運河の街 小樽/海辺の水彩画
絵・文 岡本幸雄
小樽は北海道開拓時代の玄関口として発展してきました。当初は沖泊めした本船からハシケ(台船)を使って荷揚げ作業が行われていましたが、次第に取り扱う荷量が増え、搬送作業の効率化のためにハシケが接岸できる長い水路が必要となりました。そこで大正12年に完成したのが小樽運河です。
小樽運河は内陸部を掘り込んだ一般的な運河ではなく、日本で唯一、海岸の「沖合埋め立て方式」で築かれました。そのため、元の海岸線に沿って緩やかに湾曲しているのが特徴です。当初の全長は1,140メートル、幅は40メートルもあったのだそう。
戦後、小樽港の埠頭整備などにより運河の使命は終わりを告げ、周辺の重厚な木造石造りの倉庫群などは数多く取り残されました。そして昭和40年代、運河の埋め立てと歴史的建造物である倉庫群の解体を伴う道路の拡張工事が浮上。しかし周辺の保存に向けた市民運動が起り、10年以上に及ぶ議論のすえ、運河の一部のみを埋め立てることで結着し現在に至ります。
埋め立て部は道路(臨港線)や公園となり、運河沿いに整備した散策道には63基のガス灯を設置。一帯は北海道を代表する観光スポットとして変貌し、国内外から多くの観光客が訪れるようになりました。
倉庫群はレストランやカフェとして再利用され、運河沿いの細長いスペースにもイスとテーブルを置くオシャレな店が並びます。冬は一面雪に覆われる運河ですが、夏は勢いよく茂るツタの緑色が水面に映ります。
四季を通じてその佇まいは実に趣があります。
現在小樽運河には小型クルーズ船が運航されています。コースマップによると、小樽観光の拠点になっている中央橋から出発。小樽港・北運河・南運河・浅草橋・中央橋と巡る航程約40分のクルーズとなります。
雪の舞う冬場はさすがに観光客は少ないですが、他の季節なら1番船は午前9時半出航で、その後1時間に2船が出るなど夕方まで頻繁に出航しているとのこと。
ゆっくり走行するクルーズ船上からは、静かな水面に写る倉庫群やガス灯など、レトロな雰囲気が楽しめる。デイクルーズだけではなく、ナイトクルーズも乙なもの。小樽運河から1kmほど南には「おたる海の駅」に指定されている小樽港マリーナがあります。