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雪花ラミィさんのオーディション話から学ぶ「面接で勝つためのセルフ・ブランディング」

バーチャルYouTuber(VTuber)の雪花ラミィさんが「VTuberタレントのアクティビティをバックアップする事務所」に所属するためのオーディションを受けるに際して取った行動を発表する趣旨のライブストリームをYouTube上でおこないました。

noteとして残す理由

演劇その他オーディション関係だけでなく、一般的な社会参加の扉となる企業との面談・面接および採用試験、当然進学やアルバイトなんかでも役立つであろう自己プロデュース=セルフ・ブランディングのための知識が得られたため、今後のためにアウトプットすることで自分の中に落とし込み、深く記憶しておくべきなのではないだろうかと思ったことがnotesを書いた理由です。

アーカイブは3時間半という長尺になっているため一見少し敷居高く感じてしまうかも知れませんが、最初の一時間弱(ほぼ50分ぐらいと言っていいと思います)以外はファンサービスのために取られた時間であるため、一時間のウェブセミナーと捉えればハードルは下がるのではないでしょうか。

全体を通して学校の授業ぐらいの長さであると思います。ぼくがなんとなくラジオのように聞いていた処、ふとランディングページという単語が飛び出して来たため何か急に自分はマーケティングセミナーのアーカイブでも見ていただろうかという気持ちになり、耳を澄ませたくなりました。

書類(およびムービー)選考で意識したこと

今回の話題で取り上げた選考における第一次審査は、フォームから送られた文と添付の自己製作ムービーから判断するというもの。

どちらも揃えていないと応募できないため、まずこの時点で「選考者の目に留まるために」ムービーに重点を置く必要があると判断したそう。

当時の担当者は6000人の応募を捌く事になったということが明かされました。対して面接では30~60mも話すとのこと(後で知ったこと)。ここでも雪花さんは恐らく書類審査でかなりふるい落とされることを予想し、目に留まる文とムービーを創らなければならないと思ったそうです。

応募当初のご本人は総数が6000ともなっていた事は知らなかったものの、採用活動に割ける企業的なマンパワーを想像した場合、多くて100名程度しか2次審査には進めないと判断したそうです。したがって書類選考を進むために以下の手段を執ります。

【1】ムービーのとある部分の詳細については2次=面接選考で話すと記載した

- プレゼン内容に引き=続きが聞きたくなるような含みを持たせた → 別の機会にこのエピソードが雪花さんのことであることは伏せられた上で披露されたことがある=実際にカバー社(所属企業名)内に強く印象を残したという証左(面接でも「あの話の続き教えて下さい」と頼まれる)

現在ふり返ると、必ずしも面白い話題ではなかったとのことでしたが、印象は間違いなく残せていますね。

- 中身を詰め込み過ぎなほど情報過多に書いてしまう傾向があるため、導入をシンプル(下記カウントダウン式ムービーの項目参照)にし、敢えて続きを書かないという引き算のセクションを設置した

ムービーをランディングページ(LP)風に創る※実際の内容は下記strong(強調)部分

- 自分を採用することでどのようなメリットがあるかを段階的に描写する(雪花ラミィをタレントとして採用すると御社にこんなメリットがある/第三者からはこのような評判もある/etc…)後述されますが、恐らく既存メンバーが行わないような時間にライブストリーミングができるというようなことを予め伝えていたように考えられます。つまり企業研究が必須だった。

- いかに最初の数秒でコンバージョンを得るか
→ いくら採用担当が職務とはいえ、知らない人の創った何分間ものムービーをただ見続ける行為は苦痛、人は興味が持てないWebページにたどり着いてしまった場合、1秒と経たずにブラウザバックするらしい。
→ LP式からカウントダウン風ムービーに変更=ひとまずはいきなり始まったそのカウントダウンが終わるまで自分の資料(ムービー)を「見続けてもらう」ため(「何が起きる?」と思わせる)

ex)そもそもランディングページとは何か?

- 商品と顧客との出会い(コンバージョン)の場であり、商材に対するユーザのアクション率を向上させる狙いがある。

コンバージョンとは、Webサイトに来訪したユーザーが資料請求、会員登録、購入など利益につながるアクションをすること。(中略)コンバージョンの定義は、サイトの成果点によって異なり、通販サイトでは購入、情報サイトでは会員登録などがコンバージョンにあたる。(下記リンクより引用)

今回の場合、審査官が雪花さんの提出資料を「見続けよう」と思ってくれて実際に行動に起こすことが雪花さんの狙うコンバージョンですね。

- ほか、企業に関係するフリー音源を使い、背景等では志望企業サイトの雰囲気を再現した。そのそこかしこに自分の姿を自然にねじ込んでいく=自分が当該企業に所属しているという未来の姿をイメージング

【2】ムービーの画面内各所に連絡先QRコードを設置した=印象付け

- 恐らく上記カウントダウン式オープニングで始まったムービー内では冒頭からQRコードが設置されていたはず。視聴者(審査官)がカウントダウンを待っている間に「このQRは一体なんだろう?」という興味を誘発できるからですね。この手段を執ることによって、採用側に「QRコードのやべえ女」がいると思って貰いたかったそう。

- どちらかというと連絡を寄越してもらうというよりも「他の人がしていなさそうなこと」をするような変わった人であると思わせる=少しでも担当官の記憶に自分を刻み込む

【3】「自分で良いと思える、自分の特徴」についてのみ記載する

- 「~はできないけど、やったことはないけど」のような弱点をわざわざ伝える必要はない
- 出来ること、得意なことを伝える(面接官は資料を見て、あなたのいいところをさらに知りたくて面接の場に呼ぶはず)。
- 上記の理由は「自分という商材を買ってもらう」という作業を現在しているはずであるから。ただし嘘はつかないこと(週7で働ける、給与は必要ない、etc……)。面接を勝ち残って採用してもらった後がスタートであり、今後お互いの関係が続いていくため、嘘は信用問題として後を引いてしまうため。

また、【3】は同じバーチャルYouTuberの先輩であるもちひよこさんのチャンネルから学んだ方法であるそうです。

上記リンクはもちひよこさんが2019/03/22にリリースしたもので、雪花さんが受けたものと同じようなオーディションの開催を2019/01/25に発表していたという背景があります。

もちひよこさんは2019/07/26にはプロダクション設立に漕ぎ着けるという実績までお持ちになっています。つまり雪花さんとは逆となる「面接官」の立場から近しい話題について言及なさっているということであり、両視点から得られた情報で自分を客観的に見つめ直すことが適切であるように思えます。

余談(アクティブラーニングについて)

またLPについての知識(人は興味がない事象が表示されたWebページを0.2秒ぐらいで興味を失いブラウザをバックさせるから注意すべき、等)は雪花さん個人の心理学への興味から独学で専門書等を読んで学んだそうです。

「人はどういう特徴を持った部分に興味を持つのか」「人間のどういった行動心理に基づいてインターネット上のサイトが創られているのか」という知識に基づいた上で現物を観ると、確かに本の通りに各部分が構成されているという復習、検証体験ができる。セルフ・フィードバック……というか実地研修みたいなものですね。そのように、実際に自分が動いてみて、働きかけて得た体験を元にして身につけた知識は風化しづらいという特徴があります。

1960年代に提唱されたというラーニングピラミッド(知識の定着率を示した図)でもこのような能動的学習=アクティブ・ラーニングの優位性について示唆されていたようです。

ライブ後半で明かされますが、一時期はWebデザイン関係の月刊誌にも手を出し、旬のデザイン方法や広告への視線誘導、人の心に届くライティング(Writing)なんかについても学んだということでした。しかし、最終的にあまり文には自信が持てなかったそう。そのウィークポイントをカバーするかのように上記のようなアプローチを導くことになったのでしょうか。

「なんとなく知りたくなったこと」イコール彼女の目的をかなえるための「行動の下準備」であったということであり、知識欲だけで、つまり趣味の範囲だけでここまで出来たという雪花さんの過去に驚かされます。

2次選考=面接以降で心がけたこと

本来は予定していなかったことですが、書類&ムービーの後続選考についても触れられました。

1.特に一言目をとにかく明るく元気に話すようにした

- 人間の第一印象は第一声で決まる → 最後、面接官に「こんなに元気な人は初めてだった」と言われた

2.話したいことを優先順に文字化しておく

- 1.の「第一声を元気にしなければならない」に引っ張られ、また必ず緊張してしまうため、絶対に「話したかったこと」が記憶から抜け落ちる
- 話すべきことの優先順位を決めておかないと後悔が残る

3.恐らく訊かれるだろう質問についてのQ&Aを洗い出した

- 本項について解説する際、雪花さんは「開戦前に用意できることは用意しておくことで自分の能力を100%発揮する」と例えましたが、こちらはシミュレーションを万全におこなっておくということですね。「この段について皆さんに話している瞬間ですら、プレゼン資料を段階的に画面へ表示させた上で話している」と丁寧に自ら証明します。

(質問例:どんなことがしたいですか、あなたはどういう人ですか、どんな趣味を持っていますか、人に負けないことはなんですか……)

結局は運かも

- タイミングが良かった。最終的に残ったメンバーの中に、雪花ラミィという人を合わせればバランスが良くなるという判断があったのかもしれない(ご本人の想像)

特に禁止事項として明記されていないのであれば、こういったオーディションは何回受けても良い、と雪花さんは話します。やらないよりは少なくとも「また来た」という印象だけは高確率で相手方に与えることができるため。

しかし次は必ず別角度のPR資料にしなければ同じように埋もれるだけ。目に止まらなければ意味がないとさえ形容しています。

例えば今回はカウントダウン風ムービーでアプローチしたが、仮に落選した場合は今度こそLP風ムービーで挑もう、等。

尖っていると客観的に思える部分を強く押し出すのが大切であり、その部分を採用関係の資料内に収めなければならない。

前述の通り雪花さんは自分がジョインしようとしている企業のYouTubeライブ時間傾向を把握し、「この時間はあまり集客力がない(ライブ配信をする人が少ない)から自分ならその時間を埋められる」といったこともPRなさったようでした。

実際に現在「朝活」と呼ばれる6~10時台のライブストリーミングをかなり継続的におこなっており、この回自体がまさにその一環です。

さすがに採用面接の場で「酒が好きで好きでたまらない」ということまではアピール出来なかった(自制した)ようですが、その後しっかりと酒造メーカーとのコラボレーションを実現させました。

※アフィリエイト系リンクでは有りません。

そもそも既に期限が過ぎてしまっており買えないですが、商品化までデビューから半年も経っていない辺りにデビュー後もどれほどの苦労、努力があったのだろうかと思わされますね。

授業後の感想

また終了直後は履歴書を手書きで書くかどうかみたいな戦略、或いは熱意、さらには資格についての考え方等についても話しているため(例:何社も受けることになって、その中で志望順に差が生まれるだろうけど受けるときはそこが最高順位の志望先であるという思いで受けるべきだ、というようなお話)、真面目にその後面接が控えている方はそのまま流し聴きするのもモチベーション持続のために良いかも知れません。

雪花さんはファンレターの類を受け取る機会も多く、いかに手書きレターが良いかということについても話します。いわゆる社会の入り口である履歴書なんかは、書き方によって当人がいかほどPC慣れしているかについての指標となり得る場合もあるため、必ずしも手書きである必要がない場合も近年では多いのではないでしょうか。

しかしながら確かにファンレターという分野であれば、たった1人の相手に自分の想いを伝えるためにその文にすべてを載せなければならない。つまり「PC慣れしているかどうか」が問われる場面ではないわけで、「手書きである必要」はなくても「手書きであることの説得力」みたいなものは発揮できそうだと思えます。

またエクセルではなくGoogleスプレッドシートを選び、何か資料を作る場合はそちらで作業をしているという話も。アカウントさえあれば誰でも利用できるサービスであるため、多くの先駆者がWeb上にその使い方なんかを残してくれているはず、だから使い方に迷うことなんて往々にして無いだろうという合理性のある話もありました。人は単語さえ書ければ目の前の箱で知りたいことについていくらでも調べられる。

ご本人の言葉で学ばれたほうが頭に残ると思いますので、必要な方は直接視聴することをおすすめします。一時間集中して人の話を聞くという練習にもなりますよね。

後記

仮に、ある個人が転職とかステップアップを考えなければならない状態になった場合、立場的には元フリーランスでも元アルバイトでも、例えハイキャリアでも関係なく寧ろ完全に同じ立場であると思えます(個人的には)。もちろんハイキャリア側に近づけば近づくほど、自分をPRするための「手数」は多くストックしやすくなるかも知れませんが「どうやって効果的に見せるか」という部分は組織に適応した時とはまた違ったスキルが必要なのではないでしょうか。

自分のスケジュールを英語で発信するバーチャルタレントさんはまだあまり多くは有りません。

このお話が終わった後のご本人のSNSです。

普段、雪花さんはゲームに詰まった際などにハァーンというなにか鳴き声のようなものを発することがあるのですが、この回は2:20:00ぐらいまで聞くことはなかった。

相手の想いを読む、裏に隠された理由を推し量り適切な答えを導き出すというような技術の話をする回でしたが、それを話す自身もまたリアルタイムなリスナーのチャット欄なんかから読み取れる意思に応じてその都度臨機応変にプレゼンテーションしていくといった技能が必要な、普段話をするライブストリームとはかなり領域が異なり精神力を費やす配信だったのではないでしょうか。

長くなりました。お付き合い下さりありがとうございます。

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