幸福日和 #026「大切なものに鍵をかける」
「ちゃんと戸締りはしましたか?」
誰もが、
幼い頃に教わった言葉。
ですが、
この場所で伝えたいのは物ではなく、
「目に見えないもの」の戸締りの話なんです。
みなさんが普段大切にしている
目に見えないことってありませんか?
現実逃避をするための趣味であったり、
大切にしている言葉や文章。
また思い出や将来の夢など。
もちろん、そういった大切なものを
周囲の人と共有することも素敵なことですが、
そうするべきではない時もあります。
本当に大切なものは、
人の手の届かないところへ
簡単に触れられないところへ
大事にしまっておきましょう。
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彼はある大企業に勤めていた、
僕の知人の話です。
職場では、厳しい学閥や複雑な人間関係。
競争主義の中で、結果が出せずに悩んでもいました。
そんな過酷な労働環境の中で、
彼は昔から続けていた「ピアノを弾く」ことを通じて、
何とか日常とのバランスを取りながら、
日々の自分を支えていけました。
彼にとってピアノと向き合う時間が、
唯一の日常の避難場所だったんです。
仕事でのストレスを、
週末に大好きなピアノで発散していました。
そんなある時のこと、
ある先輩が彼のピアノの趣味についての
噂を耳をします。
それは、
いつも仕事で嫌味を言ってくる先輩でした。
その先輩は飲み会の席で
多くの社員がいる前で
「心無い一言」を口にしてしまいます。
「おい。みんな。」
「こいつピアノ弾くんだって、
男なのに気持ち悪いよな。」
「だから仕事できないんだよ」
その先輩には
何気ない一言だったかもしれません。
ですが、彼はその言葉によって、
大切な「避難場所」を汚されてしまった。
土足で踏み荒らされてしまったんですね。
彼は日常の逃げ場を失い、
やがてその職場を去ってしまうんです。
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みなさんにも、
人には侵されたくはない領域や
そういった場所はあるのではないでしょうか?
人によってはこのように「note」で
思いを吐き出すことを
大切な避難場所にしているのかもしれませんね。
もともと昔は、
日記がそういう場所でもありましたし、
苦悩の中で音楽を奏で、絵画や文章に向かう人々たちも
たくさんいました。
それは現代でも同じこと。
本当に大切なものは、
他人に自慢をすることも、
無理に人に伝える必要もありません。
そういうものは、
自分の中で大事にしておくこと。
むやみに置いておかない。
自分だけ手に取って、
ゆっくりと大事に眺められる場所に、
そっと置いておく。
そして、
自分だけの鍵をかけておくんです。