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ブックレビュー

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「これはおもしろい!」と思った本について、所感を短い文章にまとめていきたいと思います。読書案内として、ぜひ。
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記事一覧

「うみかじ」1号を読んで

 それにしても、誰か──しかも、会ったこともない、顔を見たことすらない人の「日記」を読む…

小池陽慈
4か月前
21

創元社「あいだで考える」シリーズがキテる!

 超一流の書き手たちが、中高生にも読めるようなわかりやすい文章で、哲学や思想などを語る。…

小池陽慈
10か月前
18

安積宇宙『宇宙のニュージーランド日記』(ミツイパブリッシング)を読んで

「パワーをもらえました」で終わらせない、ということ  著者の安積宇宙(あさか うみ)は、…

小池陽慈
1年前
13

私、この企画展には必ず行きます。皆さんも、ぜひ。

 東京は東村山市の国立ハンセン病資料館で、「ハンセン病文学の新生面 『いのちの芽』の詩人…

小池陽慈
1年前
40

ミツイパブリッシングという出版社が好きだ! 〜新刊『デンマーク式 生涯学習社会の…

遊びは悟りの境地でもうだいぶ昔の話になるが、幼稚園のいわゆる体験入園に、子どもと一緒に参…

小池陽慈
1年前
32

澤田英輔・仲島ひとみ・森大徳編『中高生のための文章読本』(筑摩書房)を読んで

読解力向上における「経験」とは先日、Twitterに、以下のツイートを投稿した。 本書、『〈読…

小池陽慈
1年前
33

檜垣立哉『生と権力の哲学』(ちくま新書)を読んで

野菜例えば誰かがTwitterにラーメンの画像をあげる。トッピングの野菜は増量してある。コメントに、「野菜」などと添える。誰ともなしに宛てられたそのメッセージを目にした不特定多数の受信者は、「ふふ……」という笑いをもらす。「いいね」を押したり、リツイートしたりしながら、「次にラーメンを食べたときは、自分も同じことをしよう」などとにんまりする。 なぜラーメンを「野菜」と称して投稿することが、笑いとなるのか。 まず前提として、投稿者のなかに、ラーメンという、一般的に不健康とさ

「わたしにつながる/にんげん」の一人として (峠三吉『原爆詩集』「序」を読んで)

峠三吉(1917〜1953)は、広島で原子爆弾を経験した詩人です。以下は、『デジタル版 日本人名大…

小池陽慈
2年前
14

『ひろしまのピカ』(小峰書店)を読んだ、あの日の思い

小学校一年生のときの担任S先生は、自身も戦争を経験した世代であったゆえか、反戦教育に熱心…

小池陽慈
2年前
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林京子『祭りの場・ギヤマン ビードロ』 (講談社文芸文庫)を読んで

林京子という作家がいます。 はやし‐きょうこ〔‐キヤウこ〕【林京子】 [1930〜2017]小説…

小池陽慈
2年前
21

上田紀行編著『新・大学で何を学ぶか』(岩波ジュニア新書)を読んで

 僕は予備校講師です。当たり前ですが、毎年、多くの生徒たちを大学に送り出しています。でも…

小池陽慈
4年前
29

鴻巣友季子『翻訳ってなんだろう? あの名作を訳してみる』(ちくまプリマー新書)を…

 翻訳家の鴻巣友季子による、文芸翻訳のレクチャー本。「名作」の英文から“これぞ!“という…

小池陽慈
3年前
52

宇野重規『民主主義とは何か』(講談社現代新書)を読んで

 民主主義という概念、およびその思想や実践の軌跡を歴史的に俯瞰しつつ、あるべき民主主義の…

小池陽慈
3年前
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榛葉英治『城壁』(文学通信)を読んで

 直木賞作家である榛葉英治(しんばえいじ)による、日中戦争における南京攻略、およびその占領下での日本軍の蛮行を描いた長編小説。  『城壁』は、多くの資料を下敷きとはしているが、あくまでフィクションとして書かれた"文学"である。したがって、その描写にどれほどの迫真性、真正性が感じられようとも、例えばこの文章を、"南京における日本軍の蛮行を明らかにするための客観的物証"として読むことはできない。  しかしながら、読者の多くは、この作品を読みながら、確信を抱くに違いない。「これは