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間接部門への異動(2)

前回のコラムでは、総務部門に異動となるAさんへ、社内の組織・社員に対してマーケティングの視点で総務部業務に取り組んでみてはどうかと私がお伝えしたという話を取り上げました。
https://note.com/fujimotomasao/n/n4af376428697

前回のコラムの末尾で、下記の問題を投げかけました(再掲)。

<問題(設問)>
データセンター事業等を展開する企業(いわゆるIT関連企業)での事例。同社では中途採用のIT技術者を多数抱えるが、まとまった休みがとりにくく、働きやすい環境とも言えないため採用後の離職も多かった。外部環境的にも、優秀なIT技術者は各社で取り合う状況でもある。

しかし、同社ではある福利厚生施策を発案し実行したことによって、IT技術者社員の働く意欲が劇的に向上し定着率も大幅に改善した。
あなたなら、金銭的報酬以外のどんな方法(福利厚生施策)でIT技術者の働く意欲を高めますか?

この問題への解答は、「入社日から1カ月間の有給休暇の権利を与える」です。

これは、IDCフロンティアという会社が、以前取り組んでいた施策の事例です。
「フルチャージ入社制度」という制度を作って、中途採用が決まった人が入社日からいきなり最長で1カ月の有給休暇を取れるようにした制度です。加えて、(上記の設問からは金銭的報酬という要素を除外しましたが、正確には)入社祝い金制度として試用期間満了後に祝い金として100万円を支給するということも行ったようです。

フルチャージ=「まとまった休みが取りにくいIT技術者に、入社を機に休んでもらいたい。充電してもらいたい。」という、趣旨だったようです。

その結果、下記のような効果が、相当程度あったと聞いたことがあります。
・人材紹介を経由しない転職希望者からの直接応募が増えた。
いきなり1か月も有給で休めることが話題となり、IT技術者がHPを探して直接応募するようになった。

・この制度を利用した入社者の働く意欲が高まった。
「こんなに自分が疲れていることに改めて気づいた」「自分の仕事・次の会社(同社)に対する想いを新たにできた」と好評だったそうです。

・定着率が高まった。
いきなり休めたわけですから、すぐに再転職などはしにくいものです。何年間かは働いて、「入社時の1か月の有給分は、もう十分恩返しできたかな」と最低限思えるまでは、やめづらいでしょう。

直接応募が増えれば、人材紹介会社に払っていた手数料や広告費等のコストは減りますし、定着率が高まればなおさら採用コストは減ります。それで、社員もより幸せになれる。1か月休暇にする人件費数十万円/人+祝い金百万円/人は、これだけの効果を考えれば安いものでしょう。つまりは、「休み」が採用コスト減、パフォーマンス向上、定着率向上の労使WIN-WINをもたらしたというわけです。

社員=IT技術者を顧客と見立てて、「顧客の潜在的なニーズを察知し、それに応える商品・サービスを提供することで、買う側・売る側のWIN-WINを実現する」というマーケティングが、社内にも使える一例だと思います。このように考えると、間接部門の仕事も営業同様マーケティングの面白さがあるものだと思います。こうしたマーケティングの視点が機能した人材マネジメントを、(偶発的ではない)「戦略的な人材マネジメント」と呼ぶのだと言えるでしょう。

Aさんには、「ぜひ、営業で培われた顧客目線を、今度は社員に対して発揮されるとよいと思う。とはいえ、上記のような奇抜なソリューションは、いきなり思いつくものでもない。まずは、総務部の全体像・業務の流れを把握するところから始めることでよいと思う。」とメッセージをお送りしました。

余談ですが、「間接部門」の漢字を文字変換しようとして、「関節」と出てきてしまいました。しかし、総務部門等について「関節部門」という見方をしてみるのも、あながち的外れでない気がしました。関節について、辞書では「骨と骨とを連接させる可動性の結合部。周囲を結合組織の膜が包み、内側には滑液が入っていて潤滑油の役をする。」などと説明されています。まさに、間接部門の役割のひとつが、会社の各組織や人材という骨と骨を結合させ、組織の目的実現のために潤滑油となるイメージでもあると思います。

<本日の一言>
間接部門は、社内の組織・社員に対してマーケティングの視点で臨むべきである。

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2.編集後記
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昨日は、所属先の会社内で勉強会に参加した後、午後からクライアント企業様内で「ストレングスファインダー」を活用した幹部向けストレングスコーチングの実施でした。幹部の相互理解、チームビルディングが促されたようで、さらによいチームになる兆しが確認できました。

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藤本 正雄  Masao Fujimoto

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