くつ屋のペンキぬり-04(小説)
さあさあ、太陽の近くこの町で新しい暮らしの幕開けです。
とは言いましても、このとおり男はペンキぬりの弟子入りのあてが外れてしまいましたから、仕事がありません。本当は最初の半月だけでも、下宿に入る決まりとして家賃を先に払うところなのですが、だいたいの事情を聞いていた女主人からは「半月だけですよ」と言って支払いを待ってくれました。彼女のやや落ちくぼんだ鋭い目からは、言外に「その代わり半月を過ぎたら必ず追い出しますからね」と伝わってくるようでした。どうあっても半月で、当面の食い