村崎柘榴

美術館巡りとゲームが趣味のアラサー北陸民。訪れた美術展の感想や食べ物の話などを書いてい…

村崎柘榴

美術館巡りとゲームが趣味のアラサー北陸民。訪れた美術展の感想や食べ物の話などを書いている。

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ポケモン×工芸展 〜ポケットの中身はいつだって〜

今年の3/21から6/11まで金沢の国立工芸館で開催されたポケモン×工芸展。今はロサンゼルスのジャパンハウスへ巡回中で、来年以降は国内でも巡回展が予定されています。美術鑑賞とゲームの両方が趣味な私が初めて書く記事のトピックとしてはうってつけだと思い、筆を執ることにしました。 展覧会の構成とか、主な展示作品については色々な人がnoteに書いてるから今更私から触れたりはしません。以下のリンク先を読むなり、noteで「ポケモン×工芸展」と検索するなりして各自調べてもらえれば幸いで

    • 池波正太郎と寺山修司とカレーライス

      ヘッダー画像  寺山修司「街に戦場あり(13):歩兵の思想」  『アサヒグラフ1966年12月9日号』個人蔵 富山市に池波正太郎が愛したカレーライスの店がある。著名人行き付けの店をありがたがるのは趣味ではないが、食べ物に関心の強かったことで知られる池波正太郎の名前を出されてはちょっと事情が変わってくる。何年か前に富山市在住の友人からそのことを聞いて以来、何度か訪れようと試みたのだが、その店は平日の昼しかやっておらず、最近まで縁が無かった。 先日、偶々都合が付いたので食べに

      • 福井県の、あるいは越前松平家の思い出

        この記事を投稿したまさに今日、福井県は敦賀市まで北陸新幹線が延伸された。大阪へ行く際に30分の時短と引き換えに敦賀での乗り換えと数千円の値上げを求められるのは釈然としない面もあるが、甘んじて受け入れる他はない。 北陸三県、とは言うけれど福井を訪れた記憶はそこまでない。富山にはちょこちょこ行っているのとは対象的である。確かに富山の方が近いとは言え、所詮20~30kmの差でしかないのだから、ここまで差がつくのは我ながら少し不思議である。 福井は確か、魯山人展を見るために行った

        • 本阿弥光悦の大宇宙 ~見えないものを見ようとして~

          覗き込む単眼鏡を持っていない村崎柘榴です。今回は、東京国立博物館で現在好評開催中の「本阿弥光悦の大宇宙」を観覧した感想を書いていきます。会期等の詳細については下記のリンク先をご参照ください。 同展は「本阿弥光悦」という総合芸術家(というレッテルを貼るのは不適当かもしれないけど)を、所縁の品々(刀剣、扁額、経典、謡本、漆器、書、陶器など)を通して観せることをテーマにしています。錚々たる展示品はどれもが恒星のように輝いており、それはまるで本阿弥光悦という1つの銀河系でした。

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        ポケモン×工芸展 〜ポケットの中身はいつだって〜

          古伊賀と古備前 ~2つの「破格」~

          前回のゴッホ展の際にちらっと書いた、五島美術館で開催されていた「古伊賀ー破格のやきものー」展の感想を今回は書いていきます。 実を言えば、今回上京した目的はゴッホ展よりもむしろ古伊賀を見る方でした。同展の情報を最初に掴んだのは『陶説』の特集号で、すぐさま「これは何としても見に行かねば」と決意しました。従って、まず古伊賀ありきで、次に梯子する美術展としてゴッホ展を選んだ訳です。他にも静嘉堂文庫美術館の「宋磁と清朝官窯」展や出光美術館の「青磁」展も候補にありましたが、時間的にも体

          古伊賀と古備前 ~2つの「破格」~

          ゴッホと十万石まんじゅうとコーヒー

          「日本人って印象派が好きだよね」って言葉には、大抵の場合侮蔑の感情が含まれているのではないでしょうか。「聖書も美術史も知らない無教養な連中(笑)」あたりが本心でしょう。いつだったかネットで見た何かのコラムで「フランスに行くなら鞄にプッサンの画集でも忍ばせておいて、ホテルでチラ見せしろ。扱いが変わるぞ」なんてアドバイスを見た際はスノビズムここに極まれりと思ったものです。そりゃ教養ある大人を演じた方が得な場面もあるでしょうが、それ以外の場面で人の好き嫌いにケチをつけるのは教養も大

          ゴッホと十万石まんじゅうとコーヒー

          御大礼とザリガニスープ

          私の記憶が確かならば、ザリガニ料理を初めて見たのは芸能人を格付けするバラエティ番組でした。確か伊勢エビのエビチリとザリガニのエビ、いやザリチリを食べ、どちらが伊勢エビかを当てるという内容で、当時は「うわぁゲテモノだぁ……」と引いたものです。フランス料理ではザリガニが高級食材だと知るのは、それから何年も先の事でした。 今回は11月3日に石川県立美術館で開催された「皇室の食フォーラム」の感想を「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展」の感想を色々書いていきます。同フォーラムの講師は料理研究家

          御大礼とザリガニスープ

          皇居三の丸尚蔵館収蔵品展/伝統工芸展 ~権威主義の時代~

          昨年の11月3日、石川県立美術館および国立工芸館で開催されていた「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展」を観覧してきました。副題が「皇室と石川 ー麗しき美の煌めきー」であり、前田家所縁の品々や石川所縁の工芸家の作品にも重点を置いた展覧会でした。また当日は県美で料理研究家の脇先生による「皇室の食フォーラム」と題した講演会が行われたので、こちらも大変興味深く聴講してきました。ついでと言っては何ですが「第70回日本伝統工芸展」も見てきました。 展示美術品リストには俵屋宗達、円山応挙、伊藤若冲

          皇居三の丸尚蔵館収蔵品展/伝統工芸展 ~権威主義の時代~

          無印良品のある生活

          無印良品が好きです。主に買うのは台所用品と食べ物ばかりですが。後は美術展巡りでメモを取るためのノート。背表紙が堅いので、立ったままメモを取りやすいのが気に入ってます。 最近は無印でフライパンを新調しました。これまで使ってたフライパンはコーティングが剥げて食材がくっつきやすくなっていたので。便利な世の中になったもので、ネットで少し調べれば色んなフライパンが出てきます。ル・クルーゼや取手が取れるティファールのように前々から知っていたブランドのものもあれば、初めて聞く名前の北欧の

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          樂翠亭美術館 ~White or Green〜

          地方に住んでいると、時々東京が羨ましくなります。都内の美術館で面白そうな企画展が開催されたとしても、北陸からでは「ちょっと行ってみるか」とは参りません。何せ相応の時間と金と体力を消費するのですから。1回の上京で得られる楽しさの最大化すべく、他に梯子したい美術館やギャラリーを探すなどしてようやく「東京さ行ぐだ」と決心するのです。だからかがやきでの2時間ちょっとの移動時間中、自分が投じたリソースを思いながら「東京の人はこんな手間かけずに沢山の美術館を巡れるんだろうな」などと羨むの

          樂翠亭美術館 ~White or Green〜

          島根県安来市 民藝そば屋の割子そばと天ぷら

          足立美術館の話は前回で一旦終了。今回はシャトルバスで安来駅前へ戻った所から始まります。美術館の話ではないけれど、たまにはそういう回があってもいいでしょう。いいよね。ダメと言われても書くけどね。 さて時刻はちょうど昼飯時、井之頭五郎よろしく腹が減った私は観光案内所前で貰ったガイドとにらめっこ。私の腹は今、何腹なのか思案していると、そば屋の文字が目に入りました。出雲そばといえば1000万円8件でお手軽独占、という訳でそばを食べることにしました。 その店の看板には『民藝そば』と

          島根県安来市 民藝そば屋の割子そばと天ぷら

          足立美術館・後編 ~器は料理の着物~

          前回は足立美術館で榊原紫峰の絵に感動したり、横山大観の富士山にげんなりしたり、テンションがジェットコースターよろしく乱高下した所まで書きました。今回はその続き、魯山人館のコレクションを見た感想を書いていきます。 実は今回の訪問の目的は3年前に開館した魯山人館にありました。過去に足立美術館が収蔵する魯山人作品の図録を見たことがあったので、どのような作品を見ることができるかは訪問前からある程度予想していました。 しかしそれでも立体物である陶磁器は現物で見る方がずっと多くの情報

          足立美術館・後編 ~器は料理の着物~

          足立美術館・前編 ~紫峰と大観〜

          今年の6月頃、山陰方面に出張する機会がありました。このチャンスを利用し、かねてより行きたいと思い続けてきた安来の足立美術館へ訪れました。 安来駅前から無料の送迎シャトルバスに乗り、車窓の外に広がる長閑な風景を20分程眺めていると、足立美術館に到着です。周囲に数件のお土産屋とスシ・バーがある他は、一面の緑。こんな辺鄙な場所にある美術館といえば箱物行政の落し子と相場が決まってるもんですが、少なくとも足立美術館は違います。庭園の景観をブチ壊す人工物を避けるためには辺鄙な場所でなけ

          足立美術館・前編 ~紫峰と大観〜

          織田有楽斎展 〜生きよそのままホトトギス〜

          「好きな戦国武将は誰ですか」と聞かれたら、あなたは誰の名前を挙げますか? といっても大抵は興味が無いか、挙げたとしても三英傑か武田信玄、上杉謙信、伊達政宗あたりではないでしょうか。大河ドラマを見てる人なら真田信繁とか黒田官兵衛が出てくるかもしれません。それはさておき、私がそう聞かれたら蒲生氏郷と答えることにしています。 織田有楽斎じゃないんかい、と言われそうですが、残念ながら有楽斎はそこまで好きな訳ではないのです。勿論興味のある武将の1人ではあるのだけど、好きかと言われれば

          織田有楽斎展 〜生きよそのままホトトギス〜