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ポイポイ病

「はい。
 気休めオレンジ相談室です」
「よろしく…お願いします」
 
「何でもご相談をお受けしますが、
 まともにお答えしませんけど、
 よろしかったですか?

「よろしくないよ!」
 
「ではまず、お名前をどうぞ」
「聞けよ!」
 
キケヨさんですね。
 本日はどのようなコースを、
 お望みですか?」
「話の流れを修正しろよ!」
 
では、修復コースですね。
 30分30円になります

「やすっ!
 10分10円!?」
 
消費税込みで3万円になります
破綻はたんしてる国の税率!
 
「それに別途、送料1万円かかります」
「目の前にいるだろ!」
 
相談結果を後日、郵送しますので
「ここで言えよ!」
 
「では、ご相談どうぞ」
「あれ突然、普通に戻った。
 大丈夫?
 ちゃんと答えてくれんの?」
 
「それはもちろん。
 お客様のお気に召すかは、
 分かりませんが」
「不安だなぁ…
 まあいいや。
 ちょっと、聞いてほしいんだけど」
 
「はい。
 どのようなご要件でしょう?」
 
最近…年のせいなのかなあ…
 流行りのものとか、
 観たり聴いたりしても、
 心がおどらないんだよね

「それは、よくにしますね」
 
「あるだろ?
 でもさ…こうやってどんどんと、
 世の中への興味が薄れてくのも、
 どうかとも思ったりするのよ」
「それも、よくにします」
 
「別に最近の動画や音楽も見聞きするよ。
 でも、何か冷めた目で見てるんだよね…

 何でそんなに盛り上がってんの?

 そんなの昔からあるし、
 その流行はひと回りしてるよ…
 って、感じでさ」
「それも、よくにしますね」
 
「耳ばっかだな、おい!
 音声案内か!
 ちゃんと、オレの話聞いてる?!」
「聞いてますよ。
 それも、よく耳にします」
 
「耳!
 ………まあ…いいや。

 それでさ…
 家にいる子供が超面白いとか言って、
 アニメやゲームをすすめてくるわけ。
 
 一緒になって楽しむけどさ…
 
 面白いってこうじゃないんだよって、
 モヤモヤして心から楽しめないんだよ

「あります…いや、あるかな…
 ありますね、きっと」
 
「どっちだよ!」
 
あると思えばありますよ。
 心のシャングリラ理想郷

「何の話だよ!」
 
心のフロンティア未開の大地でしたか?
「そこじゃねえよ!」
 
じゃあ、ガンダーラ?
「地名じゃねえか!
 そうじゃねえよ!
 
 このモヤモヤした感情は、
 何だろうね?って話だよ!
 
 あんた話聞けよ!」
 
「私は専門家ではありませんが、
 その症状は心の病気ではありません」
「急にスイッチ入ったよ」
 
「恐らく、それは老朽化現象でしょうね」
「老朽化?
 老化じゃなくて?
 
「そうとも言います。
 そしてその症状には既に、
 名前があります

「あんの?!
 このよくわからない感情に名前が?!」
 
「はい」
「それって…」
 
「あなたは…
 ポイポイ病です
「はっ?!
 ポイポイ病?!
 何それ?」
 
「ご存知ないですか?
 随分ずいぶん前からにしますけど…
 おかしいですね…本当にご存知ない?」
「知らねえよ!
 聞いたことねえし、いつからだよ!」
 
「1週間前です」
近々きんきんじゃねえか!
 
「あれ?
 私の認識違いでしたか…」
「いや、常識だよ!」
 
「いえ、こちらには、
 あなたと同じようなご相談が、
 3000件ほど来てまして」
「めっちゃいる!
 あんた、そんなに対応してるのに、
 何で受け答えが手慣れてないの!?」
 
「私…
 人見知りでして」
職業選択のミス!
 
「でも今年、部長に抜擢ばってき
意外とエリート!?
 
「再来年は所長確定です」
最早もはや、天職!!
 
「それでポイポイ病ですが…」
「いつも急にスイッチ入るのね!」
 
「それはいわゆる現代病です」
「現代病?」
 
サブスク加入されてますか?
「ああ、映画と音楽…
 全部で6つほど
 
「ああ~。
 それは残念ですが、重篤じゅうとく状態です」
「何だよ!
 そんなの他にも、たくさんいるだろ?!」
 
「こちらでは5つ以上は、
 もう手遅れとしております」
「何、もうダメってこと?!」
 
「はい。
 そのポイポイ病というのは、
 別名サブスク病とも言われてまして…
 
 たくさんの楽曲、
 大量のコンテンツを鑑賞することで、
 あなたの脳が、
 パターン学習してしまうことで起きる、
 現象なんです

「どういうこと?」
 
「あなたはいま…
 最近の音楽を聴いても…
 
 このテンポと歌い方…
 あの歌手っポイよね
…とか、
 
 新しい映画やドラマを観ても…
 この話はあれっポイよね
…とか、
 
 ネット動画を見ても…
 この企画って、あの人っポイよね…

 
 そうなってませんか?」
「なってる!!
 どれを見ても…
 そんなにあの人が先にやってるし、
 これってパクリだろ…とか、
 オリジナル作れよって思う!」
 
「そう。
 それがポイポイ病です」
「え!?
 これって…
 もうどうしようもないの?!」
 
「どうにかしたいですか?」
「どうにかなるの?!」
 
あまり…お勧めはしません
「いや、頼む!
 むしろこんな感情こそ、
 オレは望んでないし、いらないんだ!」
 
「本当によろしいんですか?」
「頼む!」
 
ファイナル……ポイポイ?
「何だよ!
 ファイナルポイポイって?!」
 
最終確認です。
 もう一度、聞きます。
 ファイナル………
 ……………ポイポイ?」
「ためるな~
 じゃあ…ファイナルポイポイ」
 
了承りょうしょうしました。
 あなたの過去の記憶、
 10年分を消去します

「え?!」
 
型番KKY2024-DX。
 10年分の記憶除去

「リョウカイ!
 プログラム確認!
 
 KKY2024-DX…
 旧型ヒューマノイド人型ロボット
 
 メモリー記憶リサーチ調査開始!
 
「おいおい!
 何だよこれ~!!」
「ああ~
 あなたはそのまま座ってて下さい。
 危ないですから」
 
「うおぉ~~!!
 止めろ~~!!」
 
メモリー容量パンパン!
 正常動作の為、
 アト2年分、消去要請!

「じゃあ、そうしてくれ」
 
「リョウカイ!
 プログラム確認!
 KKY2024-DXの、
 記憶12年分除去ジッコウシマス!

「うわぁぁぁ~~!!
 止めてくれ~~!!」
 
キオクを消しま~す♪
 ポイッ♪ポイッ♪ポイッ♪
 
 キオクを消しま~しょ♪
 ポイッ♪ポイッ♪ポイッ♪

 
「あああああ~~~ぁぁぁぁぁ…」
 
「消去完了!」
 
さあ目覚めなさい。
 
 これであなたは、
 新しく生まれ変われました。
 
 この世の全てが新鮮ですよ…きっと

 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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