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千葉県立美術館「クワクボリョウタ コレクション・ネット」展と千葉ポートパーク

#20230902-217

2023年9月2日(土)
 千葉県立美術館で開催中の「クワクボリョウタ コレクション・ネット」展を観に行ってきた。


【オススメ!】千葉県立美術館「クワクボリョウタ コレクション・ネット」展

 実は、8月の頭にもこの美術館に訪れている。

 ノコ(娘小4)の習い事の合宿の送迎が千葉駅だったので、迎えの日にむーくん(夫)と少し早めに家を出てこの美術展を訪れる予定だった。
 だが、入場時間をよく確認しなかったため、到着した時点で10分過ぎ。残念ながら観ることができなかった。千葉は我が家から近いとはいえない。片道2時間弱はかかる。
 期間内にまた足を運ぶことができるとは思わなかったが、むーくんが「行くぞ」といった。

千葉県立美術館。千葉みなと駅から徒歩約10分。

 私が現代美術アートが好きなので、独身時代はもちろん、むーくんと結婚してからもよく美術館やギャラリーへ通った。ノコが来てからはペースが落ちたものの、それでも最近は復活し、観たいものには家族3人で行くようにしている。

 クワクボリョウタ氏の作品はそんななかでいくつか観ており、私だけでなくむーくんも好きな作家になった。
 代表的な作品は鉄道模型によるインスタレーションで、これは鉄道模型好きのむーくんの心をいたく刺激した。はじめて作品と出会ったとき、むーくんの双眸は鉄道模型をこのように使えるのかと新鮮な驚きであふれていた。

 暗闇のなかを光源をつけた鉄道模型が日用品――これはそのときどきで異なる――で構成されたジオラマのなかを走る。
 壁や天井にうつった影が鉄道模型が走ることで、ぐんぐんどんどん変化していく。影が大きく伸びて飲み込まれそうになったり、車窓から見る景色のように壁面を流れていったり、その臨場感、おもしろさは言葉で表すのは難しい。
 是非一度体験してほしい。
 ざるやセロハンテープ、ビー玉や音叉、茶道の茶筅ちゃせんがときに山やトンネル、巨大なかたつむり、もしくは大きな帆船、木立などさまざまなものに見えてくる不思議さ。
 小人になったようなサイズ感が狂う感覚。

クワクボリョウタ「LOST #19 しおさいのくに」

 今回はそれだけでなく、クワクボ氏が千葉県のマスコットキャラクターである「チーバくん」とやりとりしながら案内していく千葉に関する作品も展示されていた。
 「なのはな体操」の動画作品では、ダンスの類いにすぐ体が反応するノコは一緒になって菜の花と体操していた。
 現代美術はとっつきにくいと感じる人が多いようだ。
 もちろん美術上の歴史的背景や社会の状況などふまえた読み解きも作品を理解する手助けになるだろうが、ノコのようにただ目の前にあるものを感じるのもよいと私は思っている。ノコのさまざまな背景など「知ったこっちゃない」向き合い方は、大人からちょうどよい具合に肩の力と頭のかたさを奪う。
 私は同時代を生きている作家の作品に出会えることそのものが貴重で、嬉しい。

クワクボリョウタ氏の千葉から発想を得た作品たち
  • 千葉県誕生150周年記念事業
    房総の海をめぐる光と影とアート展
    クワクボリョウタ コレクション・ネット

  • 会 場:千葉県立美術館

  • 会 期:2023年7月19日(水)~9月18日(月・祝)

  • 入場料:一般500円 高校・大学生250円

子どもの潮遊びにやさしい 千葉ポートパークの浜辺

 美術館を出ると、日がだいぶ傾いてきて暑さもやわらいできた。
 千葉みなと駅とは反対の千葉港へ向かって歩く。

 千葉ポートパーク内のビーチプラザが見えてくると、ノコが駆けだす。長さ590mメートル人工海浜で小さな波が打ち寄せている。ノコは我が家に来てはじめて海を見た。まだ数回しか海を知らない。
 ノコの相手に実にちょうどいい波で、ノコは声を上げて波打ち際を行ったり来たりしている。波が運んできた白い貝殻を拾おうとしては靴が濡れそうになり、慌てて浜に戻り、また波に転がる貝殻に手を伸ばすためソソソソッと波に近寄る。
 これがザッバンザッバンと荒い波だったら、幼子のように怖がって浜辺で硬直していただろう。ノコをからかうような波は、飽きずに引いては打ち寄せ、ノコのいい遊び相手になっている。
 貝殻もだいぶ集まった。
 そろそろ背後にそびえ立つ千葉ポートタワーに行こうと声を掛けてもノコは波が楽しくてなかなか動こうとしなかった。

千葉ポートパークの人工海浜ビーチプラザ。

料理もおいしく、景色もよろし、千葉ポートタワー

 地上113mメートル千葉ポートタワーは、周りに高い建物がないこともあり、見晴らしがよい。

ビーチプラザから見上げる千葉ポートタワー。

 日没時刻が迫っていたが、水平線には雲があるためきれいな夕日は見られないと思ったら、雲が桃色に染まり、これはこれで見事だった。
 タワーのふもとにある円形の芝生広場ではダンスのイベントが準備中で、ノコは見たい見たいと騒いだが、当日券4,000円と聞き断念。その会場がタワーからはよく見える。ポッポッと色とりどりの光源が会場内にともり、ステージの準備も整ってきたようだ。
 夕闇が落ちるにつれ、工業地帯の工場群の明かりが浮かびあがるように輝いてくる。
 
 ノコが空腹を訴える。今から駅方面を向かうと夕食時刻が遅くなる。
 タワー3階にある展望レストラン「SEAGULLシーガル KITCHENキッチンで食べることにした。芝生広場が見下ろせるテーブルを選び、ノコはステージに登場するダンサーたちを眺めている。音楽が聞こえないのに、リズムを取っているところが不思議だ。
 料理はメインを選ぶと、サラダにスープ、ミニデザートがついてくる。

私が選んだのは、ナスとベーコンのペンネアラビアータ。

 そろそろ家路につかないと、ノコの就寝が23時過ぎてしまう。
 満腹のお腹をさすりながら、ダンスイベントを会場の外から数グループ眺めた後、千葉みなと駅へ向かった。
 19時過ぎ、夜道はいつしか蝉の声から秋の虫の音に変わっていた。
 まだ風に涼しさはないが、強い焼けるような陽射しがない分、のびやかな気分になる。
 ちょっぴり土の湿り気を含んだ夜の匂いが漂っている
 「夜の匂いがするね」
 私がいうと、ノコとむーくんは首を傾げていた。
 夜にだって匂いはある。

千葉ポートタワーの展望台から見る夕焼けに染まる空。

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