34回目のクリスマスイブ 僕の奥さんへの昭和のプロポーズ

昨日はクリスマスイブだった。
僕が奥さんと過ごした34回目のクリスマスイブだった。
僕は奥さんと結婚して33年になる。結婚する前にもクリスマスイブを一緒に過ごしているから34回目のクリスマスイブだった。
お正月は仕事等で一緒に過ごせないことが何回かあったが、不思議とクリスマスイブだけは欠かさず一緒に過ごすことが出来た。
だから娘たちともずっとクリスマスイブを一緒に過ごすことが出来た。

昨日仕事の帰りに、僕が子どもの頃から好きなシャンメリーを買って帰った。
奥さんは、買って帰って来ると思った、と言って笑った。

奥さんがクリスマスイブに作ってくれた料理は、
山賊焼きという僕が住む長野県の料理でローストチキンを1本を丸ごとニンニク風味の唐揚げにしたような料理とスパニッシュオムレツとサラダとスープとシュトーレンだった。
デザートは奥さんが作った大納言のパウンドケーキに抹茶アイスを添えたものと珈琲だった。
パウンドケーキを食べていると家族のLINEに娘たちから娘たちの作ったクリスマス料理の写真が送られて来た。
長女は新婚生活初めてのクリスマスイブだった。
次女もフィアンセと一緒にクリスマスイブを過ごしていて料理を作った。
娘たちも幸せなクリスマスイブを過ごしていた。

パウンドケーキを食べながら僕は奥さんにプロポーズした時のことを思い出していた。
奥さんにプロポーズする少し前、僕は会社の出張で
ドイツのシュツットガルトにいた。
ドイツ支社にはドイツ人の僕の親友Jがいた。
僕よりも14歳も年上だったが、最初に会った時からお互いに相通じるものがあった。
その日、僕はJとディナーを食べていた。


「ユウキ、お前、いくつになった?」

「27歳になった。」

「もう結婚してもいい年だな。彼女はいるのか?」

「いる。」

「良かった。男は自分の信念を貫いて生きていれば20代後半にもなれば自然と彼女が出来るものだ。
20代後半になっても彼女が出来ないのは、その男に人間的に問題があるというよりもその男の生き方が根本的に間違っているということだ。
ユウキ、お前の生き方は間違っていない、安心しろところで、同じオフィスのレディか?」

「違う。幼稚園の保母さんだ。」

「幼稚園の保母さんか、いいじゃないか、お前、
日本に帰ったら、彼女にプロポーズしろ。何を迷っている。彼女のことが好きなんだろう。」

「なんてプロポーズしようかと思って。」

「いいか、プロポーズは彼女の正面に立って、彼女の正面から正々堂々としろ。それから、曖昧な言葉は使うな。必ず結婚という言葉を使うんだ。」 

「僕と結婚してください、と言う。」

「それだけじゃ何か物足りないな、お前、もう一言何か考えろ。」

「あなたを必ず幸せにしますから、僕と結婚してください、と言う。」

「ベリー グッドだ、それで行け。大丈夫だ、お前なら出来る。必ず上手く行く。自分を信じろユウキ。」

日本に帰ると僕はドイツのお土産を持って奥さんに会いに行った。
夕食の前、公園を歩きながら、聞いて欲しいことがあると言った。
僕はJに言われた通り、奥さんの正面に立って奥さんの正面から、

「ユリさん、あなたを必ず幸せにしますから、僕と結婚してください。お願いします。」
と言って頭を下げた。

奥さんは驚いた顔をしていた。
そして少しすると、
「私の方こそ、よろしくお願いします。」
と言って頭を下げてくれた。

僕が奥さんにしたプロポーズは昭和のプロポーズだった。今の若い人たちはこんなプロポーズはしないだろう。
娘たちは彼にどんなプロポーズの言葉を贈られたのだろう。
今の若い男の人たちは、彼女にどんなプロポーズの言葉を贈るのだろう。
そして、今の若い女の人たちはどんな答えをするのだろう。

そんなことを思いながら過ごした、
34回目のクリスマスイブだった。




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