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介護人材不足の奇策

御年80歳の未来さんと光里さん。
今日も井戸端会議で盛り上がる。
近くて遠い…未来のお話。
 
【光里】
「ちょっといい?」
【未来】
「どうしたの?」
 
「うちの施設、
 段々、空室が増えてきたのぅ」
「そうなの?」
 
「未来さんのところは、
 まだ大丈夫ぅ?」
「私のところはまだかな。
 でもそれって、
 光里さんの施設だけの話じゃないよ」
 
「そうなのぅ?」
「それは当然よ。
 少子化を食い止められなかったら、
 高齢者の数も年々減るに、
 決まってるじゃない

 
「そうだよねぇ。
 うちは3階のフロアーを、
 閉める話もあるんだってぇ」
「この数年で施設の数は、
 3割減ったらしいわよ。
 
 あっ、そうか。
 
 言われてみれば、
 うちも入居者は減ってたわ

 
「え?
 未来さんのところも減ったのぉ?」
減ったけど、満床なのよ
 
「???
 どぉ~いぅ~ことぉ?」
空いてる居室を、
 一般の人に貸し出してるのよ

 
「ええ~?!
 そんなことできるのぉ?」
法改正があったからね。
 うちは60代の女性が多いわね」
 
「どうしてぇ?」
アパートを断られた人の、
 申し込みが多いらしいの。

 ある年齢を超えて独身だと、
 家主やぬしも嫌がるんでしょ?」
 
「それは知ってるぅ。
 あれでしょ、孤独死とか、
 保証人の問題とかだよねぇ」
「そう。
 現役で働いてても…
 例え資産家であったとしても、
 高齢独身者は断られるケースが、
 今でも多いのよ

 
「それで介護施設に…」
「まあそういう人たちの、
 受け皿にはちょうど良かったのよ
 
「ちょうど…良かったぁ?」
「そう。
 施設は格安で部屋を貸す代わりに、
 介護業務を手伝うという、
 条件が付いてるの

 
「介護しないといけないのぉ!
 そんなの大変じゃない!」
「そんなガッツリじゃないわよ。
 日中仕事してる人もいるんだから。
 
 それにちゃんと施設には、
 介護員もいるのよ。
 
 その人達には週10時間以上、
 利用者に関わることって。
 何だっていいのよ。
 お話相手でも、車椅子の掃除でも」
 
「それなら何とかなりそう」
「でも10時間なんて守る人いないわよ」
 
「ええ~?!」
共同生活が長くなるに連れ、
 それが当たり前になってくるのね。
 
 最初は介助のつもりが、
 世話焼きみたいになってきて。
 
 寝食を共にするうちに、
 家族っぽくなっていくのね。
 
 利用者だけじゃなくスタッフとも。
 
 レクリエーションの補助ほじょや、
 配膳はいぜんを手伝う人もいるし、
 看護師や介護員の経験のある人は、
 夜勤の手伝いもしてくれるって」
 
「夜勤なんて大丈夫なのぉ?」
「聞いた話だけど、
 夜勤中の休憩って、
 何があるかわからないから、
 ゆっくり休んでもいられないらしいの」
 
「そうかぁ。
 誰がどのタイミングで起きてくるか、
 わからないもんねぇ」
「だから夜間の休憩時間、
 スタッフの代わりに2時間ほど、
 様子を見てくれるって」
 
「それ助かるねぇ。
 あっ!わかったぁ!
 それ人材不足の解消のためねぇ!
「当たり!
 格安の家賃で部屋を貸して、
 介護を手伝ってもらう。

 空室を解消して介護人材も確保する。

 一石二鳥の方法よね。
 そのまま利用って人もいつかは、
 出てくるでしょうし…一石三鳥か
 
「世の中には、
 色んなこと考える人がいるんだねぇ」
 

これは未来の話でありフィクションです。
でも30年後はさだかではない…。 

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