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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#すすきの

大衆天ぷらの多彩、かすぞばの斬新。

大衆天ぷらの多彩、かすぞばの斬新。

2021年8月22日(日)

天候のめまぐるしい変化によって昼食を逸した。

外に出歩くのが面倒な日は水道水で凌ぐこともしばしばだが、
入退院を繰り返した体にはさすがに心細い。
といって、冷蔵庫や食品を購入し、身近に置くことに抵抗感を覚えていた。
おそらく購入したからとて、料理もしなけえば冷蔵庫を使いもしないのは、
性分として分かりきっている。

意を決して外に出た。
横殴りの風は正面からも背後か

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レモンサワーが奏でる喧騒、遠い思い出。

レモンサワーが奏でる喧騒、遠い思い出。

「焼肉ホルモンジンギスカン酒場 れもん」

2021年8月25日(水)

寂しげな影を投げかける霧の雨。
鉛色の空から雲の分子が落ちてくる。
悲哀に満ちた目で街を見る。

殺風景な秋の街に濡れた夜。
鮮やかな黄色の灯火が煌めいている。
それは新鮮な顔をした焼肉店だった。
雨がやみつつあるというのに雨宿り。

人が少ないというのに騒々しい。
若者たち、しかも20代であろう。
溢れるばかりの活力と相塗

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爽快な鮮魚が踊る、刺身定食の愉悦。

爽快な鮮魚が踊る、刺身定食の愉悦。

「大衆酒場さぶろう すすきの店」

2021年8月19日(木)

晩夏の白んだ空。

暑熱を冷ましつつある陽の余韻。
数日振りの好天はすっかり秋に衣替えしたかのようで、
どことなく寂しく、どことなく憂いを纏う。
この夏の狂おしいほどの異様な暑さの反動かもしれないが、振り返れば名残惜しい。

この状況下で何を食べよう?
ひと気が疎らになって久しい通りに、ランチメニューの看板が寂しげに佇立していた。

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多彩な料理と明朗爽快な空気を纏う。

多彩な料理と明朗爽快な空気を纏う。

「大衆酒場さぶろう」2021年4月22日(木)

良かれ悪しかれ、仕事の集中度が高まれば高まるほどに、昼も夜も食事の時間を削ぎ落とし、睡眠時間も縮まってしまう性格を有しているは否定できない。
この人生の中でも、幾度かその襲来を乗り越えては来たものの、加齢は作業効率や思考判断を鈍らせ、自ずと停滞の悪循環に陥る。
およそこの2ヶ月間は、自らの体力と精神、さらには自己肯定感の喪失さえ覚えるほどであった。

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放浪の末に辿り着く無骨と寡黙。

放浪の末に辿り着く無骨と寡黙。

自己否定からの回避。それは孤独になることである。何があろうとも、自己を否定してはならないのだ。
大概、そんな時は焼鳥と酒が自らを救う。
直近の課題は、営業時短の中で早く店に滑り込むかである。
20時が過ぎる。
22時まで2時間を切った。
ネオンサインや暖簾を頼りに、小雪の舞う街中を彷徨うも、思いの外どの店も満席という想定外に、店さえも自己否定するのか、という思いに苛まれた。
焦燥感と諦念の間で雑居

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大衆中華料理に突きつける霧と影。

大衆中華料理に突きつける霧と影。

「東京五十番すすきの店」2021年2月14日(日)

晩冬を兆す重たげな雪が日を追うごとにその増減を繰り返し、街を薄汚れた灰色に覆う。
日中は雪を溶かして濁った水溜りを作ったかと思うと、夕刻ともなれば次第に表面を光らせ、ともすれば足を掬う危険を帯びていた。
しかも空腹ともなれば、その足元は頼りなく弱々しい。
休日の食難民…
まるで神に呪われたユダヤ教徒のように街を当てもなく彷徨うも、日曜日のパンデ

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新子焼への期待が弾む、焼鳥たちの躍進。

新子焼への期待が弾む、焼鳥たちの躍進。

「新子焼 鳥〼」2021年2月9日(火)

『日が長くなったね』
そんな会話が彼方此方ではびこり出す頃、この地の冬は頂きを迎える。
そういった日々が流れ去る。
流れ去る?
長い間、日々が流れ去ることに大いなる疑念を抱いていた。
それはもしかしたら、ひとつの自己欺瞞かもしれない。
“人生とは、虚構ではないか?”
ぬぐいようのない自己欺瞞のうえに、突きつけられる自己疑念…
日常を越境することを試みる。

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真冬のすすきのに吹き荒ぶ辛麺の熱風。

「札幌らーめん 一門」2021年1月16日(土)

札幌駅から、大通エリアへ。
その人の流れは首を締めつけるように閉ざしてゆく。
そして、夜の完膚なきまでの寒さは街の気配を打ち消し続けた。
この気配は1年も続くと精神の強壮は確実に奪われ、もはや老いたデカダンスの腐臭さえ漂っているようだ。

すすきのの中心を貫く駅前通りの青白い街灯が、閑散とした歩道を虚しく照らす。
静かな断末魔のため息を放つこの街

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すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

「おでん処 わんらうんど」2021年1月11日(月・祝)

もしも、この寒さに頷くとすれば、
体も心もとろけるような温もりを欲する。
もしも、この空腹が満たされるならば、
染み入るような食と酒を求める。

その願いと期待に反して、街のネオンの数は乏しく闇に支配されつつあった。
歩いても歩いても、シャッターで閉ざされたおどろおどろしい空漠しかなかった。
妥協と諦念の只中に揺れ動く空腹。
そこにどこか

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淫猥としたすすきのの路地裏に潜む、タイ料理への旅路。

淫猥としたすすきのの路地裏に潜む、タイ料理への旅路。

「タイ料理とお酒 タタヤン」2020年1月6日(水)

移動制限はおそらく今後も続くことだろう。
それは数ヶ月かも知れないし、数年かも知れない。
もはや過去に戻ることはないという覚悟を持って、
【外食戦略2021】を構築しなければならない。
でなければ、少なからず近未来に希望を見いだせないのだから。
【外食戦略2021】テーマ1.
近隣の未知なる美味の開拓と既知の深耕。

【外食戦略2021】テー

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すすきのの灯火が猛吹雪で白む、ちゃんぽんの誘引。

すすきのの灯火が猛吹雪で白む、ちゃんぽんの誘引。

「ちゃんぽん一鶴すすきの店」2020年12月19日(土)

この日、すべては成り行き任せになってしまった。
確かに、地方を列車で巡る美味の旅の予期せぬ中止によって、身近な場所で新たな発見ももたらしたのも事実である。
日本酒と寿司を巡る小さな冒険もそろそろ終焉の頃合いであった。
すると、雪が猛然と襲いかかって来た、何かを挑発するように。
腹元にはまだ余裕があった。
問題は、この吹雪下の中で、彷徨うこ

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普遍性の中に漂う退廃と停滞。

普遍性の中に漂う退廃と停滞。

「めんこい茉季詩夢 」2020年1月21日(土)

夜の深い静けさ。
それは、どこか底知れぬ不気味な空気を放っていた。
まるで止血されたような街は、車の擦過さえも減らしている。
辺りはすっかり闇に支配されていた。
ラーメンに誘われる夜に、わずかながらの懐かしささえ覚えた。

止血された街の中で、白いネオンが道端に反映し、夜の微風に暖簾が揺らめく。
その外観はどこか古めかしく、いろいろな時代を耐えた

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