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形式に沿って進める時の注意点

先日、以前松下電器グループ(現パナソニック)で活躍されていた方(Aさん)とお話する機会がありました。Aさんと朝礼の話題になったのですが、そのお話が示唆的でした。

朝礼を行っている会社も多いことと思います。朝礼で、経営理念や行動規範を唱和することに取り組んでいる会社も多いでしょう。Aさんによると、朝礼で経営理念や行動規範を唱和する慣習を広めたのが、松下電器だということ(意図的にではなく、結果的に広まった)でした。

そして、Aさんが言うには「多くの企業が朝礼で経営理念や行動規範を唱和しているが、個人的な意見としてはまったく意味がないと思う。お題目を唱える程度の時間にしかなっていなくて、意味など誰も考えてないだろう。なんとなく唱和して自己満足しているだけ。」ということです。私もいろいろな会社の朝礼を見たことがありますが、確かに思い当たるところがあります。

お話によると、朝礼等で経営理念や行動規範を唱和することが意味を持ちえたのは、創業者である松下幸之助氏の影響がやはり大きかったとのことです。「幸之助氏の自宅では、家訓が掲げられていて、家族の皆が家訓に沿って行動していた。そういうスピリットの持ち主であり、かつ創業者でもある幸之助氏が先頭に立って音頭をとってやるからこそ、理念の唱和は意味を持ち得た。形だけ真似してもまったく意味を持たないだろう。」というわけです。

さらには、「幸之助氏に限らず、当時の松下電器の社員からは、経営理念が会話の中で出てくることが多かった。例えば、「うちの理念に照らし合わせるて考えると」という言葉が、様々な会議体で意見を発する社員から聞こえてくる。経営者が音頭をとりながら、日常の組織活動と紐づけて考える機会があるからこそ、理念の唱和は意味を成すものではないか。」ということです。

このお話を聞いて感じたのは、「正しい型が必要」ということです。

経営や組織活動では、型から入るのが大事だと言われます。もっと典型的なのがスポーツでしょう。ラケットやバットの振り方など、型に沿って素振りを繰り返してこそ、まともに打てるようになります。型を身に着ける前にオリジナリティを追求しようといきなり自由な振り方をしても、うまくいかないでしょう。一流プレイヤーは、型をしっかり体得し、誰よりも型の本質を理解した上で、より自分の可能性を引き出すことを目指して、その型を破るはずです。

経営や組織活動においても、まずは型から入るのがやはり王道です。思い付きでマーケティング会議をするのではなく、4Pなどマーケティングの型を理解した上で、そのフレームに沿って議論するのか、敢えてそのフレームから離れて議論するのか、でしょう。その観点では、「まずルールに沿って朝礼で唱和する」という型から入り、唱和を繰り返していくうちに理念が理解できるようになるというのも、本質的だとは思います。

ただし、型は正しい型でないと意味がありません。間違った振り方で素振りを何万回繰り返しても、うまくいかないでしょう。それと同じで、お題目の唱え方で理念を唱和する機会を毎朝つくるだけでは、身につくものは何もないのだろうと思います。Aさんの話も参考にし、例えば、定例の部門会議等で「何かの課題を、理念と照らし合わせて議論し考える」などの機会を並行してつくる、誰が見てもその事業所内で会社のことを最も理解していると評価できる人が朝の理念唱和を担当するなど、その会社なりに意味のある型を見出す必要があるのだと思います。

広く一般的に行われていること、いいとされていることを自組織や自身に取り入れて実行する。有意義なことですが、「単に形式だけ取り入れて自己満足していないか」を振り返ってみるべきだと、Aさんのお話を聞いて感じました。

<まとめ>
今取り入れている型が正しいものかどうかを考えた上で、継続する


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