連載小説「遥か旅せよ」 第3回『なぜかしら』(白木 朋子)
ホテルの食堂で朝食を終え、デザートのライチの皮を剥いていると、隣のテーブルに座る白人の老婦人に声を掛けられた。私のこの街の滞在は最終日を迎えていた。
「学生さん?」
「いいえ、そう見えますか?」
「私より若いということは分かるわ」
婦人は食後のコーヒーを飲みながらいたずらっぽく笑った。彼女の英語にはどこかの訛りがあるようだった。
「お一人?」
「はい」と私は答えた。そして次に、自分でも驚くような話が飛び出した。
「元々は恋人が一緒だったんですけど、逃げられたので」
「まあ