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WEEK 7: アメリカの「共同親権」制度 - ダディ、もう日本人でいちゃ、ダメなの? / NYCで「実子連れ去り」の被害にあった子供たち

CHAPTER 17: SECOND HEARING


 月曜日

 この日の口頭審理はリモートで行われました。
 裁判官、母親と彼女の国選弁護士、長男についた弁護士、そしてわたしと弁護士と速記係の6人でした。
 離婚と親権に関しては最高裁で争うことになっているから、家裁の管轄ではない。
 となると、ここで審理されるのは、母親と父親お互いに出している保護命令のみ。
 わたしの弁護士が「母親が全く妥協しないから、いまだに父親は週に一回しか会えていない」と訴えたが、親権は最高裁の権限になるから、家裁では子供との交流日数に関しての命令は出せない。そして長男についた弁護士の話を聞かないといけない、となった。
 長男についた弁護士は、見た目は50代ぐらい。グリーンの髪にポニーテール。あくまでもわたしの印象ですけど、イースト・ヴィレッジのバーにいそうな感じの人でした。 
 その弁護士は、こう述べました。
 「長男と話しました。今、お母さんといるところで不自由はない。父親に会う日を増やす必要はないと言ってました」

 先週会った時に言っていたことと、全く違う。
 それをここで論じても仕方ない。
でもこうなると、母親が折れない限り、最高裁まで週に一度だけが変わることはないから、当初の予定通り最高裁で闘うしかない。
 
 最後に、母親の国選弁護士から、自分のものと子供のおもちゃと本を取りに行きたいと申し出がありました。
 警察官のエスコート付けるから、と。
 もちろんどうぞ、自分のものと子供たちのおもちゃの一部ならと合意しました。
 
 〇曜日と〇曜日の午前10時から正午の間、ということになりました。

 水曜日
 
 寝る時に、長男に本を読みます。
 そのあと、一週間に一回の機会だからか、色々と話してくれます。

 「月曜日と火曜日もここに来たいとマミー聞いたんだけど」
 「マミーに聞いたの?」
 「うん、でもノーだって。だからなんでダディのところに月曜日と火曜日に行けないの?と聞いたら、わからないって言われた」
 「ダディは、どこの法廷に行ったの?」
 「ファミリーコート(家裁)だよ」
 
 次に、長男は今住んでいるところについて、色々と話してくれました。
 リビングルームはここより広いよ。ベッドルームが二つあって、使ってない部屋には2段ベッドがあるんだけど、マミーはそこに荷物を置いている。
 今いるシェルターはシェア・ユニットだと聞いていたんで、だから2ベッドルームのユニットなのだろう。
 いつ他の家族が引っ越してきてシェアメイトになってもおかしくないということらしいから。
 前に母親からスクールママ友に「いまいるところは壁しかない」とテキストメッセージが来たと聞いていたので「窓がない部屋なの?」と聞いたら、「窓はあるよ、オフコース」と長男は笑顔で答えました。
 これを聞いて、一瞬だけ安心しましたけど、次に長男が教えてくれたことを聞いて、そんな安堵の気持ちはすぐに吹き飛びました。
 下に住んでいる人がガンガンと床を叩くから、マットを買った。
 6階に住んでいる人がよくボヤを起こす。先週は6回も非常ベルを鳴らして消防車がきた。 

 わたしは、この下の住民が床を叩くというのは、なんとなく知っていました。
 母親がSNSに、マットを買ったけど足りない、という写真付きの投稿があったんです。
 床の一部だけに少しマットを敷いてあったから、不自然だなと思っていたんです。
 
 わたしは、母親の全てのSNSからブロックされています。
 しかしFacebook / Instagram上の母親の「友達」たちの中に、今回、彼女のとった行動にとても批判的な考えを持っている人がいるので、こちらから聞かなくても、こんなこと投稿していると、色々とわたしに教えてくれるんです。
 なので母親のSNSでの投稿は、全てわたしの弁護士も把握しています。

 なんで床を叩く人や、週に6回もう非常ベルを鳴らすよう人が住んでいるところが、子供たちにとって良い環境と言えるのだろうか。

 けど母親は、こんな辛い思いを子供たちにさせているのはお前だ!という感じなんだろうな。
 何を言っても無駄。
 それは随分前から痛感しているので、子供たちには酷だけど、とにかく最高裁まで待つしかないと思いました。

 〇曜日

 警察官二人のエスコートで、母親が荷物を取りにきました。
 
 昨日、裁判所では一言も言わなかったキッチン用品。これも明日は持っていきたいと、国性弁護士を通じてリクエストしてきました。
 弁護士と相談したら、キッチン用品は「Marital Property」になる。すでに最高裁での訴状でこちらで独占的に所有したいものの一つに入っている。だから渡す必要はないけど、もちろん全部ではなく、少しぐらいは渡した方がいいと思う。けどよく考えて自分で決めて、と言われました。
 別にキッチン用品なんて、何を持っていかれても大事ではないんで、どうでもいいと思いました。
 けど今までこちらから提案してことは全て却下。そしてあちらのリクエストには全て応えてきた。
 持ってきてくれと言うから持っていた子供服も突き返されたし、スクールママ友を通じて、こちらから好意で届けた物の一部も「必要ない」と返されました。
 なぜあちらの要求ばかりを受けないのといけないのか?

 そこでわたしは、弁護士とぶっちゃけの話をしました。
 この国の離婚訴訟で、原則共同親権のこの国で、単独親権を勝ち取るのは、どれだけ困難なことなのでしょうか?
 弁護士の答えはこうでした。
 それはお金がすごくかかりますよ、法医学の観点を持ち込み、その専門家や、と説明されたところで、わたしは遮って聞きました。
 「いくらかかりますか?」
 弁護士の答えは「少なくとも10万ドル(約1600万円)」でした。
 
 ということは、相手の弁護士料もこちらが負担しないから、倍の20万ドル(3200万円)と考えないといけないということです。
 そんな大金、使えるとしても、子供たちのために使うべきだと考えたわたしは、聞きました。
 それなら結局、どう転んでも共同親権で、親子交流に関しては隔週ごととか、それなりに公平な時間になり、共同監護計画を立てて、ということになるんですよね?
 リッチな人以外は、父母のどちらかに、子供を危険に晒すような明らかな問題がない限り、その辺りで落ち着くと言うことですよね?
 あっちはこちらからの提案を、全て蹴っている。
 けどそれを我慢し、あっちのリクエストを受けても、またはもうこちらの提案を受けない、ノーだと突っぱねても、最高裁での結果はそんなに変わらないという事ですよね?
 
 弁護士の答えは「そんなに変わらない」でした。

 それならなら、もうこれ以上、あっちの提案は受けたくないと、わたしは決めました。
 わたしに子供たちを預ける時のためだけに、今にも壊れそうなストローラーをわざわざ買うぐらいなら、キッチン用品ぐらい買えばいい。
 そう思ったんです。

 日曜日

 この日、長男の誕生日パーティーが開かれました。
 いつも気にかけてくれているスクールママ友が、自分の次男の誕生日と近いんだし、今の状況だと色々と難しいでしょ、一緒にやればいいわよ、と提案してくれたんです。
 先週の予定でしたけど、その次男くんが風邪ひいたので、今日の16時スタート。後で写真送るから。
 そうスクールママ友は、わたしに連絡してくれました。

 夜9時過ぎに、2枚の写真の1本の動画が送信されてきました。
 とても楽しそうに友達と遊んでいる長男を見て、ああよかったと思いました。
 わたしも行きたかった、みたいな感情は湧いてきませんでした。
 長男が楽しかったのなら、それで良かった。

To be continued…..(続く) 


 

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