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社員等級昇格者に求めること

先日、ある企業様の社員等級昇格審査に関わる機会がありました。同社様では、事業戦略の見直しに伴う人事戦略の転換を進めていて、それに伴って人事制度も改修を進めてきました。

同社様の人事制度改修にはポイントがいくつかあり、その中のひとつが等級昇格審査の一新でした。以前は、標準的な評価結果を一定年数蓄積していた社員は、ほぼ自動的に等級昇格をしていました。いわゆる、年功的な等級制度運用です。そのあり方が今後の人事戦略に合わないという判断で、運用を見直すことになったわけです。

等級昇格審査では、これまで上げてきた具体的な成果と会社に対する具体的な提案・提言のプレゼンを求めることに変えました。同社様の方針としては、そのプレゼンで、「伝え方」と「当事者意識」の2つの要素が感じられるかを、下記の理由から特に重視しているそうです。

伝え方:
オンラインを介してのコミュニケーションが全盛となっている環境下で、今後ますます重要になるスキルであるから。これまでの自社の事業活動では、「自ら情報発信する」「自分を上手に見せる」といったことを意識する機会はそれほどなかった。しかし、これからは社内外に対してそれでは通用しなくなる。オンライン・対面の様々なツールを駆使して、自ら情報発信し、自社事業の魅力を訴えていかなければならない。その準備が感じられる人を昇格させる。

当事者意識:
会社に対する提案・提言において、「主語」が自分になっているかどうかが重要である。自分を主人公とした提案・提言ができていることを求める。主語になっていない=自分が実行に関わっていかないことを前提としているような提案、すなわち会社への期待や評論に終始している内容や、質問をしても具体性がなく抽象的な回答しか得られないようなプレゼンでは、昇格に相応しいとは言えない。これからの組織や事業を自らつくっていく気概がないと、会社はもたない。その準備が感じられる人を昇格させる。

同社様は、受注生産型のビジネスモデルであり、取引先からの評価も高いため、これまで安定した受注量を実現してきました。そこには、「自ら発信する」「当事者意識を伴った提案をする」というマインドや行動を、それほど持ち合わせてなくてもやってくることができた面があります。それらの前提も、技術の動向による環境変化とコロナ禍による変化の加速によって、大きく変わろうとしています。受注生産型であっても他社でよい供給先が見つかれば、発注元が無条件に自社に発注し続けるとは限りません。それ以前に、受注生産している事業自体が飛んでしまう可能性もあります。

環境変化に適応するには、仕事への意識もやり方も変える必要があります。変えるべきことのポイントを大きく、「伝え方」と「当事者意識」の2つに集約したわけです。とても的確でわかりやすい方針だと思います。

実際に、この等級昇格審査へ移行してから明らかに、各社員の仕事への向き合い方で良い変化が見て取れるようになったそうです。昇格の基準=評価のルールは、会社から社員に対するメッセージのひとつです。ルールが変わるということは、メッセージが変わるということです。有効に使えば、それなりに効力を発揮することが、同事例からも見受けられます。

「伝え方」「当事者意識」は、これからの組織運営を考える上で、どの企業にとってもキーワードになるのではないでしょうか。同社様の事例もひとつの参考になると思います。

<まとめ>
審査基準というルールの変更は、行動変容を促すメッセージになる。


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