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過去を捨てた女達3 男女の価値観

再婚すれば幸せになる。それはやはり幻想に近いのかもしれない。

でも、不幸せではない。では、なんなのか。

互いの価値観の違いの認識なのかもしれない。
1回目の結婚は、自分の価値観を知る為のものだ。
2回目の結婚は、他人の価値観を理解することだ。価値観の違いは、決して悪い事ではないのだ。

聡美は改めてその事を認識した。それまでは、何で自分をわかってくれないのかばかりを相手に求めていたので、喧嘩が絶えなかった。2回目だからこそ、幸せにと思うからこそなのか。
夫の直樹もやはり2回目の結婚にどこかお互いの理想を重ねていたのかもしれない。

聡美は、人が変われば自分の価値観を理解してくれていると思っていた。

人が変わっても、自分が持っている価値観が大きく、固定化する。自分のワールドに、他人のワールドの許容が難しくなるのだ。

それは男も女も同じである。そして、好きだからこそ、自分のワールドに取り込みたくなる習性があり、衝突する。

全く違う世界で生きている。
そう理解して接したほうが、はるかに楽な事を、何回も喧嘩して傷ついた後に理解する。

別れるか別れないかは、相手のワールドを理解し、一つでも共有するワールドがあるかないか。いや無くても、理解できれば、それはそれなりに長く続くかもしれない。理解というより、認識にちかい。あくまでも妥協ではない。

どちらかがとりこもうとするとそれは支配になり、どちらかがその支配に従うと、それは共依存になる。それはお互い1回目の結婚で嫌というほど味わったからだ。
いわば、本来なら同志に近い。

なのに結婚をすると、お互いの理想の夫像や妻像があり、それをお互いに嵌め込もうとする。

でも、相手に合わせてそこを頑張ろとすると破綻するのは、1回目で学習している。

だから、2回目は、お互いの自己主張が強くなる。
私は私
俺は俺

その争いから、先に抜けだしたのは、聡美だった。理想の結婚や理想の夫は、もう諦めよう。
直樹は、直樹で、はるかに自分の理想とはかけ離れる。でも、再婚したのは、好きだから。
喧嘩しても嫌いにはなれなかった。
それが聡美が出した答えだった。

1回目の結婚は、そこのシンプルな所が若さ故に欠落をしていた。好きではないのに、結婚を継続してしまったからだ。だから、嫌いな理由がたくさん出てくる。

直樹の場合も、嫌いな所はたくさん出てきた。
好きな理由は、曖昧な理由が多い。
笑顔や安心感などぐらいしかででこない。

でも、別れの選択はない。
何故ならば、お互い一人の時間を、お互いに持つ事を意識し、結婚という固定概念を外したからだ。

今日は、聡美の一人の時間を満喫している。
オシャレをして、お酒を飲む。
それができるようになったのは、2回目の結婚も決して悪いものではない。

直樹ありがとね。

聡美はそう心の中で、夫に感謝しながら、
目の前にあるシャンパンを飲み干した。
そして、空になったバーテンダーに差し出し、おかわりを催促した。

グラスに注がれるシャンパンの液体を眺めながら、聡美は、第二の人生を楽しんでいることを
ようやく感じられてたのかもしれない。
シャンパンを飲みながら、聡美は改めて1人の楽しさを味わっていた。

黒猫は、毛繕いをしていた。
目の前を二匹の猫達が通りすぎていた。
一瞬自分が追いかけた雄猫に似た雰囲気の猫だったせいか、毛繕いをやめ、二匹の猫をそっと見つめていたが、黒猫は、ふとまた目をそらし、自分の毛繕いを始めた。

それはまるで、聡子がシャンパンを1人で味わう幸福と同じように、黒猫も毛繕いの幸福を味わっていた。

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