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起立性調節障害のチェック項目

アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏 より


最近、クライアントさんの中にが同じような症状が認められる方が多いので

「起立性調節障害」についてまとめておきたいと思います。


起立性調整障害:OD(Orthostatic Dysregulation)


【概要】

・寝起き困難、倦怠感、たちくらみ(起立時のめまい)、動悸、失神、頭痛、食欲不振、顔面蒼白などが起きる自律神経の病気

・小学校高学年から中学校の思春期の子供に多い

・中等症や重症の場合、朝なかなか起きられないことから不登校や引きこもりにつながることもある(不登校の子どもの30〜40%が起立性調節障害に悩まされているといわれる)

・約半数に遺伝傾向(家族性)を認める

・自分の意思でコントロールできるものではないため、保護者が起立性調節障害への理解を深め、適切な治療や生活習慣の改善に取り組んでいくことが大切


【原因】

通常、人は動きに応じて自律神経(交感神経)が全身の血管を収縮や弛緩させて、血流を調整しています。この交感神経の働きが過小になってしまったり、過剰になってしまったりすることで、血流の調節が困難になってしまうことが原因の1つです。

自律神経の調整が乱れる要因として、以下の4つが挙げられます。

①運動不足

②水分摂取不足

③精神的ストレス

④遺伝的要素


【症状】

・立ち上がったときにめまいや失神が起こる
・朝なかなか起きられない
・だるい
・気分不良
・顔面蒼白
・食欲不振
・動機や息切れ
・頭痛
・乗り物酔い など

 [症状の傾向]

・症状は午前中に強く午後には軽減する傾向がある
(夜に寝られず起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活の傾向がある)
・不登校の要因となることも多い
・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減する傾向がある
・悪化すると集中力や思考力が低下する


【検査・診断】

① 起立性調節障害の症状が3つ以上、もしくは強い症状が2つ以上あること
立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなど

② 別の病気がないこと
鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎・甲状腺など内分泌疾患、もやもや病やQT延長症候群など他の疾患を除外することが必要

③ 新起立試験を行う
 起立時の血圧、脈拍などを測定し、症状別ごとに分類される

 起立直後、血圧はいったん下がり、速やかに元の値に回復します。心拍数も起立後はいったん上昇するが、その後に回復します。起立性調節障害ではこれらの変化がうまく対応できません。起立性調節障害かどうかを見極めるために血圧回復にかかる時間や起立前後の血圧、脈拍などを測る必要があります。下記のチェックポイントで3つ以上に当てはまり他の疾患が否定された小児のうち3分の2が新起立試験で異常を認められます。

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起立性調節障害


起立性調節障害は以下の4つのタイプが確認されています。

 [4タイプの症状]

 (1)起立直後性低血圧
 起立直後の血圧低下からの回復に時間が要するタイプ

 (2)体位性頻脈症候群
 血圧の回復に異常はないが、起立後心拍の回復がなく上昇したままのタイプ

 (3)血管迷走神経性失神
 起立中に急激な血圧低下によっていきなり失神するタイプ

 (4)遷延性起立性低血圧
 起立を続けることにより徐々に血圧が低下して失神に至るタイプ


④「心身症としての起立性調節障害」チェックリストを用いて学校や家庭のストレスの関与を評価する

⑤ 評価結果と日常生活の状況の両面から重症度を判定する


【経過】

日常生活に支障のない軽症例では、適切な治療によって2〜3ヶ月で改善し、学校を長期欠席する重症例では社会復帰に2〜3年以上を要すると言われています。


【治療】

① 日常生活上の工夫

 1)生活動作や運動、生活習慣

 ・坐位や臥位から立ち上がる時には、頭位を下げてゆっくり起立する
 ・できるだけ長時間の起立は避ける
 ・毎日30分程度のウォーキングを行い、筋力低下を防ぐ
 ・日中はできる限り横にはならない
 ・就寝時間が遅くならないように心がける
 (※病状に合わせて、主治医にも相談の上、無理のない範囲で行う)

 2)水分・塩分摂取」

 ・水分摂取は1日1.5-2リットル
 ・塩分10g摂る

② 家族や学校関係者のODについての理解を深め、医療機関とともに連携してサポートしていく

 中等症や重症の多くは倦怠感や立ちくらみなどの症状が強いため、朝に起床困難があり遅刻や欠席をくり返しています。家族や学校関係者が、子どもの症状を「怠けいるだけ」と捉えてしまったり、生活習慣が悪いからだと決めつけて、叱責したり朝に無理やり起こそうとしてしまうと関係性が悪化してしまいます。
 起立性調節障害は自律神経系の病気で、自律神経系は心の影響を受けやすいので、ストレスは症状悪化の大きな要因になります。症状がひどく学校に行けないことを子どもたちは非常につらく感じています。その苦痛を理解し、頑張っていることを評価することがとても重要です。病状に合わせて、見守っていくことが必要になります。

具体的には、「午前中がきつければ、午後から登校する」、できる範囲で上記に挙げたような生活の中に取り入れられる運動や習慣を初めて見るなど、無理のない範囲で進めていくことがポイントです。


今回は、自律神経のトラブルから生じる症状の1つである

起立性調節障害についてまとめてみました。


症状で辛い思いをしているお子さん、不安な思いをしているご家族、学校関係者の方たちに知っていただけると幸いです🍀


最後までお読みいただきありがとうございました。


アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏
より
日本アレルギーリハビリテーション協会
アレルコア
福のしま研究会
 YouTube(アレリハちゃんねる)noteでは、アレルギー疾患や自律神経に対する理学療法についてお伝えしています。

アレルギーや自律神経に対するリハビリテーションの講習会情報につきましては、以下のHPをご覧ください。

無料のLINEチャットでは、自律神経についての情報発信をしています。

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【今後の研修会予定】

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『ゾーンを語る』コラボセミナー

日時 2023年6月30日(金) 20:00〜21:30
会場 zoom
講師 ・横田裕丈 先生
    新潟医療福祉大学 理学療法学科
   ・及川文宏 先生
    日本アレルギーリハビリテーション協会
内容 20:00〜20:20
  ①「ゾーン」に関係する研究の紹介 (仮)
    
横田裕丈 先生
   20:20〜20:40
  ②「ゾーン」における自律神経の状態 (仮)
    及川文宏 先生
   20:40〜21:00
  ③ 参加者も交えてのディスカッション

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ポリヴェーガル理論

『ポリヴェーガル理論と理学療法』

日時 7月14日(金) 20:00〜21:00
会場 zoom
講師 及川文宏
  日本アレルギーリハビリテーション協会
内容 詳細が決まり次第、アップ予定
 講師紹介などの詳細はこちら
※アーカイブ配信予定(7月16日~7月26日)
※資料の配布はございません

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自律神経セラピストBasicコース
オンライン座学②

②-1「血流(血管)と自律神経」
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上記の動画は3つ全て期間中ご覧になれます。
※自律神経セラピストBasicコースの概要や講座の内容につきましては、こちらからご確認ください。

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オンライン座学②

③-1「神経・筋膜の機能解剖」
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動画公開期間:7月26日〜9月26日まで。
上記の動画は3つ全て期間中ご覧になれます。

自律神経セラピストBasicコースの概要講座の内容につきましては、こちらからご確認ください。

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