短編小説「のっぺらぼう」(諸橋隼人)
ついに追い詰めた。
ネットで匿名の誹謗中傷を繰り返していた犯人・梶山(かじやま)は今、このネットカフェに潜伏している。
身分証を偽装し、徹底した匿名性を確保してまで、なぜ誹謗中傷などを繰り返したのか。
昔気質の警部・綿貫(わたぬき)には到底理解できない。
そんなことは、これからたっぷり、本人の口から語らせればいい。
人気アイドルを死に追いやった「顔のない男」はもう、目の前に迫っているのだ。
被害者であるアイドルは、綿貫の娘・小春と同じ、16歳の女の子である。
希望にあふれた彼