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part.1 第3回全国ヨーグルトサミットinいわてが繋ぐ絆とレガシー 

はじめに


第3回全国ヨーグルトサミットinいわてを振り返り、「全国ヨーグルトマルシェに多くの方が訪れた」「シンポジウムの内容が素晴らしかった」「ヨーグル党総選挙が最終的に総票数17,232票と全国的に盛り上がった」と多くの方が賞賛してくれた。

しかし、私はこのまま美談だけで終わらせてはならないと思う。

なぜなら、ここに至るまで事業に携わってきた方々は、酸いも甘いも共有できたからこそ語れる、2年以上ものストーリーがある。

表向きの部分では、2022年1月に見事幕を閉じた岩手でのサミット。
その裏側、背景について、私から見た本当のストーリーをここに記すこととする。


ヨーグルトサミットの起源 小美玉市

ヨーグルトサミットを語るうえで、絶対に欠かせないのが茨城県にある小美玉(おみたま)市だ。
小美玉市は 「平成の大合併」という大規模な動きがあった平成18年、「小川町」「美野里町」「玉里村」が合併。

頭1文字である小・美・玉をとり小美玉市となった。
当時、ヨーグルトサミットin小美玉を開催するに至った経緯を、発起人である小美玉市役所の中本正樹氏に伺った。

中本正樹氏:中本氏Facebookより

小美玉市は「ダイヤモンドシティ・プロジェクト」を旗印とし、市が取り組む壮大なプロジェクトに乗り出していた。
一人ひとりの可能性はダイヤの原石であり、ダイヤの原石はダイヤでないと磨けない、私たち一人ひとりがダイヤになろう。
つまり、地域の魅力や誇りは何か?を互いに研磨し磨き上げていこうということである。
言わば、意識・知識・モチベーションの向上を図り、市民1人1人の底上げをしていこうということだ。
マーケティングの中でもPDCAサイクルと良く言われているが、この構想は正にそれとリンクしている。

そんな中、地域の魅力を発信していく媒体は何か?小美玉市は鶏卵産出額が全国1位。
「たまごサミット」や「プリンサミット」、当時はこういったことを考えていたかもしれない。
しかしながら、二番煎じや通年通して消費者に訴えていくには何かが足りない。
小美玉が誇るべきツールは何か?
そう考えたとき、1次産業である酪農があった。実は、小美玉市は都府県の中でも有数の酪農地帯で、茨城県の中でも1番の酪農地帯なのである。
だとすれば、「牛乳サミット」か?

牛乳サミットは難しい

実は、ご当地牛乳を全国に流通させることは非常に難しい。

通常スーパーなどで販売している牛乳の大半はUHTと言われる超高温殺菌牛乳である。
UHTは120℃から130℃を2~3秒で殺菌する。
UHT牛乳の魅力は何と言っても保持期間である。
一般のご家庭にて安心して長期間召し上がっていただける商品だ。

一方で、ご当地のメーカーの牛乳の大半は63℃・65℃・72℃・75℃・85℃などの低い温度で時間をかけて殺菌をする。

この殺菌製法の最大の魅力は「生乳本来の味わいを損なわないこと」

生乳とは、牛から乳を搾ったままのもの。
殺菌処理をして、初めて一般の市場に並ぶ。

つまり、酪農家さんが丹精込めて搾った「生乳(せいにゅう)」を安心・安全で美味しく召し上がっていただく上で最大限活かした方法なのだ。
UHT牛乳は「焼き魚」、上記の殺菌製法は「カツオのたたき」。
生ではないが、半生で美味しいところをしっかり残す殺菌方法なのである。

しかし、ご当地メーカーが処理する殺菌方法には欠点がある。
賞味期限が短いのだ。こういった牛乳の保持期間は1週間前後。
一般の流通に合わせるとなると、スーパーに並んだ時点で3日~4日しか持たない。
一般のスーパーは基本とし、賞味3日前になると値引きシールが貼られる。
これらの殺菌方法で処理される牛乳は地産地消がメインとなり、全国的なサミットを開催したとして、その先の未来へは繋がらない。

サミット誕生の時

他にはないか。。。
ここには、小美玉市の皆様の相当な試行錯誤があったと思う。
普段から一般家庭にて当たり前のように食卓で並ぶもので牛乳以外の乳製品。
小美玉市では平成26年、乳製品を推進すべく「乳製品で乾杯」という条例が施行された。

「乳製品で乾杯」条例:小美玉市ふるさと納税より

是が非でもここに繋げたい。そう思っていたに違いない。
ここから語るうえで、欠かせないのが二次産業の存在だ。

伝えていくには1次・2次・3次の連携が必要で、どの部分にもこだわりやストーリーが詰まっている。
この中の1つでも失ってしまっては地域の誇りを発信することはできない。
しかし、小美玉市には誇るべきメーカーがある。
2021年に30周年を迎える「小美玉ふるさと食品公社」

小美玉ふるさと食品公社の生乳は「小美玉市産」。
そうだ、これだ。これしかない!!
「ヨーグルトサミット」だ。
おそらくそう思ったに違いない。

そして、これが第3回まで続く2022年岩手開催までに至った起源だと推測する。

では、どうすれば社会に魅力を訴求することが出来るだろう?
小美玉では、全国的な認知と発信を繋げていくにあたり、以下のヨーグルトサミット共同宣言を掲げた。

1.人々に潤いと健康を提供。常に良質な生乳・ヨーグルトを提供
2.健康志向・多様な嗜好に対応。ヨーグルトの価値と地位向上
3.酪農後継者の育成と様々な課題に連携して取り組む
4.互いの取組みを補完するとともに、情報発信・販路拡大に努める
5.地域経済やまちづくりの活性化、ヨーグルトツーリズムを推進

この宣言を軸として、小美玉では自治体・乳業メーカー・酪農家が連携し、共に肩を組み、8つのチームを編成しミッションを掲げ発足したのだ。

1次・2次・3次が連動した素晴らしいモデルケースだ。

新鮮な資源(生乳)を最大限活かした製品を誇りをもって製造しているメーカーはいるはず。
そして、それを支持する自治体や乳業メーカーは少なくないはず。
こういった共通の思い、つまり同じ志を持った全国の地方乳業メーカーと共に創り上げていくことで、社会に訴えられるのではないか?

そういった想いから一念発起し、小美玉自治体職員たちの全国行脚の奔走がはじまったである。


小林とヨーグルトサミットの出会い

あれは今でも忘れない、2017年12月。
私の地元である、岩手県西和賀(にしわが)町は全国でも有数の豪雪地帯。

西和賀町から事前に資料を拝見した当初は、半信半疑だったことを覚えている。
その日はTHE西和賀と言っても過言ではない猛吹雪の日だった。

西和賀町訪問:小美玉市提供

そんなことをものともせずにやってきた小美玉市役所の職員。
後日談だが、中本氏の上司にあたる方だったという。
お会いする以前とは裏腹。
当時見せられた資料内容の説明に、入社以来初めて心が湧きたった記憶がある。
まさに青天の霹靂。

小美玉市役所職員の方々は、西和賀の雪を溶かすほどの熱量。
共に歩んでいくことへの熱意がそこにはあった。

すぐさま会社にこの思いと熱量を伝えなければ。
私自身、そこまで自分自身の想いを伝えることが上手ではない。
どちらかと言えば引っ込み思案で、多数決の多い方に同調する日和見菌のような弱い性格だった。
今を知る人物からすると、「噓でしょ!」と言われそうだが、これは事実。このサミットの内容だけは絶対に繋げたい、我を押し通してでも参加したい。
はじめは半信半疑であった周りも、少なくではあったが同調するメンバーがいてくれたおかげで、何とか2018年10月開催にこじつけたのである。


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