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たまには昭和の話を・破

昭和レトロ自販機が、週末喫茶・週末ライブハウスみたいな盛り上がり方をしていてすげーなみたいなお話をしていました。ヘッダ画像をお借りしています。

しかしその盛り上がりはただで生まれたわけではなく、レトロ自販機に対する尋常ではないパーパスを持った人がいて、まさに「好き」を突き詰めた趣味を極めんとする過程で彼と趣味を同じくする人たち――――――つまりレトロ自販機が懐かしいと、好きだという人達――――――が共感しまくった。

その共感数は割と商売として成り立つレベルだった。

つまり昭和、平成、令和と年号が改まっていくにつれ昭和的価値は身を潜めるながらも着実に限りなく高まっていった。昭和レトロを愛する母数は「当時を知る者」「当時を知らない者」と別け隔てなく大きくなっていて、商業的1ジャンルとして成立するまでとなった。たった2つ前の年号でありながら。

とはいえ昭和時代は異常に長かった。始まりは1926年末らしいので、もう100年ぐらい前になってしまいました。

確かに、そこまで離れてしまえば同じ国にして異文化といえる。

レトロ自販機オーナーが最も愛するのはハンバーガーの自販機ということでした。確かにハンバーガーが自動販売機で買えるなんて嬉しいとかおかしいとか以前に驚かされる(その後で嬉しいとかおかしいとか思う人もいたし現在もいるのかも知れないが)。

自販機でハンバーガーが買えるという自分だけしか知らない贅沢感は代えがたい体験であるようにぼくには思えた。オーナーにより、当時の自販機の外装?を使い、出てくる品の包装も当時と同じテイストにしているとのことだったので、わざと黄色く古めかしいフォントで油絵みたいなハンバーガーの絵が印刷された箱を生産するラインをどこかで新しく造ったのでしょう。恐れ入る。

そして味も、飲食メーカーとわざわざ話し合い、当時の味に近づける努力をした。

するとここへ着た客にとっては、その品が当時の工場で造られていようが現在の最新モデルの工場で造られていようが、自販機に金を入れた瞬間に昭和という異文化を自分の手中に収めた体験ができたことになる。タイムスリップが数百円でできるんだからこれはエンターテインメントですね。

また麺系も饂飩やラーメンとありましたが、かなりの人気だそうでその日のできたてを渡すためにオーナーが自分で創っている。皿に一式材料をあけていき、片っ端から饂飩自販機に入れる。どうやら自販機内で冷やされ(あるいは事前に冷凍し)、めちゃくちゃ熱い湯がかけられて解凍され、おいしい味のもととなる液体を混ぜ込まれて渡されるらしい。

レトロ自販機に詳しいオーナーの主観でこそあるものの、当該行為によって完全にこの場では昭和の食文化というエンターテインメントがかなりな格安で味わえるテーマパークと化していると言っても過言ではないように思えます。

だってそういう昭和レトロを体験させて人を呼び込みたい人たちは、わざわざ大きい百貨店の最上階をまるごと長屋みたいにしたり、チェーンの一店舗をわざわざ昭和風に改装したり新築したりしてまで表現してるわけです。都会だから場所代も何もかも高く、複合といいますか折半しないとそういう出店ができないのと違って、自販機を置いて裏で努力すれば簡単に昭和が味わえてしまう。

造られた昭和でありながら造られた昭和感がまるでないこの都会の昭和との違いは何でしょう。都会の飲食店で出される昭和とは完全に現代風にアレンジされた昭和でしかないから?店員も今の令和の人々が、給与のために頑張って演じているから?

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