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見たもの、読んだもの

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私の気持ちの忘備録として。
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名前もない夜

名前もない夜

体温計のブザー音が乾燥したワンルームの部屋に響く。

「何度だった?」
「37度3分」

掠れた声で彼は言うと、貸していた体温計を私に手渡し、深く息をついた。

東京に住む恋人が仙台の私の元に会いに来て、2日目の夕方のことだった。
その日のお昼、近所でスープカレーを食べながら「風邪かもしれない」とつぶやいた彼の体調は、家に帰るといよいよ本格的に風邪の様相を見せ始めた。
平熱が35度台の彼にとっては

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あのとき始まったこと

あのとき始まったこと

"もし木曜夜お時間あったら都内のどこかでお会いできませんか?"

Facebookの共通の友達、10人。

私と同じく、学生時代にアカペラサークルに所属。

隣の県の大学に通っていたその人との接点はこの2つしかなかった。

直接顔を合わせたことがない、ごく稀にリプライといいねを送りあう関係を3年間続けていたフォロワーと初めて会う約束をするなんて、ちょっとした賭けみたいなものだった。

だからその人

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私は私にしかなれない

私は私にしかなれない

浴室の折り戸が外れてしまった。

経年劣化でなんとも立て付けが悪く、扉上部のロックが勝手にゆるくなってしまう。
こんな風に普通に使用していても突然外れてしまうことは初めてではなかった。
ここ数日も扉の滑りが鈍くなっていたので、そろそろ来るかなとは思っていた。

ため息をついて、濡れた髪のまま折り戸を嵌めようと持ち上げる。
でも非力で身長も低い私には、自分の身長よりもだいぶ高い折り戸を嵌める

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千早茜「男ともだち」を読んだ。

千早茜「男ともだち」を読んだ。

恋愛関係に辿り着くのが男女の関係性として至高なのだと、21歳の私は思っていた。
恋愛至上主義。
はあちゅうの恋愛コラムを片っ端から読み漁っては、都内で仕事も恋愛もキラキラにこなす生活に憧れを抱いていた。

その頃私には好きな人がいた。
6歳上で、毎日日付が変わるまで働いている、とても忙しい人だった。
「こう忙しいとなかなかプライベートの連絡が返せなくて」なんて言いながら、私が送ったメールには返

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