っていました。 たわし その名を聞いて、何か分からない人は珍しいと思います。みんながあの焦茶色のチクチクした物体を思い浮かべるでしょう。 たわし その名を自分のものとして扱う人も珍し

          たわしくん

          クズはいつまでもクズ

          今よりもっと若い時、素敵な出会いをした。 してしまった。 とても美しく、尊いものだった。 それを燃料とし、煌々と燃え上がっていたけれど、本来なら燃え上がることのない構造だったそれは、ある日、突然に熱を失い火は消え失せた。使い道のなくなった燃料はドロドロに濁り、いたるところから漏れ出ていく。僕にはそれらを止める術も気力もなかった。今では中身は空っぽで、2度と点らないようアルコールランプみたく蓋をされている。 それから僕は変わった。 優しく、そして冷たくなった。 その変化は

          クズはいつまでもクズ