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詩のようなもの

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#創作大賞2024

ある夏の朝

澄んだ路地

光がこぼれる高架下

誰かの咳の音

カーブミラーのやつれた顔

私の歩む草履がぺったんぺったん

何も知らない風の湿度

秋はすぐそこにあるみたい

貨物列車にそよぐ穂と

ゆうべを知らない鳩の子ら

喫茶店のナポリタン

毎日はいらないけれど、いつでも落ち着けるようなそんな人になりたかったの。

チープでわかりやすい、愛嬌のあるそんな人になれたらよかった。

自慢にはならないかもしれないけど、ふと思い出して帰りたくなるそんな愛され方できないかな。

別に、お高くとまったイタリアンなんかじゃないんだよ。

君が思ってるよりずっと、いい意味でも悪い意味でもきっと安い。

うちの店はこれ一本でやらせてもらってます。

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熟れた実

食べ頃のフルーツ
浮気な視線が果実に刺さる

熟れているの
食べ頃は人それぞれね
わたしって美味しそうでしょ?

瑞々しさも甘さも、見た目も
今だけ、今だけ。

どうか摘み取ってくださいな
あなたが摘んでくれるなら

どうせいつかは朽ちていく
うれのこってしまうもの

癖のあるフルーツ
食べ方にはコツがあるの

毒があるわ気をつけて
熟れ切るまでがいちばん美味しい
あなただけにこっそり教えてあげる

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6号艇

昨夜の夢に覚めるギリ午前
ボートレースを見ているの

2Rスタートまだ眠たいわ
ルールはしらないこれだけは

まさぐる指先これにはルールはないのよ

夢が覚めたら11R
転覆したら失格らしいわ

寒いキッチン煙越しに背中とテレビを眺めてる

内枠有利か逆転劇がないなんて
つまらないわ、つまらないわ

もう1レース雨が止んだらここを出よう
ここも外も冷えきってる

ゆらゆらゆらゆら
ゆらゆらゆらゆら

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革命

古い熱がまだこの胸を焦がすのに
あなたは前を向いて笑ってるわ
私にはもうどうしようもないけど狐につままれた夢の途中

この傷はあなたの愛のしるしだったから今でも痛いくていいの
後生大事にこの傷を飼ってるわ

弔いと祈りは似ているのかもしれないね

「私のすべてなの」そういえばもっと傷つきそうで言えないわ
望まれてない未来は人知れず流れていく

いつの時代も革命が起こってる
全てをかけてひっくり返し

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赤線の女

視線で放った赤いバラ
思わせぶりな立ちんぼ
お兄さんわたしといいことしようよ

赤い口紅白い頬
ミニスカートの若い小娘

寂しいんだね
ここは昭和か元禄か
今宵はわっちとあそびましょう

ブラウン管で笑うアイドル
わたしの素肌は透けている
主様、わっちを見てちょうだい

8畳一間に煎餅布団
ここは赤く囲まれて
わっちは場末のひとでありんす

それでも期待に添えるなら
望まれなくても叶えましょう

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