くつ屋のペンキぬり-03(小説)
紹介された下宿は繁華街から少し北に外れて、ごつごつとした岩場の上にありました。高台になっていますから、丸屋根の家々が一望できます。まさしく、男が望んで止まなかった太陽近い国の光景です。これほど景色のよいところを、これほど安く間借りしてよいのだろうか。通貨が違うとはいいましても、ひととおり、訪れる国について学べることは学んできた男ですから、下宿の主人から言い渡された家賃が相場よりずっと安いことはすぐに分かりました。
「なんだい、別に首つりなんか起きてやしませんよ」
下宿を管