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故人の生涯も、会社の秘密も、粛々と綴る  <鈴木満優子・前編>

フリーライターと聞いてどんなイメージを浮かべますか?怪しい?無頼漢?パパラッチ?そんなイメージと真逆の、ジャケット着用で9時〜5時的に働くライターに、なぜ・どうやってこの仕事をしているのか、聞きました。


東海を駆け回って、おもしろ企業を覗き見できちゃう

自宅のリビングも仕事場

怪しくない“カタめ媒体”のお仕事


――フリーライターと聞くとちょっと怪しいイメージです。刑事ものドラマで事件を嗅ぎまわっている人とか、風体の怪しい業界人とか。
そうですよね(笑)。私も自分がこうなるまでは、そんなイメージでした。でもどっちかって言うと逆で、基本ジャケット着用、9時-18時で仕事をしています。

――どんなお仕事なんですか。
企業の社史・記念誌を作ったり、会社案内、広報誌、HPなどの執筆をしたり。医療系やお出かけ系のWEBマガジンや雑誌、フリーペーパー、キャリアやプレスリリースを扱うWEB媒体でも書いています。企業や医療機関の取材が多いですが、要するに何でも屋ですね。

基本的には出版社、編集プロダクション、WEB制作会社などの法人から依頼を受けて、インタビューや取材をして、レポートやコラム、広告記事、書籍などをまとめています。リライトだけとか、SEO対策用のライティングとか、SNS運用などはほとんどやってません。ネタだしやアポどり、撮影、先方校正までやる案件もありますね。コンスタントに取引がある業者は、10社くらいかな。

一番力を割いているのが、社史の執筆です。出版社の編集者や、クライアントの社史編集委員とやりとりしながら、会社に眠った資料を掘り起こし読み込んで、必要があれば当時を知るキーマンに何度も取材して、会社の歴史を紡いでいきます。社史なんて誰が読むんだ?という気持ちを堪えながら(泣)、半年〜1年近くかけてライティングしています。誰が読むのかいまだに謎ですが、書く方は楽しいですよ。企業の歴史って、地域や産業、国の歴史とも無縁ではないので、秘密のストーリーを発掘して偉大な何かにつながる感覚…。

――ライターというと雑誌のイメージしかありませんでしたが、いろんな場所で活躍できるんですね。
「なんか文章、早く、たくさん書いて…」って需要あるんですよ。質はともかく。インターネットが普及して、テキストコンテンツはさらに必要とされてるんじゃないでしょうか。

書斎はコメダ、新入社員くらいの収入


――どんな生活なんですか。
夫と子どもが2人いるので、朝送り出したら、仕事開始。週のうち1〜4日は取材や打ち合わせに出かけます。東海3県をエリアにしているので、行って帰って1日終わっちゃうこともあります。午前に取材があれば、午後は執筆というパターンが多いかも。自宅かコメダかスタバかマックか図書館で、気分で場所を選んで働きます。家の場合、疲れたら床にゴロンもできるのが、フリーランス特権で最高です!あ、最近は会社員でもリモートワークですね…。

――あのー聞きづらいんですが、一番聞きたいところなんですが…実際どれくらい稼げるものなんですか。
おおおー。そうですよね…。私はメディアが指定した先で取材して、2,000字〜3,000字程度の文章を上げると、15,000円〜20,000円程度です。納期や内容によって違うし、交通費は出たり出なかったりです。社史などは分量も大きく、関わる期間も長いので、1文字7〜10円程度を執筆・校正期間に分けていただき、取材費などが別途設定されます。社史全体を仕上げて、20〜数十万円レベルですね。

基本平日のデイタイムに稼働しているので、まあ、月収は大卒初任給に毛が生えたくらいという感じです。

思ってもみないカタチで、夢は叶ってる

仕事道具 MacBook Airに応挙の子犬のシール


――そこそこなお金になるんですね。レジ打ちよりは稼げるという感じでしょうか。今のお仕事の気に入ってる点は?
知らない世界を知れる、普通に暮らしていたら会えない人に会える、プロの話が聞けるってことが一番。好奇心と野次馬心とミーハー心が大満足できます。

それから、文章を書いてお金になる、人に読んでもらう文章を書くという、子どもの頃の夢が叶っていることもうれしいです。作家でもエッセイストでもないですが、無名の実用文書職人として夢が叶いました。そもそも、文章を書くこと自体も好きなので、書いていて飽きないし、はっと気づくと書き始めて3時間経ってた、なんてことも。

あとは自分の裁量で全て決められること。仕事を受けるのか、断るのか。休憩するのか、営業するのか。仕事が無くなったり、仕事を切られたり、収入が落ち込んだり…常に大きなリスクはありますが、それも含めて自分で決めてやっているという納得感があります。



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