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小説入れ

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#ショートショート

小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

「低気圧ぶっころす」と、私は目が覚めると同時に呟いた。 パジャマにしているパーカーのフー…

富士美 広
3年前
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小説:ぼくらの時代

すりガラスの向こうの景色のように、どうしてもうまく言葉にできない感覚がある。 なんかこう…

富士美 広
2年前
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小説 : アフリカの山羊座【2000字ジャスト】

「今朝あなたの星座最下位だったわよ」と、事務所のドアを開けるなり先輩が言った。 殺意とま…

富士美 広
2年前
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小説:絶つ鳥【2000字ジャスト】

階段を一段上るごとに、テキーラの匂いは強くなった。 できることなら胃の中のものをすべて吐…

富士美 広
2年前
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【小説】なし太【2000字ジャスト】

なし太は自分の名前が嫌いだった。 漢字で書けば果物の梨なのだけれど、瑞々しく生命力のある…

富士美 広
2年前
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【小説】花【2000字ジャスト】

時すでに私は発狂していた。 私はそう思うのだけれど、それは誰が決めるのだろう。 周囲が決め…

富士美 広
2年前
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【小説】私が夏になる【2000字ジャスト】

耳を塞ごうかと思ったけれど、よく考えてみればとくになにかの音がするわけではなかった。 止まらない汗、ファンデーションの滝、水分は補給したかな、えっいま私臭くないよね、帰りたい、気温何度だよ、隠す気のない丸出しの太陽、日焼けしたくない、帰ってシャワー浴びたい、ビール冷やしてたかな、帰りたい、はやく帰ってシャワー浴びて半裸でビール飲みたい、営業所に戻って伝票整理してるうちになんとなく涼しくなってしまいたくない、このイライラを保ったままアパートに帰って一気に発散させたい、帰りたい。

【小説】猫のけつの話【2000字ジャスト】

僕がいつものように縁側で天井の木目を数えていると、網戸の向こうから猫の鳴く声がした。 い…

富士美 広
2年前
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小説:クロムレイン 【2000字ジャスト】

夏が始まろうとしていたけれど、私はすでに夏の終わりのことを考えていた。 なぜなのかはわか…

富士美 広
2年前

小説:グリーングリーン

僕がまだ小学生だった頃、つまり四半世紀も前のことなのだけれど、実家のトイレは汲み取り式だ…

富士美 広
2年前
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小説:EMBERS

取調室は、映画やドラマで見ていたものとは随分様子が違った。 顔を強く照らすためのライトも…

富士美 広
2年前

小説:ラウンドアバウト・ミッドウェイ

パーカーのポケットに米が入っていた。 「は?」と思いながらも、なぜかそれを道端に捨てる気…

富士美 広
2年前
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小説:血の涙たちよ、いま踊れ

「こんな景色なんて」と呟いた僕は、忌々しく積もった雪にスコップを突き立てた。 必要以上に…

富士美 広
2年前
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小説:ファイアズ 【2000字ジャスト】

踊り場の大きな鏡には、一か所だけ歪んでいる部分があった。 誰かが、ガラスは液体だと言っていた気がする。 古い校舎の古い鏡だから、そんなこともあるのかな、と私は思った。 おそらくは誰も気にしていないし、もしかしたら気付いてもいない。 見上げないと見つけられない部分だし、誰も映ることのない部分だから、わざわざ気にする必要もないのだろう。 その歪みを見つけたのは偶然だった。 私は鎖骨のあたりに赤い痣がある。 シャツをずらさなければ見えないような場所だけれど、私は時々それが気になった