6割の美しさ

ここ3日間は少し調子が悪く、いつもよりゆっくり目に起きている。それでも私は3日前と変わらず、毎日大好きな作ることができている。以前までの私なら、少しでも調子が狂うと何もできなくなっていたと思う。全部の作業が止まってしまい、不毛な日々を過ごして、なんてダメなやつなんだ〜と虐げていた。でも今は虐げなくなったどころか、色んなことができている。それは身体が丈夫になったからでも、精神面が強くなったからでもない。頑張らなくてもできることしかやっていないからだと思っている。

私が今やっていることは、全て躁鬱の鬱の時に始めたことばかりで、無理をすると躁になってしまうから、6割を維持するのを意識し続けた。最底辺の自分でもできることをやる。元気になってもやり過ぎない。できない時はすぐにやめて他のできることをやる。明日を跨ぐ計画を立てない。だから例えば自分のキャパシティが10だとして、調子を崩して7へ下がったとしても、6で生活している私にはまだ1の余裕が残っていることになる。では5に下がってしまった時はどうするのか。多分海岸へ行ってぼーっとするかな。これは私のキャパシティが1になってしまってもできることで、何があっても揺るがない土台になってくれている。2は温泉へ行くこと、3は簡単なご飯を作ることとかかな。1〜6の間に自分ができることをたくさん作っている。たまにちょっと本気を出してやってみることで、それは6のままでもできるようになったりする。

10分くらいで作るワンプレートランチ

もしも8〜10や、MAXを超えた12のエネルギーばかり使って毎日を過ごしていたら、6へ落ちた時の落差は大きい。今の私にとって10から6へ下がることは、変わりない日常を過ごせるから大した問題ではないけれど、いつも10で過ごして、10でできることしかなかった場合は、1下がってしまうだけでも一大事、死活問題だ。何でもMAXで使い続けていたら、消耗するのも、寿命を迎えるのも早い。すぐに充電が必要になるし、また満タンまで充電しなければならないから時間もかかる。でもそういう生き方もありだし、アーティストとしてはやっぱりそっちの方がカッコいいと思う。桜のように、一瞬物凄いエネルギーで華やかに輝き、一度にたくさんの人たちを魅了して散ってゆく。

今の私がやっていることはとても地味だ。6割でできることしかやっていないから、桜のようにパッと華やかに見えることはない。比べるものではないけれど、桜と干物とではやっぱり桜の方へ目が行く。でも今の私は一瞬だけ輝くことよりも、静かに灯し続ける方を選んだらしい。そしてその世界の魅力にどっぷりとハマっている。桜はすぐに皆んなが綺麗だと気がついてくれるから、私は6割の自分が見ている世界で、あまり気づかれていないものへスポットライトを当ててみたくなっている。高いところや有名なところ、分かりやすいところから景色を見てばかりだったから、今は名前も知らない公園のベンチに座って眺めたりしている。10割の私だったら、その景色を見てもなんとも思わなかっただろう。桜が咲いていたら綺麗だなと思うくらい。本当は小さなストーリーがたくさんあるのに、自分が10割のエネルギーでいると、同じか、もしくはそれ以上のエネルギーのものしか見えなくなる。見えていない景色がたくさんあったのだと、6割で生活するようになってから初めて気がついた。何もできなくなった自分が見つけた、静かで控えめな海はとても美しかった。それにMAXで輝いているものは数が少ない。ほとんどのものたちが静かに、ひっそりと日常の中で息づいている。そういったものは無数にある。その美しさをもっと見つけたくて、今日も名前も知らない公園のベンチに座り、なんてことない景色を眺めている。