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思い出。

嫌な気持ちになると思うから、見ないでほしい。

2023年7月

今年の梅雨は、ちゃんとした梅雨だ。
よく雨が降る。毎日のように、せっせと雨を降らすのは生真面目な性格の表れだろう。

もう7月なのか、と改めて驚いたのは昨日のこと。
2年先輩で同い年だけど役職は僕より下の人とボーナスの差について話していた時のことだ。

約8万ほど違っていた。
こんなに違うのかと驚き、かける言葉が見当たらなかったので、慌ててその使い道の話にすり替えた。

その延長線上の話。
7月なので、もう1年半くらいですかね〜。
まだ彼女と付き合っていればの話だ。
別に全て話す必要はないだろうと、もう別れて2ヶ月も経つのに、未練がましく僕は答えた。

1年半。
いろいろな出来事があった。
休日出勤のこの間に振り返ってみる。

出会いのきっかけは出会い系サイトだった。
僕は彼女の日記を見つけ、その文章に惹かれ、すぐにお気に入り登録をした。すると彼女が僕のページに来てくれて、僕の日記を読んでくれた。

僕は、彼女のプロフィール写真を見て、
冷たい目線が素敵ですね
などと送ったと思う。

メッセージを送っても返事が無いとこは多々あるけれど、彼女は病院の診察待ちで暇を持て余していたようで、すぐに返事が来た。その流れで僕は彼女をデートに誘った。とても寒い12月初旬のことだった

梅田の泉の広場。
多くの出会いのスタート地点であろう場所で彼女を待つ。緊張もなければ、期待も不安もない。何気ない日常のひとつだった。

そこに現れた彼女は俯きがちで無口な子だった。
ここから1年半近く続くなどとは全く思っていなかった。

地上へ出て予定していたカフェへと向かう。
おしゃれでもなく、スキマ時間を潰すために利用するようなカフェ。
真冬なのに、アイスカフェラテを頼む彼女。
おしぼりの縁をビリビリに破き続ける彼女。
ニヤニヤしながら心を開いていない彼女。
一生懸命にお話する彼女。
とにかく緊張しているんだなということは、よく分かった。

過去に出会った変な男たちの話。
お友達の出会い変歴など、1時間ほどお話しただろうか。解散の流れになり外へ出ると、やはり寒かった。
寒いから手繋ごうかと、彼女の手を握った。
小さく、柔らかい女の子の手だった。
とても、可愛かった。

僕と彼女の最寄駅は、ひと駅違いだった。
帰りの電車で先に降りようとする彼女を捕まえて、もっと独り占めさせてとうちへ招いた。

今は荒れ果てた部屋も、当時はもっと綺麗で洗練されていた。そこで彼女を独り占めした後、家まで送ってお別れをした。

その道中のこと。寒いね、と僕が言うと"こんなの全然寒くないよ"という彼女。この言葉はその冬に何度も聞くことになった。吐き捨てるようにそれを言う彼女が、かっこよくて好きだった。

彼女にはお気に入りのセフレがいて、僕も同じようなものだった。一緒に食べるつもりだったご飯を断られたことで、僕はもう会えないのかなと残念に思った。

僕の懸念とは裏腹に、週に1〜2回彼女と会うようになっていた。クリスマスの近付く12月末の話。

僕は相変わらず出会い系サイトを続けていて、そこで仲良くなった1人の女の子と会った。
その日は彼女と会う約束をしていたが、体調が優れないので断り、どうでも良さそうなその子と会うことにした。小太りのその子は予想どおり、どうでもいい子になった。

問題が起こったのはその後だ。
その子の話と彼女の友達の話が妙にリンクしていた。僕は思わず、その子知ってるかもと言ってしまった。僕と彼女の信頼関係は崩れ去った。

僕は会うたびに彼女に好きだと、付き合ってと繰り返していた。本気で思ってはいるものの、間に受けない彼女を見て半ば諦めながら口癖のように言っていた。彼女は、真剣に考えてくれていた。そんな矢先の出来事だった。

直前に、彼女の過去の話を聞いた。
17歳の時の記憶。事細かに説明される悲惨な出来事、内容は割愛するが、駐車場の小石まで目に浮かんでくるその説明に僕はなんと言っていいのか分からなかった。涙が出てくる。それが何によるものか分からない。一点を見つめながら、時に自傷的な笑みを浮かべ話すその姿は、見ている僕も苦しかった。僕は同情したわけでも、悲観したわけでもなく、ただただ辛い気持ちでいっぱいだった。当事者にしか分からない感情、彼女の口からの説明されることは理解できる。でもそれはただの上澄みで、そのさらに根深いところに彼女自身も見逃している、あるいは省略した様々なできごとや感情があるのだろうと、あまりいい返事ができなかったように思う。ただ、わかったようなことを言いたくなかった。上部だけの励ましなんて必要ないことは理解できた。僕は彼女の経験した出来事に、ただ打ちのめされていた。そんな経験をしながら、今日までよく生き抜いてきたね、1人で僕のところまで歩いて来てくれたんだね、ありがとう。素直にそう思った。大切にしようと本気で思った。

この時の彼女の気持ちを後に知ることになる。
初めて理解してもらえたと思った。と言っていた。のちにそれは幻想だったと訂正されてしまった。

あの日の僕は理解できていなかったのかと何度も自問自答した。少なくともあの日あの瞬間は理解していた。今でも思い出すと心窩部に痛みが走り呼吸が浅くなる。問題なのはそれを簡単に忘れてしまうこと。他のことでいっぱいになって、後に繰り返し彼女を傷付けてしまうのだった。

話は戻る。
何度も繰り返し伝えた言葉が彼女へ浸透し、ようやく僕を受け入れてくれようとした矢先、彼女の約束をキャンセルして彼女の友達と会っていたことが発覚し、たちまち信頼は崩れた。

ここまで書いていて、自分が情けなく思う。
もうやめてしまおうかと悩むが、まだ会ってから1ヶ月の話だ。最後に書きたいこともある。今回は頑張ってみよう。

その後、彼女と友達、2人の共通の先輩を交えて話し合いが設けられた。僕はその場にいなかったので、彼女から聞いた話だが、友達の関係は決定的なものになっしまった。僕が彼女から奪ってしまったのだ。僕がいなければと、思うことはいくつもある。彼女の好きなバドミントンも彼女の気持ちも1年半という時間も。のちに話すことになると思うが全て僕が彼女から奪ったり汚してしまったものだ。

一旦は僕を許してくれた彼女。
それからは彼女の行きたいという個展に一緒に行ったり僕のフットサルについてきてくれたり、充実していた。個展はこれまでの僕の人生には全く縁のなかったもので、彼女が僕に持ち込んできてくれた文化だ。とても新鮮で興味深かった。作品をとてもいいなと思うのは、彼女と一緒だからだろうか。あんまり理屈は分からないけど、この人たちはごく一部の上澄みで、その下にくすぶってる人たちはたくさんいるのだろうと厳しい世界の片鱗を見た気がした。

僕たちは正式に付き合えたのに、僕は相変わらず他の人と会っていた。それが僕のスマホを見られたことで露見し、僕は開き直ってセフレの様な関係でいようと提案し、彼女はそれを受け入れた。受け入れるほかなかったのだと思う。自分を初めて理解してくれた人が離れていくのは、嫌だったと思う。友達も失った当時の話。僕は何をしているんだろう。なんというか、もう何も言えない。

その頃から僕はバトミントンを始めた。
彼女が小中としていたバトミントンのサークルに行ってみると話していた。僕は昔からラケット競技に興味があったので面白そうだなと思った。やんわり断る彼女に無理を言って連れて行ってもらった。

僕がそこからバドミントンにハマってサークルとは別の教室に通っていた時、彼女は出会い系で他の人たちと会っていた。付き合っていないから何もおかしくはない。僕と会った時だってメッセージの次の日に会ってセックスした。行動力があるのと着実に物事を進めるのは彼女の良いところだ。ただ、その事実は僕をとても苦しめた。
僕がバドミントン行ってる間に送られてきたこのラインは、セックスした後に送られてきてるんだ。気持ち悪い。と、この期に及んで何を言っているんだろと今は思えるが当時の僕は本気で被害者のつもりになっていた。そのマインドは後に何度も繰り返される。

当時を振り返って彼女は自分がおかしいと感じていたと言う。
病院に行って診断書とお薬をもらって帰ってきた。感情の逃げ道がそれしかなかったのだ。当時の彼女はとても辛かっただろう。加害者の僕が他人事のように言う話ではない。どれだけ傷付ければ気が済むのか。こんなこと僕に言われたくもないだろうが、彼女は精神疾患なんかじゃない。そんな出来事が立て続けに起これば、人間誰もが冷静な考え方なんてできなくなる。それだけの話だ。むしろおんなじ過ちを何度も繰り返してる僕の方が何かしらの異常を抱えてるよ病院行け?

一旦は連絡先も全部決して終わりにしたけれど、やっぱり彼女が好きで、どうしようもなくて、たまたま不在着信の履歴に彼女の電話番号が残っていた。お仕事中の彼女に電話しても出ないので、Cメールにもう一度電話するから出てほしいとだけ送って、お昼休みに電話をした。
これで出なかったら最後にしようと、ドキドキと悲しさと苦しさの入り混じった泥色の感情でかけてみると、もしもし、と懐かしい少し違うイントネーションの小さな声で出てくれた。

いろいろ話をしたあと、僕は全部消しちゃったからと、もう一度ラインを送ってもらった。
コジコジがビューンって言いながら飛んでるスタンプだった。可愛くて、あああ。。。と間抜けな声が出てしまった。泥色の感情がスンと透明で澄んだものへ、一瞬で変わった瞬間だった。

離れているからこんなことになるのだ!
と一緒に住むことを彼女に提案した。
彼女も乗り気ですぐにいくつかの内見に行った。
いいものもいくつかあったけれど、これという決め手に書くものばかりで、最後にはこんなに毎月トラブル起こってるのに同棲は早いんじゃないか。ということで、立ち消えになった。
あの時の選択は、結果として正しいものになってしまった。

ゴールデンウィークに、彼女は実家に帰るとのことだった。僕は1人だと寂しいので彼女について行った。サンダーバードという電車に乗って、彼女と行く旅行はとてもワクワクして楽しかった。

彼女の地元のことを知りたくて、直前の1週間ほど仕事そっちのけで調べ物をしていた。地理関係から歴史、地名の由来や最近できたお店の情報など、地域密着型のWebサイトの全ページおおよそ600記事ほどを読み漁った。

すると彼女のお母さんとの会話で彼女を置いてお2人で成立するくらいには詳しくなっていた。

旅行の思い出はいろいろある。
けれど僕が相変わらず遊び続けていたことで、お母さんや猫たちおばあちゃんとの思い出を汚してしまった。だから割愛する。

バドミントンのちょっとした大会の部門優勝したり、カレーを食べに行ったり楽しかった。その間も浮気していた僕だった。

ダメだもう無理

一緒にスプラトゥーンしたね
たくさんバドミントンしたね
ミケちゃんとも仲良しになれたよ
カレーいっぱい食べ行ったね
花火も買いに行ったね
花火大会も行ったね
公園で花火もしたね
美味しいタルトいっぱい食べたね
映画もたくさん見た
アマプラも一緒に見た
DIYもした
美術展も行った
ジンギスカンも食べた
ボードゲームした
クリスマス会も誕生日のお祝いも
たくさん思い出つくったね。
その全部を僕がダメにした。
思い出の分だけ傷付けた。


どうせすぐ忘れるんだ。
そうじゃないって証明するチャンスは何度もあった。全部裏切った。

もし何かの間違いで彼女が僕に振り向いてくれたらすぐに拉致監禁して絶対離さないようにしようそれまで、できることは準備しかない。
ただの犯罪者予備軍のお話。

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