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読後感を保証するコラム

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ハッピーエンド至上主義者による、絶対上向きにおわる話。後味だいじ。いちばんだいじ。
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#考察コラム

燃えあがるノートルダム寺院をかこった市民たちが、アヴェ・マリアを歌っているというニュースを聞いたとき。

燃えあがるノートルダム寺院をかこった市民たちが、アヴェ・マリアを歌っているというニュースを聞いたとき。

ぞくりとした。
あまりに絵画的だった。
伝統的といってもいい。
中世ヨーロッパのできごとかと思った。

ノートル=ダムとは、わたしたちのマダム、すなわち聖母マリアを指す。
聖なるマリア寺院が、炎にのまれて、うち崩れてゆくさまを、民衆がとりかこむ。
聖歌をうたいながら。
マリアを祝福する歌をうたいながら。
教会のステンドグラスにでも、ありそうなモチーフである。
しばらくすると、教会史として絵画になる

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悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

かなしみセンサーの鍛錬に余念がない、切なさ向上委員会のみなさま。
そう、あなたです。
だいたいこのタイトルを聞いただけで、ピンときますね。
きっと戦争だ。
あたりです。
友にわかれを告げるだけで。旅支度をするだけで。
出征する学友の、若いまなざしが、胸を去来します。
かなしい旋律シリーズ、つづきます。

惜別の歌は、一番はこう。

遠き別れに たえかねて
この高殿に 登るかな
悲しむなかれ 我が友

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花のようなる秀頼さまを、鬼のようなる真田がつれて。この戯れ歌にこめられた願いの色

花のようなる秀頼さまを、鬼のようなる真田がつれて。この戯れ歌にこめられた願いの色

かなしい旋律シリーズ。

大坂城、落城。
落城という響きに、哀感がないわけがない。
落つるは、涙か。流るるは、血か。
それでも、いのちまではとられなかった。ひとはそう思いたい。
秀頼は死ななかったのだ。落ちのびたのだ。
歴史の舞台には、もうもどってこないのかもしれない。
政争に負けたのだ。
ふたたび、頭上にいただくことはない。
それでもかまわない。
生きていさえいれば。

花のようなる秀頼さまを

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ほんとうは故郷なんてどこにもないんだとわかっているのに、どこかへ強烈に曳いていく、わびしさもない、つらさも息苦しさもない、透きとおった感情だけがあるような音色。

ほんとうは故郷なんてどこにもないんだとわかっているのに、どこかへ強烈に曳いていく、わびしさもない、つらさも息苦しさもない、透きとおった感情だけがあるような音色。

大河ドラマ清盛の第1回、子どもの歌が流れたときの、あの、頭をなぐられたような感覚は忘れられない。

遊びをせんとや生れけむ
戯れせんとや生れけん

画面のこちらで、目をむいた。
梁塵秘抄だ!音色があったんだ!
音階がひとつかふたつ、少ない気もする。
7音に慣らされているのか、元来、ひとの心のうちはそういうものなのか、この音の落ちぐあいは、どうも不穏な気持ちにさせられる。
この2行だけを、延々とルー

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Groria In excelsis Deo

Groria In excelsis Deo

小学校のころよく読んでいた作家は、いま思えば、尋常でなく旅好きだった。
3か月くらいに1冊、新刊がでた。
新刊の物理的魅力は、とほうもなかった。
このなかに、あたらしい物語がつまっている。
ためいきがでる。
ななめにして、つやつやと光る、キズひとつない表紙を愛でる。
カバーをもどして、本編をごっそりめくる。

まず、あとがきを読んだ。
はやる心をおさえる。
いきなり滑るところぶので、まずは準備動作

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