虚構の中で、どう虚構を生み出すか――町屋良平『ほんのこども』試論
『ほんのこども』への正直な感想は、非常に「わかりにくい」というものだ。もう少し言葉を選ぶなら技巧的な小説である。
小説家の保坂和志が本書の野間文芸新人賞の選評に次のように書いている。「『ほんのこども』だけは、問題が何なのか、小説に先んじてあるわけではなく、問題はとても錯綜していて私は説明できないが、とにかく、小説で考え、小説が考える。」「他の委員は、作品の理解に手を焼いたみたい」。ここからも、やはり解釈に苦戦を強いられていることがわかる。ちなみに言葉遣いのわかりにくさがある