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その声に触れていく


みなさん、いかがお過ごしですか?


この場所での生活もだいぶ慣れてきました。

この孤島にいると人と直接話すことは無いのですが、
人に会っていない分、ネット上で出会う声には敏感になります。

動画で流れてくる声、
Zoomや電話で聞こえて来る相手の声。

時にはその昔、耳にした声の中から、
心に響いて自分に染み渡っているものが、
今でも時折、ふっと立ち返ってくるなんてこともあります。

ここでの生活で人との関わりがなくなることで、
逆に、今までの中で耳にしてきた言葉が
「その人の肉声」とともに思い出されて、
ここでの生活に活きてくることがあるんです。



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大切な言葉というのは「その人の声」によって、
心の髄にまで染み渡っていくものだと思っています。


ここでいう「声」とは、
その人の「意見」という声ではなくて「声そのもの」のこと。

人は「文章を綴る」ことで思いを伝えることもできますが、
「声そのもの」に触れることで声の表情とともに、
その人の「生き様」を感じ取ることもできます。

その息づかいや呼吸の間、声の抑揚も含めて。
確かにそこには、その人が「在る」と感じられる。

思いの込められた声に触れていくと、
相手の想いが、自分の中にじわりと浸透して、さらに奥深くに染み渡る感覚になることもあります。

だからこそ、生きている限り、
そうやって「思いの込もった声」にたくさん触れていきたいと思うんです。



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思えば、僕は常にそうした声に触れることで、
不安や迷いの中でも、なんとかこの身を支えて、
今日まで来ることができたのかもしれません。


実は僕には、時代を超えた人々のそうした声に
触れてきた思い出があるんです。

それは、20代の頃。
病床の中でした。

急性腸炎を患い入院をしていた時がありました。
病床の中で本をめくるのすら煩わしく、本を読む代わりに「音声」で何かを聞こうと、当時、新潮社が出していた「小林秀雄講演」のCDを買ってきてもらって聴いていたんですね。(この記事の最後にご紹介しておきます)

実は、小林秀雄さんの本は若い頃に読んだことはあったんです。
でも、残念なことに内容をきちんと消化できたという実感はなくて、
それまで僕の中では「難しい人」でしかなかった。
何か大切なことを言っておられるのはわかるんだけど、
それを理解するほどに自分が達していない。
そんな存在でした。

でも数年後にそうして、「講演CD」で小林さんの肉声をお話を聴いて考えが変わったんです。

本に綴られた(難解に感じた)文章からは想像もできない、
小林さんの柔らかい日本語が僕の耳に何の抵抗もなく入ってきたんです。
その語りかけるやさしい声に、僕は病床で心暖まる気持ちになり、
同時に、当時理解できなかった話の内容がすっと理解できてしまった。

また、大変個人的な話で恐縮ではあるのですが、
小林秀雄さんの声が祖父にそっくりなんですね(笑)。
そんなことも影響していたのかもしれません。

小林さんが語らえる話の内容は「文章」「考えること」「歴史とは」など、
そのテーマの多くが「人間の本質」について触れられたもので、病床の中で色々なことに思い悩んでいた僕は、その小林さんの染み渡る声に心底救われたことを今でも懐かしく思い出します。


その人の声には、単なる情報だけでなく、色々な思いや生き方そのものが含まれている。
そのことを実感した出来事でした。


以来、僕は経営者や作家などジャンルも時代も問わず、出版社から手に入る「CDブック」を集めては、活字を読まずに、その肉声だけを聞くことを習慣にしていた時期もありました。

川端康成さん、三島由紀夫さん、鈴木大拙さん、司馬遼太郎さん。
今まで文章でしか知らなかった人の声との出会いは不思議なものでした。

時に、ある作家の肉声を初めてCDで聴いて
「なんか本で読むのとはイメージと違う声だった」
なんて感じることもありますが、文字で書かれた文章の魅力とは別に、肉声のその言葉には、その人の生の雰囲気や、闇のような部分まで全て含まれて感じられるんですね。

そうした「声との出会い」の経験があったからか、
その人自身を知るための一つの手段として、その人の声に触れるということは、今でもとても意味のあることだと感じています。


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できれば、その人の発する声に触れることで、
その考えに触れて生きてゆきたい。

これは普段の日常会話もそうです。

忙しい日々の中で、声は単なる情報伝達としてだけで使われがちですが、直ぐ側に相手がいるのにラインやメールだけで済ませていては勿体無いと思うんですね。それで本当に相手の伝えたいことを受け取れるのかと不思議に思うこともあります。

家族や恋人の声、親しい友人の声。
同じ時代に生きている人であれば、会いに行って話を聞くこともできる。そうした、自分にとって大切な人々の声に直に触れていくこと。

また、時に環境的な制約があったり、すでにこの世に存在しない人であっても、残された音声や声に触れることもできます。


世の中はそうした、何かを伝えたかった人たちの「語りかける声」で溢れています。そしてそういった声は、出版社が提供していたりもしますし、インターネットの中で出会うこともできる。

特に遥か孤島で生きる今の僕には、大切なものなのだと実感します。笑

ぜひ日常の合間に、人生をかけて何かを伝えようとしている人たちの
「思いの込もった声」に触れてみてください。

もしかしたら、
みなさんの生き方が少し変わるかもしれません。




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この孤島では、
もちろん人の声を直接聞く機会はありません。


でも、だからこそ
過去に聴いて自分の中に染み渡った声が、
ある時、ふと蘇ってくることがあります。

その人にとって大切なメッセージは、
どれだけ時間が経とうとも、
生きている限りその人の奥底で残り続けるものです。

その人の声に触れておくと、
声と共に自分の中に刻まれてゆき、
必要な時に、再び自分に語りかけてくれる。

そうやって、数々の大切な声に触れることで、
素直に人の話を聞けるようになったり、
人に何かを伝えることの重みにも気がつくことができるかもしれません。








今日は波も風も穏やかなんです。





こういう時にこそ、
自分にとって大切な言葉が、
その人の声とともに蘇ってきそうな気がします。





では、みなさんにとって
よい一日になりますように。






遥か孤島から、思いを込めて。






いつもありがとうございます。



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色々な人の声に触れてみてください。
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「小林秀雄さん」新潮CD 小林秀雄講演CD(全8巻セット)
=僕はCDからスマホに入れて、日常の合間で聴いています。
自分の核になることの多くを小林さんの肉声から学びました。
(Youtubeでも見かけます)
https://www.shincho-shop.jp/shincho/goods/index.html?ggcd=snc00547

「開高健さん」経験・言葉・虚構/地球を歩く
=その行動力で世界を見て、言葉で語られてきた生き方に感銘。
https://www.shinchosha.co.jp/book/830230/

「村山由佳さん:人生に文学を」
=36分37秒部分から、いつも繰り返し聞いては涙。
村山さんの優しさと信念を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=3tnp4SOjxNo

「孫正義さん:新卒採用で学生に向けの講演」
=「働くこと」に悩んでいる人は参考になるかもしれません。
学生向けの話ですが、志について非常に大切なことを語られています。
https://www.youtube.com/watch?v=mSLVUnwG1dg&t=3s

「堀江貴文さん:近畿大学卒業式でのメッセージ」
=これからの時代、個人としてどのように生きていくか。
今こうしてネットで発信することを後押ししてくれた言葉です。
https://www.youtube.com/watch?v=2DTyHAHaNMw

「静まる成人式~杉並区〜」
=杉並区長時代の山田宏さんのあいさつ
何のために生きていくべきかを、あらためて教えられます。
https://www.youtube.com/watch?v=XxNvKkN4644

「本田圭佑から中高生年代のみんなへ。」
=現代を生き抜く為の術について。大人でも参考になるお話です。
https://www.youtube.com/watch?v=OwdPINhCe24



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