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〜第1章 お金はあとからついてきません〜▷高い授業料を払ってわかったのは「お金はあとからついてこない」

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【前回までのお話】
忙しくなったら、もっと人を雇えばいい

▲自転車操業から抜け出そうと、間違った道を突き進む

ドツボにハマればハマるほど、この状況をなんとか抜け出そうと必死でもがきました。それに、何もしないとお金が回らなくなって会社は潰れてしまいます。だから、会社を存続させていくために、やることは1つ。さらに売上を上げて、会社を大きくしていく。今雇っている人数に見合った売上を作っていくことに集中しました。

そして、月末にお金が足りなくなる状況だけはやっぱり避けたいので、銀行にお金を借りながら、やりくりしていくしかありません。

売上を上げていくと、単純に会社の銀行口座に振り込まれる金額が増えていきます。楽天市場での販売だと、カード決済をするお客さんが圧倒的に多いので、カード決済した売上は、締め日を挟んで翌月に銀行口座へ振り込まれてきます。

一方、広告費の請求は翌々月となります。だから、セールで伸びた売上でさまざまな支払いをし、翌月もがんばれば、なんとか翌々月の広告費の支払いも追いつくという皮算用でお金を回していました。


これは、僕なりに当時は苦肉の策で考え出した作戦です。しかし、考えてみると、単なる自転車操業ですよね。
でも、そのころは会計の知識はこれっぽっちもなかったので、計画的に翌月の資金繰りを計算していくことなんて、できていませんでした。
ただ、もがいているうちに、この自転車操業の状態からどうやって抜け出していけばいいのか、おぼろげながら頭に浮かんできたのです。
最終的に手もとに残るお金が増えていけば、余裕ができて抜け出せる。でも、そのための計算の方法はわかりません。

税理士さんから「ちゃんと資金繰り表をつけたほうがいいですよ」とご指摘をいただいたこともありましたが、右から左に流れていきました。
あのときの僕は、「何をやったらいいかわからない」、いや「わらかないことがなんなのかさえ、わからない」という状態だったと思います。

ただひたすら売上を上げればなんとかなると信じて、僕はどんどん規模を拡大していくことに夢中になっていき、こう思っていました。
「1億円の売上を上げてダメなら、2億円を売り上げればいいだろう。最終的には、何十億、何百億と売り上げたら、間違いなく億万長者になれるに違いない」でも、「間違った問い」に対して、「正しい答え」を導いても、それは「間違った答え」しか出てきません。
当時の僕は「間違った問いに対する正しい答え」の先が泥沼に続く道だとは知らずに、脇目も振らず、突っ走っていきました。

▲「成功本」の通りにやったのに、お金があとからついてこない

僕は独立してからずっと一生懸命がんばって仕事をして、本もたくさん読んで、「花で世界を笑顔にしていく」という大きな理念も掲げて、前に進んでいきました。

そして僕は、何十冊と読んだ本に共通する、ある言葉を信じていました。
それは、一流といわれる有名なコンサルタントの先生の本などの、いわゆる「成功本」には必ずといっていいほど書いてあった、「お金はあとからついてきます」という言葉です。

さらに「お客さんが喜ぶことをすれば、お金はあとからついてきます。だから、お客さんに真伨に向き合い、真面目に取り組みましょう」とも、成功本にはよく書かれてあります。

お客さんにも真摯に向き合い、真面目に取り組んだ結果、「売上」はついてきました。でも、手もとに残るお金はまったくあとからついてきません。
「なんなんだ!何十冊もの本で同じことが書いてあったけれど、ウソじゃないかお客さんを喜ばす〝だけ〞で、お客さんに真伨に向き合う〝だけ〞で、お金はあとからついてくるって書いてあったじゃないか!」と心のなかで叫びました。

でも、今思うとそもそもの進む方向が間違っていたのです。結果、お金が残らなかったのが何よりの証拠です。

なぜお金があとからついてこなかったかという理由を、今なら即答することができます。「会社の数字のことをしっかりと理解」したうえで、お客さんを喜ばせて、真摯に向き合えば、お金はあとからついてくるのだと。

しかし当時は、「会計って、過去に起こったことを数字にまとめたものでしょ?」くらいにしか思っていなかったのです。この考え方が間違っていると理解できたのは、それはまた何年かあとの話。

当時は、真冬の早朝に花を出荷するための梱包作業をしながら、「なんで、お金が残らないんだろう……」と、かじかんだ手を見つめて、ため息まじりにひとり言をつぶやいていました。そんな冬の寒さは、僕にはいっそうこたえました。

▼次回
第1章 お金はあとからついてきません
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▼この本の関連note

【この本のもくじ】

はじめに ~世にも奇妙な花屋の物語~ 案内人 田中靖浩(公認会計士)
●2020/2/7公開●

第1章 お金はあとからついてきません
売上はあるのに、なぜお金が足りなくなるの? ●2020/2/10公開●
お金が足りなくなったら、銀行に借りればいい ●2020/2/11公開●
「税務会計の知識」と「経営の知識」は別 ●2020/2/12公開●
決算書が読めなくても、年商1億円に ●2020/2/13公開●
会社のお金は使い放題。調子に乗ってレクサスまで買う●2020/2/14公開●
忙しくなったら、もっと人を雇えばいい●2020/2/17公開●
▷高い授業料を払ってわかったのは「お金はあとからついてこない」●2020/2/18公開●
▷第1章を読み終えた読者へ

第2章 「数字」が読めると 本当に儲かるんですか?
▷なけなしのお金を払った最後の一手
▷「経費」と「費用」って違うんですか?
▷「儲けるための会計」を学ぶ
▷会社が続くために大切なのは「利益」
▷「限界利益」という「魔法のメガネ」
▷会社の「儲けパワー」
▷決算書で見るところは2つだけ
▷儲けパワーの正体は「限界利益率」
▷第2章を読み終えた読者へ

第3章 「儲けパワー」を高めるには、 どうしたらいいんですか?
▷黒字になるか、赤字になるかの分岐点
▷「こうしたら、こうなる」というシミュレーション
▷「値上げ」によって、限界利益率はどう変わる?
▷「値下げ」によって、限界利益率はどう変わる?
▷「商売」とは、誰かに喜んでいただいて、その対価を得ること
▷第3章を読み終えた読者へ

第4章 「値上げ」をしたら、 天国と地獄を見ました
▷「値上げ」をしたら、お客さんが来なくなりました
▷会社の利益に貢献する商品、しない商品
▷値上げが、会社の利益に与える影響
▷値上げするかどうかの適切な判断
▷第4章を読み終えた読者へ

第5章 「数字」が読めると 本当に儲かりました
▷なぜ、会社にお金が残らないのか?(資金繰り)
▷やっぱり広告を出せば、もっと儲かるんだろうか?(費用対効果)
▷やっぱり忙しくなったら、人を増やしたほうがいいですか?
▷計画は「ほしい利益」から立てる
▷計画が順調かどうかは、どう確認すればいい?
▷利益を出すために、できること
▷できるだけ高く売るか、できるだけ安く仕入れるか?
▷ずっと赤字体質の会社が、なぜ黒字が続くようになれたのか?
▷「数字」に想いを乗せよう
▷第5章を読み終えた読者へ
▷おわりに ~「自分だけのため」から「人のため」に儲けたい~ 古屋悟司

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