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ちょうど400円、ポケットに入っていた【ビジネスマンpart1】

作: 小出

ちょうど400円、ポケットに入っていた。
困った。これが390円なら俺には彼を助けることはできないと思えたし、反対に1000円あれば躊躇なく彼を助ける事ができただろう。しかし俺が今求められているのは400円で、その400円分の400円が今、ちょうどポケットに入っていた。
どうなんだ?どうすればいい?この400円は何のためにある?

「僕、お金なくて、、」
訴える少年を駅員はもはや哀れみの目で見ていた。
「わかるんだけど、君を通してしまったら、他の人もそうしないといけなくなっちゃうからね、これは決まりなんだ、誰か呼べないかな?」
駅員の言うことは真っ当だ。駅員はこの手のやりとりをうん百回としているだろう。情に訴えかけて無くした切符代400円を支払うのを逃れる事などできない。そもそも切符を無くしたのは少年の過失だ。その責任を駅員が担うのはおかしな話だ。
そしてこのポケットの400円だ。しかしこちとらこの400円、俺とて簡単に渡すわけにはいかない理由がある。


妻のアケミが仕事を辞めたのは俺の希望ではなかった。どちらかと言えば逆だ。辞めて欲しくなかった。勿論それは金銭的な問題ではない。
俺は日本では一流と呼ばれる類の大学を卒業し、アメリカに本社を置く大手外資系商社で、ネパール、モンゴル以東のアジアとオセアニア地域の責任者として働いている。もともと帰国子女だったこともあり世界を当たり前に行き来するような仕事に就くつもりだったから、特定のパートナーは必要としていなかった。俺は金銭的にも精神的にも自立している聡明な女性が好みだったし、家にいて家事だけをする優しいだけの女には惹かれないという事もその理由のひとつだった。正直自分より頭が回らなそうな女を選んで家に置いておく男をあまりよく思えないし、俺が知る範囲では大抵の場合は奥さんが立ててくれているのを勘違いしているようなケースが多かった。


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ビジネスマンpart1は以上です!

こんにちは!げんまいの中の人小出です。
切符、無くしたことありますよね。わかります。私もあります。
400円の切符を無くしたことを正直に駅員に言うあたり、まだまだこの少年は素人ですね。私も高校生の時、遠くの駅から乗った時切符を無くし、正直に申告したら当たり前にその分の料金を請求されました。
それ以降私は切符を無くしたら料金が最も安い駅の中で1番遠い駅を申告することにしています。隣の駅から乗ったって言ったらなんか怪しまれる気がするじゃないですか。笑
結局2回払ってるんで損は損なんですけどね。切符は無くさないにこしたことはないです!笑

それでは!次回part2もお楽しみに!


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