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行為と人格を分けても。iメッセージで伝えても。ダメなときはダメ。

#20240529-404

2024年5月29日(水)
 昨日の雨はあがったものの、今日は強い風が残り、気温は上昇、蒸し暑い。
 ノコ(娘小5)が疲れているのはわかる。
 週4日――うち平日が3日の習い事は本音をいえば親も厳しい。ノコより見通しがきく分、事前に用意しようと心掛けている。直前に慌てないのはいいが、なんだかいつも意識が先を、先を、と走っていて落ち着かない

 小学校から帰ったノコのランドセルをラックに置き、かぶせをパカッと開ける。
 「さ! 連絡帳に音読カード、それから宿題が全部あるか確認して」
 ノコがひと息つく前に声を掛ける。何かはじめたら手遅れだ。「ちょっと待って」「あとでやるから」となる。
 今のノコに小学校の宿題をためる余裕はない
 ためれば、ためた分だけ、取り組むのが嫌になってしまう。
 確実に、その日の宿題を終わらせるのが肝心だ。

 5時間授業だった今日は、習い事に向かうまで少し余裕がある。宿題を済ませてから、はやめの夕飯を食べて出発できる。
 「漢字、計算ドリル、自主学習。どれからはじめる?」
 急かすようだが、ひと息ついたら再起動が重くなる。
 ノコがギロギロと目玉を動かした。
 ソファーに身を投げ出し、叫ぶ。
 「どれもヤダ! やりたくない! 面倒くさッ!」
 隣接する公園で子どもたちが遊んでいる。開け放った窓から風に乗り、低学年の友だちの甲高い声が聞こえる。
 「疲れた。習い事、行きたくない」
 体調不良以外の欠席はしてほしくない。でも、ノコが疲れているのもわかる。
 「毎回休むのなら、習い事は辞めてほしい。でも、今日はお休みする?」
 ノコがガバッと身を起こした。
 「じゃあ、公園行ってもいい? TVテレビ見ていい?」
 別物だといわれそうだが、そのパワーは残っているんかい。
 「学校の宿題を終えてからね」
 「じゃあ、意味ないし!」
 ノコはドリルとドリルノートを二つに折り、さらに折ろうとする。厚みがあるため簡単には折れない。しまいに、床に置いて全体重をのせた。
 私が雑に物を扱うと嫌がることをノコは知っている。
 チラチラと私を見る。私が反応しないので、今度はプリントに鉛筆でぐるぐると大小の輪を書き殴り、さらに丸める。折り目がついたドリルを所有すること、それを提出することに恥ずかしさはないのだろうか。鉛筆の線を消すことは、それこそ面倒ではないのだろうか。
 「行けばいいんでしょ、行・け・ば!!!」
 じれたノコが怒鳴り、鉛筆を投げる。鉛筆はテーブルに跳ね返り、折れた芯が飛び、視界の端へ消えた。
 「行きたくないのなら、辞めればいい。習い事はお金を払ってお願いしてるの。嫌々行くのなら、お金も時間も行くのに準備するのももったいないな」
 「行けば、ママはスッキリしていいけど、私は嫌な気分のままだよ。それでいいわけ?」
 「ママだって、嫌々行くのならスッキリしないよ」
 「はあああああ、面倒くさッ!!」
 眼光鋭く、ノコは私をめつける。
 そして、迷いのない荒々しさでテーブルをドリルで叩く。

 ノコに「してほしくない行為」には、反応しないよう心掛けている。
 それでも続けば、私の心も冷静さを失う。
 「物を乱暴に扱うこと、ママは嫌いよ」
 「そーですか、私が嫌いっていうことね」
 行為と人格を分けて、さらに私がどう感じているかのiアイメッセージで伝えたつもりだが、ノコはそう受け取らない。
 「ノコさんは大好きよ。でも、ドリルを折り曲げたり、叩いたりされるとママは心がざわざわして嫌な気持ちになるっていったんだけど」
 「だーかーらー、それをする私が嫌いっていうことでしょ。出て行ってほしいんでしょ、いなくなってほしいんでしょ、見たくないんでしょ」
 「あなたのことは好きです。大切です。ママからは手放しません。でも、物を雑に扱われるのは、誰がやってもママは嫌な気分になるの」
 「だから、同じことじゃん。そういってるんじゃん。そういうことする私が大嫌いで見たくないっていうことじゃん!」

 行為と人格を分けて伝えてもダメなようです。
 iメッセージもダメなようです。
 「大好き」っていう言葉を織り交ぜてもダメなようです。
 
 私は「やってみたけどダメでした」と心の内で空に向けて報告する。
 そろそろ習い事に行くのなら出掛ける準備をせねばならない。まずは洗濯物を取り込もう。私はのっそり立ち上がる。
 「どこ行くわけ!
 手を伸ばせば届く距離でノコが叫ぶ。
 「夕方だから、洗濯物を取り込まないと」
 「逃げるわけ!
 「ママができることはいいました。何をいっても『ダメ』『やだ』『面倒くさい』というのなら、どうすればいいのか話し合いもできません。こうやっている間に宿題のひとつでも済ませれば、あなたのしたいTVや外遊びの時間ができるかもしれないのに。怒鳴ってヤダヤダいうことを選んだのはノコさんだよ」
 距離を置く。
 今はそれに限る。

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