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男女の違い ~満腹度と幸福度~

男女二人。
 
「これ見て」
「なに?」
 
「こないだ友達と行った、
 カフェのケーキ…すごくない?
 これだよ!これ!」
お~デカいね
 
「でしょ?
 しかも美味しいんだから」
「これ完食したの?」
 
「…うん。
 あと…美味しくて…
 二人でおかわりした…」
「2つやばっ!
 これ2つは、
 俺、胸焼けするよ絶対!」
 
「ノリだったの~!
 1個食べて美味しすぎて、
 もう一種類、別のあったよねって」
「別のケーキのがあったってこと?」
 
「そう。
 二人ともお腹はいっぱいだったけど、
 季節限定だと今しかないって…わかる?」
「まあ確かにそうなるね。
 しかし…
 やっぱりそういう時って別腹なんだ」
 
「そうそう。
 で、これ大正解だったの!
 ほんと美味しくて、もう大満足!
 友達と二人で興奮しすぎて、
 店員さんと記念写真撮ったんだから」
「あ~この隣の写真ね」
 
「そう。
 もう友達なんか帰り際、
 パティシエにもお礼を~!って、
 涙流してたんだから」
「そんなに?!」
 
「この値段であんな美味しいもの、
 感謝しかありませ~ん!って。
 パティシエ苦笑いで、
 若干引いてたけど…」
「見てなくてもわかる。
 そんな熱狂する人、
 なかなかいないだろうから」
 
「神様~!ってずっと手振ってた」
「その友達ヤバいな!
 ライブ終わりのテンションじゃん
 
「そんな感じ。
 でもそうなるぐらいの美味しさ」
それいくらなの?
 
値段?
「そう。1個いくら?」
 
「え~と確か…840円?
 だったかなぁ…」
「840円?!」
 
「2つ食べて…セットだったし…、
 計算わかんなくなっちゃった」
「2個!!
 1680円!!
 嘘だろ!!おい!!」
 
「セットだからそんなにいってないよ。
 2個目のケーキは単品追加だから。
 でも、何でそんなに驚いてんの?」
「いやいやいやいや!
 なに涼しい顔で、
 そんな高いもの食ったこと、
 報告できんの?!」
 
「え?別に高くないよ?
 他店と同じぐらいだよ。
 しかもドリンク付きで良心的だし。
 これより高いケーキいくらでもあるよ」
「お前らおかしいだろ!!
 840円だぞ!!
 牛丼並盛2杯食べても、
 40円もお釣りがくるんだぞ!!
 メガ盛りでも40円お釣りがくる!!
 それがどういうことか、
 わかんないのか!!」

「わかんないわよ!!
 あなたの牛丼基準の、
 金銭感覚
なんて!!」

「ちょっと待て…。
 聞いてもらっていい?!
 その840円あったら、
 牛丼並盛に、
 豚汁シーザーサラダを付けても、
 760円で80円もお釣りがくる!
 これが一番高いセットなんだぞ!
 シーザーは牛丼ミニと、
 100円しか差がないんだ!
 最早シーザーは、
 牛丼と同等の地位にある!
 そう考えるとシーザーはとにかく高い!
 あれは高級シーザーなんだ!」
「シーザーシーザーって、
 あなたは蜷川幸雄にながわゆきおなの?!」
 
「聞いてくれ!
 男にとっての外食はワンコインだ。
 ワンコインが浪漫ロマンなんだよ!
 ワンコインでお腹がふくれた時…
 満腹感まんぷくかん満足感まんぞくかんが、
 同時に舞い降りてくるんだ!」
「それが何よ。
 自分の価値観押し付けないでよ!
 私は自分の生活切り詰めて
 あのお店でケーキを食べてるの。
 あのケーキはね、スペシャルなの!
 
「スペシャルって何?」
「いい?
 女性はお金がかかるの。
 化粧品美容室洋服エステ代。
 これでも回数減らしたり、
 値段をおさえたり
大変なのよ!」
 
「止めればいいじゃん」
「はあ?!あなた全然わかってない!
 あのケーキはね、
 頑張った私へのご褒美ほうびなの!
 あそこは特別な空間なの!
 あそこにいることで、
 私は幸福感を得ているの!
 値段じゃないの!!
 わかる?!」
 
「それなら俺だってそうさ!
 あの牛丼屋であの値段で、
 お腹が膨れるまで食べれたことが、
 俺にとっての幸せさ!
 あそこに行くことで、
 俺は多幸感を得ている!
 
「じゃあ、それでいいじゃない?」
「そっちもそれでいいんじゃないの?」
 
「……」
「……」
 
「……」
……ごめん
 
私も…
「あのさ…」
 
「なに…」
…心と体の満足度…
 比較しちゃ駄目だね…

 
「そう…だよね…」
「提案なんだけどさ…」
 
「何…よ…」
「もしよかったら…」
 
「……」
コメダ珈琲行かない?
 
賛成
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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