見出し画像

震災文芸誌「ららほら2」座談会に(少しだけ)参加しました。

文芸評論家である藤田直哉さんが編集する震災文芸誌「ららほら2」が発売されました。

藤田さんは僕が大学生だったころから研究会で一緒に勉強をしていた先輩であり、文学に関する知識なども多々教わった一人です。

またその研究会で発行した『東日本大震災後文学論』はともに編著を行いました。

『東日本大震災後文学論』は研究会に参加していたメンバーたちが非常に四苦八苦しながら完成させたものです。それは推察される通り、3.11という社会的に大きな衝撃を与え、多くが「苦しみ」を伴った表現を持った作品を扱わなければならかったからです。僕自身も最後までどう論じていいかを試行錯誤していた記憶があります。

そんな震災からすでに10年以上経過し、今や目の前にある現実というレベルから遠い歴史になりはじめている感覚もあります。

『東日本大震災後文学論』を経て藤田直哉さんがクラウドファンディングで資金を集めて震災の言葉を集めた雑誌を作るということで編纂されたのが「ららほら」です。第一回目は当事者や評論家からの言葉を集め、一つにしたものが発刊されました。

そして今回の「ららほら2」は多くの名だたる文芸評論家たちと「震災後文学を語る」というコンセプトで作られています。また哲学カフェ・読書会的な形式で参加者とも対話していくという形式で行われ、その場に僕も参加していたという感じです。

本書の魅力はやはり現役の文芸評論家たちなので同時代の文学という水平的なものはもちろん、歴史の流れを踏まえた直線的な話も語られ、奥行き深く「震災後文学」とはどのようなものなのか、ということを知ることができるということです。

「震災後文学」は正直「暗い」です。だからやはり敬遠してしまうところがある。しかし、単純に「明るい」言葉で上塗りをするのではなく、一度立ち止まってそのような暗さに一度耳を傾けることは、人間の生を考えるうえでは避けて通れないものではないかと思います。もちろん、それ一辺倒になるとしんどくなってしまうので、今一度苦しいけど沈潜してその底の景色を見てもう一度戻ってくる。そのことでその後の現実に対する見方も変わってくると思います。本誌「ららほら2」はそんな深く潜るための一冊だと僕は思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?