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ラクしているように見えることにも。実はたくさんの頑張りがあった。

#20231123-299

2023年11月23日(木祝)
 東京のランドマークのひとつ「レインボーブリッジ」を走る自転車イベント「GRAND CYCLE TOKYO レインボーライド」に参加してきました。
 それについてのイベントレポートは、下記にリンクを貼っておきます。
 ご興味のある方はぜひお読みください。

 今回は、それにまつわる気付いたことについてです。


 イベント会場であるお台場海浜公園までの往路は、義父に車で送ってもらった。
 復路は自転車だ。
 約39km
 イベントで走ったミドルコースが約16kmだったから、その倍以上の距離だ。
 街中を抜け、川沿いにあるサイクリングロードに向かう。そして、できるだけ家の近くまでサイクリングロードを走り、またしばらく市街地を走って我が家到着。
 道順と状況把握ができるむーくん(夫)が先頭を走り、真ん中にノコ(娘小4)、最後尾は私でノコの遅れや様子を見守る。

 私は運動神経がよくない。
 子どもの頃に自転車には乗れるようになったものの、自転車の走行速度に頭がついていかなくて公道で乗るのを親に止められた。危なっかし過ぎたのだ。
 自転車の走行速度に頭がついていかない――とさらりと書いたが、首を傾げているかたがいると思う。歩行速度ならば、なんとか周囲の状況を把握しながら体をコントロールすることができる。「あぁ、車が来ているな。このままだと危ない」とわかれば、足を止めることができる。自転車の速度だと、自分と車や歩行者などの危険物との間合いやその場で自転車をどう操作するかの判断が間に合わなくなるのだ。
 「止まった方がいいのかなぁ」と悩んでいるうちに、自転車が進んでしまい、あわや衝突なんていう具合だ。

 公道禁止は私の親が過保護であって、多少痛い目に合えば運動神経と判断力が鍛えられたかもしれない。いやいや、冷静な判断であり、大ケガや命を落とす羽目になったかもしれない。まぁ、こればかりはわからない。
 その後、30歳手前にスポーツとして自転車での遠乗りをはじめ、次第に注意すべきところを学習していった。
 ロードバイクをはじめたのは40歳直前。むーくんと出会ってからだ。
 体に合った車体であるはずなのに、細いタイヤにバランスが取れず、よろめいて乗れなかったのを覚えている。

 幸いなことに、ノコは私よりずっと運動神経はよい
 ただまだ9年しか生きていないので経験が少なく、危険な状況を想像する力はない。前を幼い子が歩いていれば、次の瞬間に親の手を払って自転車の先にバッと飛び出す危険性を予測することはできない。だが、飛び出したらハンドルを切る反射神経はある。
 まだまだ危なっかしいが、9歳の私よりははるかによい。

 祝日のせいか、人の出が多い。広い歩道は自転車用という区分があるが、歩行者はそれを意識していない。
 行き交う人、店から出てくる人、子連れ、犬連れ、お年寄り。
 ノコの周囲も含めて、あちらこちらに気を張らねばならず、私の脳はフル回転だ。ノコは文句ひとついわず、この緊張を強いられるなか、むーくんの背を追う。
 よく頑張っている

 サイクリングロードに出ると、解放感に小躍りしたくなるほどだ。
 広い空、広い道幅、なにより人が少ない。思わず深呼吸してしまう。
 サイクリングロードにたどりつくまでだいぶ時間がかかってしまった。15時近くなり、日が少しずつ傾きかけている。暗くなる前に家に着きたい。
 むーくんがノコの背を押す
 ロードバイクをはじめるまで、自転車で背を押してもらうこともなければ、その発想もなかった。むーくんの人力アシストはとても楽で、正直買い物に使う電動アシスト付き自転車よりいい。
 追い風ということもあり、ぐいぐい速度を上げていく。私も慌てて2人の後を追う。
 「ママに負けないぞー!」
 自分でこいでいないのに、ノコは勇ましい。

 なんとかまだ明るい、16時半前に家に到着し、むーくんも私も心底安堵する。
 「サイクリングロードで押せたからよかったけど、あのペースのままじゃあ、家にたどりつかねぇかと思ったぁ」
 むーくんの脚力あっての帰宅だ。そのありがたさなんてどこ吹く風とばかりに、ノコが涼しい顔でいう。
 「ねぇ、TVテレビ見ていい?」
 いやいやいや、あなたは宿題が終わってないでしょう。
 こちとら、すぐに浴槽を洗って湯を張って、そのあいだに自転車を拭いて片付けて、湯が張ったら順番に入浴して…… まったくノコは呑気だと呆れそうになるのを踏みとどまった。

 大人からすれば、ノコはむーくんに背を押してもらい、楽したように見える。
 だが、背を押してもらうという行為は、誰でもできるわけではないことに気付いた。

  • 背を押す力に耐える腹筋と背筋がある。

  • 速いスピードを怖がらない。

  • スピードに応じたハンドル操作ができる。

  • 背を押すパパを信じられる。

 もしノコの筋力が弱ければ、押すこともできない。体がぐにゃりとなれば力を伝えられない。
 ぐんぐんと走るスピードを怖がって「ヤダヤダ」と泣けば、進むこともできない。
 ハンドルを適切に操作できなければ、パパと並走できない。
 パパの押すという行為を受け入れる信頼関係がなければ、押せない。

 ノコだって、たくさん頑張ったのだ。
 小学4年生で55kmを自転車で走るというのは、十分すごい。
 夕飯時に長距離を走ったことだけでなく、これらの気付きを改めて言葉にしてノコに伝えた
 ノコが照れくさそうに、体をよじらせて笑った。
 背を押してもらうというのは一見楽そうだが、たくさんの頑張りがあった。
 誰でもできることじゃあない!

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