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グレーな親友(まころも)

「グレーな親友」

親友っていますか?

私は居ます。パッと頭に浮かぶ3人。向こうがどう思っているかは知らないけど。

3人共に中学の同級生。会わなくても心通ってる(と勝手に思っている)大切な人たち。


【ミーコ】
1人目は、出席番号が1番だった私の後ろの席に居た“2番ちゃん”。名前はミーコ。
入学式当日。誰も知り合いが居なかったので(とりあえず後ろの席の子と喋るか…)と、後ろを向いて話しかけた。
目が合うと顔が握りこぶしくらいの大きさで「新人類だ!」と思った。
喋るとおっとりとしていて人当たりが良くて、ずっとニコニコしててすぐに好きになった。
彼女と仲良くなりたい。なんとなくだけど、大人になっても関係が続くんだろなと直感した。直感は当たった。


【リサ】
そして、2人目は2番ちゃんの後ろの席の出席番号“3番目ちゃん”リサ。
彼女とは中学から高校と同じ部活で過ごした。
私は勝手に(クラスでモーニング娘。作るならうちらが辻加護だな。)と思っていた。自意識の塊である。
彼女は、芯が強くてとにかくいつも“自分”を貫いていた。学生時代のほとんどが反抗期で親や先生、あらゆる大人たちに常に反発していた。
先生からは“ちびっこギャング”なんて言われてた。でも、どこか弱く見えるところもあって隠し切れていなくてそこが可愛かった。


【ヨウ】
3人目は、2年生の時に同じクラスになったヨウ。と言っても、私の通っていた中学は2クラスしかなかったので顔は知っていた。
可愛らしい見た目からは想像つかないようなド下ネタを平気な顔して話す彼女と最初は距離を置いていたけど、お互いRIP SLYMEが好きという共通点があり、そこからめちゃくちゃ仲良くなった。ライブにもたくさん行った。かなり青春した。
昼ドラを地で行くようなドラマチックな人生を歩んでいる彼女を心配しながらもどこか羨ましく思ったりもした。


以上、私の3人の親友たちでした。


…嘘だ!!!

本当は、4人目が居る。いや、居た。
と、過去形にした方がいいのかな。


【ユウキ】
成績は常に学年トップ。
バスケ部のキャプテン。
友達も多くてクラスの人気者。優等生だ。

ちなみに、私は成績は下から数えたほうが早い。し、これといってユウキと共通点があるわけでもない。

それなのに、なんで親友だなんて言ってるかって?

ユウキとは、“毎朝15分間の通学路を共にする”という濃密な時間を6年間過ごしたのだ。

一緒に行こうなんて約束したわけじゃないけど、毎朝、改札口で待ち合わせて学校へ歩いた。

朝だからお互いテンションも高くなくぼそぼそと話す。
クラスでの出来事や恋の話、先生の悪口、部活の悩み、家のことや好きな芸能人の話、将来の夢…。本当に色んなことを話した。


そういえば、露出狂を初めて見たのもユウキと一緒だった時だ。

いつもと違う通学路にしたらソイツは居た。あまりにも街の風景と合っていなくて怖くて逃げるとかではなく、ユウキと目を合わせながらソイツの前をゆっくりと歩いたのを覚えている。

え?今の下履いてた?や、履いてなくね?だよね。
これって先生とかに報告するの?え、だるくね。だね。

こんな風にいつもテンション低めだった。

うちら親友だよね!?
なんて確認はしていないけど、私はユウキを大切に思っていたし、ユウキも私を大切に思ってくれていたはず。

ユウキは、私と居るとき勉強の話を一切しなかったし、私もユウキが成績トップとかどうでも良いと思っていたので(おい)、朝の通学路は優等生で居なくて良い時間だったんだと思う。


高校を卒業してからもよく遊んだ。
ミーコ、リサ、ヨウもユウキと共通の友だちだ。私たちは暇さえあれば集まっていた。


ユウキは専門学校へ行った。

先生たちからは、せっかく成績が良いのだからレベルの高い四年制大学を受けなさいと言われていたけど、将来の夢のために専門学校へ行くとユウキの意思は固かった。

専門学校は楽しいと言っていた。充実していると。


お酒も楽しめるようになってきた。

ユウキはいつもウーロンハイを飲んでいた。
甘いお酒が好きだった私は「それ、美味しいの?」と聞いた。

ユウキは「コスパがいいじゃん」と言った。

コ、コスパ??よく分からないけどカッケェと思った。

その頃からユウキがなにやら私たちの知らない怪しい人たちとつるんでいると噂が流れた。

マルチ商法?ネズミ講?
今となっては何をしていたのか分からないが、一度流れた噂は止まらなかった。

そして、多分、何かしらグレーなことに関わっていたのは確かだ。

ユウキに「こんな噂聞いたよ。ほんと?」って聞けば良かったかもしれないけど、怖かった。

私もグレーにしたまま過ごした。

実際に、何人かの友人はユウキに怪しい人たちを紹介されたり、パーティーに誘われたり、商品を勧められたりしたらしい。ん〜、ブラックだ!

でも、私にはグレーなユウキのままだった。
私はブラックを見てないから大丈夫と安心していた。

ある日、ユウキとの関係があっさりと終わった。

結婚式の招待を断られたのだ。

これは本当にショックだった。

ミーコ達もユウキが欠席することにとても驚いていたし、人が変わってしまったと嘆いていた。落ち込んでいた私に気にすることないよと慰めてくれた。


欠席の理由もとても曖昧なものだった。

曖昧すぎてハッキリと覚えていないのだが、「お互い高みを目指して、そこでいつかまた会おう」的な締め方だった。

ワンピースかよ。全く意味が分からない。

それからユウキとは会っていない。

ユウキは、同窓会や結婚式などのイベントに顔を出さなくなった。

会わなくなってから7年。

今どこで暮らしているのかも分からない。
今なら聞けなかったこと全部聞けそうなんだけどな。

会いたいな。元気かな。何してるんだろう。

でも、やっぱり、会うべきじゃないのかな。

もし、ユウキの心の中に少しでも通学路の想い出が残ってたら、それがキラキラしていたら、このまま会わなくてもいいのかも。

どこまでもグレーな親友のままで。

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