マガジンのカバー画像

生活すること

159
生きるって何だろう?それは生活することなのではないだろうか────30才で伊東市にある海の街へ移住して感じたことを書いています。
運営しているクリエイター

#海のある暮らし

南へ降りてゆくと

南へ降りてゆくと

下田へブルースのライブを聴きに行くことになった。壺中天の本と珈琲の舘野さんと、3年前に伊豆へ移住してきた方との3人で車に乗り合わせて向かう。私は熱海方面よりも下田方面の方が好きで、よく遊びに行っている。熱海から南へ下ると伊豆独特の空気が漂い始めるのだけど、伊豆高原からさらに南へ下ると、空気が丸みを帯びてまろやかになり、さらに南国の雰囲気が強くなる。熱海に移住したとある人は物足りなさを感じて、さらに

もっとみる
心地いいを見つけていくこと

心地いいを見つけていくこと

東京から帰ってきて、まず最初に気にするのが観葉植物たちだ。毎日水をあげなくてもいいものだけれど、最近は暑くなってきたから干からびていないか心配だった。でも全く元気そうな様子で一安心し、風通しをよくするために窓を開けた。風で葉っぱが揺れて、なんだか気持ちよさそう。見ているだけで心が安らぐ。

骨董市で買った秤を包み紙から出した。1500円だったのをさらにおまけしてもらって1000円に。ずっと秤がほし

もっとみる
出会いの線引きをしない

出会いの線引きをしない

朝、観葉植物のお世話をする。土の渇きを見て水をあげたり、葉水をしたりするのが毎朝の日課だ。私にとってはペットのような、子供のようなものかもしれない。最近植物の数が増えたから、気を使う量も増えた。それぞれの土が乾くペースも、必要な日照時間も違う。初めて迎えたパキラが枯れてしまった時は本当に悲しかった。植物たちと会話をしながら、今日の体調を教えてもらう。

それから海へとクロスバイクを走らせた。夏が近

もっとみる
私の海

私の海

今日は海岸の浜辺で文章を書いている。今朝はあまり穏やかな気持ちではなかったから、一通り作業を終わらせて海へ来た。そういう日はよくあるけれど、この街が私の心の補助をしてくれている。薬も本来ならば効果があるとされる量の半分で済んでいるのは、この街の存在がとても大きい。海の香り、風が肌に当たる感覚、山に生い茂る緑の色、空の透明度、鳥の鳴き声、太陽の温度、人々の会話。全てが一瞬で通り過ぎているようでも、そ

もっとみる
買えない幸せ

買えない幸せ

朝の5時半頃にふと目が覚める。日が昇り、障子に光が当たって部屋が明るくなり始めていた。以前よりも日の出が早くなってきている。寝ていても、瞼越しに朝日を感じられる人間の体はよくできている。いつもならここで二度寝するのだけれど、前日は絶不調で一日中寝ていたから起きることにした。街はまだ寝静まり、鳥たちと私だけが起きている。いや、近くの漁港は仕事の真っ最中か。この世界が始まる前みたいな時間が好き。本当は

もっとみる
作り続ける一日

作り続ける一日

朝起きると、昨日から降っていた雨は止んでいた。でも風がすごい。この街には、時たま台風みたいな強い風が吹く日がある。引っ越して初めてこの風を体験した時は、少し怖くて夜が眠れなかった。今はどんなに強風でも爆睡している。前日は雨で買い物に行けなかったから今日は行きたいのだけど、この風の中でクロスバイクを漕ぐと吹っ飛ばされてしまう。それくらいの強風。買い物のことは後で考えよう。いつものようにキッチンをデフ

もっとみる
落ち着く場所はいつもシンプル

落ち着く場所はいつもシンプル

一泊二日の東京だった。人の多さに「うわあ…早く帰りたい…」と着いた瞬間に思った。人混みへの耐性がどんどんなくなってきている。病院へ行って、現状報告や今後のことを話し、診療は毎回2分ほどで終わる。カップラーメンより短いこのやり取りに意味はあるのだろうか。医者は患者の話だけで判断して、薬を増やすか減らすかしかできない。結局は自分がどうしたいかだ。医者が診断しているようでも、その診断結果を選択しているの

もっとみる
幼馴染 -1-

幼馴染 -1-

幼馴染が私の街へ遊びに来た。小中共に同じ学校で過ごしたけれど、同じクラスになったのは小学5年生の一度きりで、高校からは別々の学校になったにも関わらず30歳になった今でも繋がりがある。むしろ学生時代にベタベタしない距離感がよかったのかもしれない。私がシンガーソングライターとして日本中を飛び回っている間に幼馴染は結婚して、子供ができて、神奈川へ引っ越した。その後私が東京へ引っ越したため、会うのは地元の

もっとみる
6割の美しさ

6割の美しさ

ここ3日間は少し調子が悪く、いつもよりゆっくり目に起きている。それでも私は3日前と変わらず、毎日大好きな作ることができている。以前までの私なら、少しでも調子が狂うと何もできなくなっていたと思う。全部の作業が止まってしまい、不毛な日々を過ごして、なんてダメなやつなんだ〜と虐げていた。でも今は虐げなくなったどころか、色んなことができている。それは身体が丈夫になったからでも、精神面が強くなったからでもな

もっとみる