見出し画像

富士山自然図鑑⑩(ラジオ原稿)「富士山の岩石」※無料


こんにちは、富士山五合目図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズの岩崎です。
今日は富士山の「石」についてのお話です。
まず初めに、富士山の地面の色は?と聞かれたら何色を思い浮かべますか?富士山に登ったことがある人の多くは「黒」と答えるでしょう。そうです、富士山の地面のほとんどは灰色~黒色をしています。この黒っぽい色を形成しているのは玄武岩と呼ばれる溶岩で、つまり噴火によって噴出したマグマが固まってできた石です。

斜長石を多く含む玄武岩

火山の下には「マグマだまり」と呼ばれる文字通りマグマが溜まっている場所があります。富士山は他の火山に比べてこのマグマだまりが地中深い位置にあるため、安定的にその温度が高く保たれ、玄武岩になりやすいと考えられています。難しいことはさておき、富士山は北麓の一部を除き、この黒っぽい玄武岩で覆われています。

古い溶岩が新しいマグマに取り込まれたゼノリス(捕獲岩)

しかしだ!一見、単調な玄武岩だらけに見えますが、噴火の条件によって玄武岩も様々。キラキラ光る透明な石が散りばめられていたり、黄緑色に輝く宝石のような石が入っていたり、よく見ると黒光りしたつぶつぶがいっぱいあったりと、様々な表情を見せてくれます。特におすすめは黄緑色に輝く橄欖石。大きく結晶化したものは8月の誕生石ペリドットとしても有名です。玄武岩は火山岩といってマグマが地上に噴き出して急激に固まった石なので、これらの小さな石が、大きく結晶化することはありませんが、たまに巨斑晶というやや大きな塊を見つけることがあります。ルーペで観察すると宝石の原石そのもののように見えてちょっとエキサイティングな体験ができます。

「橄欖石(かんらんせき)」の巨斑晶

そのほかにも、噴火の際に上昇するマグマが地中深くの地層を砕き、弾き飛ばされて地上に出てきた斑レイ岩と呼ばれる美しい石、富士山の基礎を作った二十数万年前の安山岩と呼ばれる石など、ロマンあふれるストーリーをもった石たちがそこかしこに見つかります。

地中深くから弾き飛ばされた深成岩の一種「斑レイ岩」

実は、石にはそれができた時代・場所の地球磁場の情報が記録されており、これを分析することで噴火をはじめとする富士山の謎が解き明かされるのです。まさに石は地球の記憶なのです。
ちょっとマニアックな富士山の楽しみ方ではありますが、石を見るためだけに富士山に行ってみるのも面白いですよ。ハマると1~2時間なんてあっと言う間です。
それでは、今日はこの辺で。富士山ネイチャーツアーズの岩崎でした。

YOUTUBEもチャンネル登録お願いいたします!

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?